狂わんばかりの熱気は去り
風も雨も鎮まった
底抜けに高い蒼穹は 恥ずかしげもなく
隠すものは何一つない無邪気な空
響き合い 彩なす刻印
虫が、鳥が、秋草が、ひそひそと笑い合う
わたしは 門扉を開け 窓を開き 蘇生する
朝露に濡れた透明な風を迎え入れる
存在の限りを生きた昨日は過去
辿りついた今日と云う日も夢物語だが
二度とない日を
山も 街も 人も焼き尽くし
濁流に押しやり
祖国を追い払う
臥所を探す人の群れは異形
汚れた人語と 拳が行き交い 誰もが傷つき 際限もない
閉じられた五官の窓が軋み音を立て
荒れた世紀を吹き荒れても
変わらぬ清冽な大地の息使いを聴き続けたい
どこまでも 深く 深く 切り刻みながら 鎮みこむかなしみの世紀よ
手に余る混沌を抱えて 黙り込むわたしたちの晩節よ