白い月

白い月

わたしの沖縄

2014-01-25 15:54:09 | 心事ポエム
誰もが無口になる

不機嫌な北国の空の昏さ


月光を押し隠す盲目の月は

もう保てない荒い息遣い


均衡を止めた昼と夜を彷徨い

失うものなど何もないと嘯く


吊るされた肉塊も蒼い魚も

明日は誰かの胃に収まる

 
緋色の桜咲く丘に憧れ

凍てつく灰色の地表を嘆くわたし


ジュゴンも珊瑚もタンカンも

海が好き 沖縄が好き 太陽が好き


怯え

2014-01-18 20:30:32 | 心事ポエム
またも繰り返す 

かなしみの連鎖

ひとのつまずきはやまず


かなしみはあわあわと

さだかならぬ気配のなかに棲みつづけ

このよのきらめきを遠ざける


花氷咲く水底に向かう人は

宿世のくびきを解き放ち 

冷たい地表をとびおりた
 
 
天使は けっしてわらわない

とらえどころのないこころ模様が

うらうらと偽りの花を咲かせる


あてどない夢に溺れ

一途に探すまぼろしの謌

わたしのおびえ わたしの せいぞん


五彩湖

2014-01-11 15:00:26 | 心事ポエム
あなたが在ればこその無辜の時間
遮る壁になって 幾度となく 
溺れる月さえ救い上げた

もう生きていけないとあきらめて
ひかりの渦に揉まれた時も
何かしら 隠し持った技を使って
人目を忍んで素早くやってきた

今 此処に在るのは眩しさだけ

誰も気付かないわたしだけの虹彩 

移ろう空の五彩の色も
暗闇で目立つ白い色も
始まりを告げるはちみつ色も
漂白された揚羽の色も 
緩慢な死の色も
伏せた瞳の流す涙も
折れた心が鳴らす鐘の音も知っている

行く末を案じるあなたの声や
そば近く生き続ける気配にほだされ乍ら
柔らかな眠りも手に入れたから 
明日も生きるつもりだ。


凍湖へ

2014-01-05 14:09:42 | 心事ポエム
私の知らない時の痕跡を辿りながら
緑色の瞳持つ湖をめざす 


繁みの陰からじっと窺っていた二頭の鹿
ひっそりとうなずき 目くばせをする


紋章に隠された暗号を解く間もなしに
父に焼かれた少年の見えない因果因縁


ひそやかに語られる背後の声を聴きながら夢を見る
湖に住むワカサギは群れて眠る


カウカウと鳴き交わす大白鳥は
うねる地表に融け込んで今日は息災


身じろぎもせず立ちつくす裸木の尊いまでの沈思。問い。
おまえは何になりたいのか?


生きものを沢山殺しそれを食べて今年も生きるのです
真白い、美しいものを沢山汚しそれでいのちを燃やすのです


迫りくる喜びの死の色は 幻夢と煌めき
何事もなく燃え尽きた湖は安らかに鎮む