白い月

白い月

旅支度

2013-08-31 13:48:41 | 心事ポエム
毎夜 旅支度する

鞄に入れたり 出したりを繰り返す

シフオンの白い薄布は

もう九月には似合いません

流れ出た毒の線量が越えたから

猪も茸も食べてはいけない

生ものは入れない

まして無冠の花を摘むなどは論外

私心無きやと囁く風が覗き込む

甘噛みする犬は知っている

侵してはならぬ午睡の月の静謐

風に揉まれ 雨に濡れそぼる無辜

頽れたカサブランカの無為の溜息

告げられた立ち位置がゆらぎ 

拡散するひと夏の幻夢の歌

故もない確信をも詰め合わせ

晴れ晴れと 今日を忘れ果てる

微熱

2013-08-24 17:05:22 | 心事ポエム
眠りたい 眠れない

傾く舟が

かろうじて保つ均衡

       
ステントに貫かれた腎臓に

迷い込んだ血流の虚妄
 
何も語りたくない・・・


気懸りがある。

地に落ちた喜憂

こぼれた碧い種子の進化・行く末


舌の肥えた客に

居心地の悪い椅子しかない

・・・風が座る


揺れるコスモスに溺れる蟲たち

漂白された風の無心

何時もと同じ晩夏の気配


ひどい夏だった

身を震わせた一病。

残像がまだ消えないまま


おくり盆

2013-08-18 10:47:07 | 心事ポエム

《たち止まらないで下さい》 
蒼穹に咲く花を見る為に・・・

咲き急ぐ夏花も欲しい 

迷いなく演じきる噴きあげの水

倒れたままの墓標に留まる混沌 

華厳の花の昏い沈黙

五感の誤作動を持て余す暑い夏


今年もあなたを迎え あなたを送るのだが

いつの間にかひっそりと

少しずつ変わる

少しずつ毀れる

すこしずつ消えていくわたし。


むしろ錆びた芝を洗う驟雨が欲しい

こころは池塘を巡る旅にあって

冷風に身をさらしながら溺れていたい

ミゼレーレ

2013-08-10 16:22:29 | 心事ポエム


 天の極み

 空の果て

 苦海の淵

 嶺の頂き

 
 矮き翳待つ月の泪   

 雲海に消えた星座

 捜しあぐねた礼拝堂 
 
 まだ見ぬ人 異郷の花 


 作務の汗滴らせ

 志尚は消えず浅い眠り

 暁鐘の音引き寄せ 

 わたしの往生を問う

 
 誰に語ろう?

 一死の夢幻 夜来の雨

 何一つ知らぬまま 死にゆくのか?・・・


  
 

八月

2013-08-03 16:19:59 | 心事ポエム


消えた測隠の情

きざはしは破れ

開かぬ重い扉

遠のくひぐらしの声


意図せぬ仕儀に

一瞥を投じ

青い蝙蝠

月の谷を飛ぶ


節度も分別も

捨てた晩節

踏みとどまるか

自虐の歩み


異界に住みつく

境涯の身

熱波に萎えた夏薔薇の

怯えを抱え込んだまま 八月になる。