白い月

白い月

念処

2023-02-04 12:47:36 | ポエム

気を許してはいけない 失意の月よ

拾い上げた吐息も

抱え込んでしまった告知も蟻の一穴に埋めてしまった

 

聴かなかった事にする

観なかったことにする

自律神経を正常に作動させなければならぬ

 

思いこみして明日の結界を夢見た時もある

根拠もないまま遍在し降臨する時を待っていたが

何れ選別の時が来る

 

辛うじて身をかわす術も尽きた

天恵は誰の思惑であったのか

余生を生きたつもりだが むしろこの世は全てが余生であった

 

私は待っている

静かにして居よう

捨て去った全てが確実に生きているのを知っているから

 

 


尽日

2022-10-22 14:18:43 | ポエム

逃げ足の速い日没の太陽と共に

居心地の良い息災の一日が消えてゆく

 

悪あがきする独裁者の眼が血走り

懲りもせず檄を飛ばしている

 

鋼鉄がいともたやすくひしゃげ

潰れた塊のそばで花束が枯れている

 

質量は花束と同じだが分量が違うから

愁眉を開いて見続けていられる

ここまで突きつけられてもひるまぬ無月の闇

 

日に月に重くなる老体を持て余しながら

落ち葉をかき集める

 

 

 


雪虫

2021-10-28 08:53:45 | ポエム

月光がアスリートの肌に影絵を描く

走り去る深夜の走者の呼気が荒い

 

身構える残心の美を想起し

一炊の夢を見る 

 

日が昇ると今日のル-テイン

青 赤 黄白 炭色の錠剤九粒を流し込む

 

まつわりつく薄衣搔き寄せ

小悲大悲を小皿に盛りほろほろと飲み込む

 

片翼で飛ぼうとする秋蝶は夢を捨てた 

些事も捨てた

 

垣間見る人柄の良さ たじろがない恣意 目をそらさないで見続ける

真っ直ぐな背骨が好ましい

 

捕食された秋蝶の泪

身構える挑発の風に雪虫がよろける

 

衰え崩れ劣化する諸々の生き物たち

迫りくる日の終わりと再生の輪廻の目撃者たちの沈黙

 

ひっそりと背後に迫りくる翳

わたしを捉えるために息を止めている

 

 

 


炎暑

2021-07-17 07:38:31 | ポエム

北上するアフリカ象

何処を目指す 何を捜している?

 

溢れる川 粘る土 水の塔を護りたい

根こそぎ失っってしまった巨木の失意

 

不興を買ってしまったか

雹に打たれた小鳥は孤独です

 

微雨の合間の絵空事

流れ去る遠い息災の日々

 

捕えがたい時空の翳

果てしなくよぎり彷徨い堕ちてゆく

 

37度の今日はビオラの鉢を樹蔭に移す

私のできることはこんな程度でしかない

 

 

 

 

  

 

 

 

 


フラワームーン

2021-06-02 14:26:54 | ポエム

刻々と死にゆく星々を見ていた130億光年前のあなたよ

私が見ているたかだか80数年生きた視線の先で起きていることは 

日々痛々しい事柄ばかりです

 

穀雨に喜び 旱魃を憂い かと思うと疫病に翻弄されて彷徨う人心

希釈水の解放を断罪の糧にする為政者が居たり

格差も差別も思い込みと決めつける賢人が跋扈したり

死んでも助けは要らぬと寿命を抑制する疫病の翳に怯える人間もいる

若いアスリートがつかみ取った勝利をさえ奪い取る無礼な言質

許しがたい失礼に為すすべのない普通の人

海も空も宇宙さえも我が物にしたい為政者の覇権欲

 

私と云えば 晴れ日の目覚めを殊更に喜び

ぎごちなくも稼働する四肢の息災を至福とするだけの余生

剥落寸前の記憶の中に居て何をいまさら何を恐れる? 何を怒る?

 

再びの六月の命よ 立ち向かうしかないのです