白い月

白い月

泡立つ日々 

2018-03-04 18:35:55 | 心事ポエム
意に添わぬのに とどまり続けた

何処の誰とも似ていないから

置き去りにされてしまった白い月

哀しみを綿毛のように身にまとい

息を吐きかけ 身を細らせながら 宙に解き放つ

欲しいものが無い

観たい風景も

読みたい謌も

渉る川も

分け入って彷徨いたい街並みも

頬を摺り寄せた大樹はもう要らない

消えゆく総てが愛おしい

揺れる波動・・ 流れる水・・かすかなけはい・・ 眩い虹彩・・ 

ほの白い翳持つ円環 

密かに忍んでくる腐臭

時ならぬ蒼い吹雪

泡立つ不穏な心筋

追い立てられた渡り鳥の悲鳴

憬れは何処へ 哀しみは何処へ捨てよう




幻痛

2018-01-29 12:53:48 | 心事ポエム

慈心溢れ 揺るがぬ照射

今日の私は 何でも許せる 

冬日の至福満身に浴び 

行く末の不具合も忘れうっとりとする


今できる事と 持ち合わせているいくつかの自負

なんの根拠もなく 明日も同じ日照を信じている

あやぶみながらも氷の道を疾走し 凍てついた街中を彷徨い

手当たり次第にカートに放り込む今日の食材 


怖れも 悩みも 屈託もない

悔やみを送り香を焚く

ささくれたタオルを捨てる

雪を掃きアヒージョを作る


機能不全の上腕二頭筋 痺れる足裏 乾く眼球 遠ざかる音源 

痛点からこぼれ出た悲歎の声はことごとく打ち払い 

凡てを忘れて月に棲む    



身過ぎ

2017-12-13 17:24:42 | 心事ポエム
唐突な絶縁に途方にくれ
 
ひとり暮らしの野栗鼠は 心を病んだまま


空を飛ぶ冬鳥は言い訳をしない

限り知る 異端の系譜を誇る蒼い狐は

気負いもなく雪崩に呑まれた

引き攣れた傷持つ月は一層用心深くなる


もっと先に待っている事

きれいな事

やさしい事

美味しい事

愉しい事を考えてみよう


どこから来たのか・・ではない

何処へ行くのか・・・だ


時に甘く 重く

時にほろ苦く 

とりとめもなく流れる砂が埋める時空を

深々と 白い雪が覆う



永訣

2017-11-02 15:34:22 | 心事ポエム
《家族葬》 

危険な選択 

先ずはひざまずく事だ


舞い上がった喪主の動揺

窓が開かない不具合

それがどうした?


棺に入れる品々を忘れたおくりびと

ひとひらの含羞をも持ち合わせず

修羅を吹き消す


川を渡る船賃も無い

誰の助けで渉るつもりか? 此岸を見る遠い眼が潤む

綺麗な白い骨の中から 喉仏を捜す縁者たちは寡黙だ



言い訳はしない

哭く人がいない理由 

終日 吹き寄せられた枯葉が舞い散る寂しさよ



WDW徘徊

2017-10-15 15:36:27 | 心事ポエム
ハリケーンIRUMAとMARIAの間隙を縫って 飛ぶ

40度の炎天下の徘徊は一日二万歩

修行僧のように 早朝から 深夜までひたすら彷徨う


一切の含羞を捨てた蒼くて高い宙

剥き出しの白くて長い手足、ガラス色の瞳持つ人々がさんざめく桃源郷
 
道化の異界人が わたしを強く抱擁する


マーメードが漂う留守宅は終日無人となり

無防備な裸形を波間に漂わせて

甘露したたる至福の部屋の住人になる


《みなが皆とは仲良くできません》

波間に墜ちた月なのです

声さえ失くしてしまったから・・


首を垂れ 目を伏せ 移り気を悔い

遠い記憶に怯え 小魚の影に囲まれて息をのむ

海藻のしつこい思慕から逃れながら憂鬱を忘れたい


旅人の帰宅は遅い

たちまちにして一死 

深い眠りは死のようだ


マーメードが笑っている

今日を食べ尽くした旅人とわたしの時間が

ゆらゆら よろめきながら 水底の闇に静かに消えてゆく