白い月

白い月

晩節

2020-03-20 20:19:03 | ポエム
時ならぬ冷気に震撼
いつもの平時を持て余す月は
縁起に曳かれて寄り添い続けたのに
とうとう二度と立ち上がれぬまま置き去りにされた

無縁のひとに清拭され
白衣に包まれて瞑目する人は 春を待てない
関節がゆっくりとほどかれ 五指が柔らぎ 
硬くあわされ合掌のかたちに納まる

差し出された晩年の悲哀をやさしく溶かし
揺るがぬ意図を隠さず
散華する煙雨の中に消えてゆく
春を待たずに逝くつもりの鈍い光が滴る