白い月

白い月

静夜

2021-04-15 09:36:56 | ポエム

周到に準備されたものか?それとも無邪気な意図か?

虚空に光の尾が長く光り  消えた

 

意識の変容に怯えながらも疼く心筋

朧な視野がもどかしい

終日天井しか見えない終末期を凌ぎながらも夢を見る

日々燃えつくす焔の残滓

確かなものを探し続けてきたものの 今は病み疲れている

 

老いた月もやがて間違いなく死ぬ

跋扈する邪悪な恣意 

苛立つ痩せ馬

語り部の隠した血縁 

不機嫌な果実達はみな不寛容を隠さない

 

子でもない 孫でもない若者の勝利に涙腺が緩む不思議

地味で、脆くて、粗野でない一礼の美

見ぬ法楽 聴かぬ法楽に潜む哀歓

確かなものって何だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


年忌

2021-03-11 13:13:14 | ポエム
音もなく 気配もなく 不意にあなたが来た

うつつともなく未明の境をさまよっている時間だった
殊更今日はたくさんの生者や死者達が、ざわざわと行き交う日

あからさまに怪訝な顔を晒すこともなく
さりげなく笑みを返し 言葉を交わした

拾い損ねた礼節を消す春の雪
見逃さぬコートのチエック柄
引き寄せた縁(えにし)の情報さりげなく告げ
不寛容な時代を嘆き
控えめな花たちの香りを嗅ぎながら
当てにならぬ明日の息災をも披露した

うつむく月を覗き込むしぐさは同じ

差し伸べる私の手に透明な箱が渡され
静かに消えていった

あなたは今も朝霧の中で草笛を吹いている
31年目にしてやっと納得した 





七日月

2021-01-23 10:08:32 | ポエム
私が壊れる前兆か
やたらと周辺機器に不具合が起きる
定位置から観るサンピラーと折り合いをつけながら
どうかこの光源を消さないでと呟く

天蓋を満たす無邪気な星々は
館に移り住む人にも優しかったか?
傷ついた夢を抱えた闇の世紀照らす七日月よ
嘆き歌を聴きながら あられもない老いをも晒す光は要らない

昔を想う純情はあわあわと遠ざかる
輝きもなくしらじらと青ざめたまま かすかな残渣を匂わせる
忍び寄る私を脅かすあでやかなものたちよ  
ひっそりと進む劣化がたてる軋み音 腐蝕 破砕 昇華・・・

細胞が消えてゆく 
眼も疲れた
耳も疲れた

異界が待っている



スタージョンムーン

2020-08-31 09:06:19 | ポエム
夜来の雨が冷気を呼び ひたひたと陋屋を満たす
 
花びらを閉じ 匂いを包み込み 微音を立てず
 
ひたすら生かし続けたいと酷暑を凌いだ水遣りの日々
 
やっと手探りでかき寄せた小さな喜びは
 
生きづらさとなって 遠くへ押しやられてしまった
 
無邪気な季節の心変わり
 
未読の空に消えた時間の憂鬱
 
法灯の影に揺らめく幻影の移り気
 
わたしを包み込んだ虹の光彩の至福
 
まだ逝きたくはない蝶の執着
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

一過

2020-06-21 09:02:25 | ポエム
不純な色味を削ぎ落した夏の空
肩の力を緩める冷気の凋滅が嬉しい 

眩い陽光に目をしばたたせながら秘かな歓声を上げ
人も草も鳥も虫も 慚愧も 恨みつらみも 慟哭も
つかの間 忘れてページをめくる

足元にひれ伏す時空の物語り
終わりのはじめをもがき彷徨ううちに
由縁なく目撃者になってしまった月の憔悴が痛々しい

過剰な熱の放射は耐えたが 
掠め取られた日常の行方は不明
言葉なく押し黙ったままの無窮の球体を見上げ
あけぼの色のフラワームーンも流星群も視野に入れたが
此処に生き合わせた宿痾に戸惑って震えていた

まだ閉じてはいけない時の扉
湧きかえる渦に身を委ねても
夢見る術は忘れない
まだ私にできる事があるならば
取り返しの効かぬ生きた時を探そうよ月よ