白い月

白い月

晩節

2015-09-22 08:29:40 | 心事ポエム

狂わんばかりの熱気は去り

風も雨も鎮まった

底抜けに高い蒼穹は 恥ずかしげもなく

隠すものは何一つない無邪気な空

 

響き合い 彩なす刻印 

虫が、鳥が、秋草が、ひそひそと笑い合う

 

わたしは 門扉を開け 窓を開き 蘇生する

朝露に濡れた透明な風を迎え入れる

 

存在の限りを生きた昨日は過去

辿りついた今日と云う日も夢物語だが

二度とない日を

山も 街も 人も焼き尽くし

濁流に押しやり

祖国を追い払う

臥所を探す人の群れは異形

汚れた人語と 拳が行き交い 誰もが傷つき 際限もない

 

閉じられた五官の窓が軋み音を立て

荒れた世紀を吹き荒れても

変わらぬ清冽な大地の息使いを聴き続けたい

 

どこまでも 深く 深く 切り刻みながら 鎮みこむかなしみの世紀よ

手に余る混沌を抱えて 黙り込むわたしたちの晩節よ

 

 


処暑 次候

2015-09-06 15:42:58 | 心事ポエム

 

度を超す猛暑

 いらだつ夏草の繁茂

 好い眠りが欲しいだけではない。

 

 何時だって独り居のキリンの無心

 明け方の雨の匂いが嫌いな幼鳥

 踏みとどまった今日の飛翔。

 

 未然の杜の歓喜は私語に紛らせ

 風に乗せてやり過ごす

 果てしも無く続く不快は止まない。

 

 風よ 風よ

 乱気を押しやる風よ吹け

 日々刻々のわたしを 空に放てよ。