ネットで誰かと出会うって事：MIKAエッセイ XL Repubblica(Feb.2011)

その時僕は22歳、１年前に大学を辞め、レーベルと契約したばかりで完全に自分の音楽の世界に没頭していた。１年の間１度だって誰ともデートしたことがなかったんだ。ある夜、９時頃に僕は僕の個人のMyspaceに外出の誘いのメールを貰った。それが一体誰だか見当もつかなかったけれど、２日後に僕は誘いを受け、デートしたんだ。短命な恋愛だったな、２週間で４回のデートだったから。でもそれは僕にとって完璧な恋愛だった・・終わった時はひどく悲しかったんだ。ネットで出会った誰かと付き合うなんて「そんなもんなんだよ、知らなかった？」って。Internet dating（注１）の作法は僕が馴染めない事の一つだ。一晩だけの関係とかさ。だけど、あの関係は違ったんだ。その結果、僕は未解決で散らかった感情のまま取り残された。感情のリミットを超えてしまって僕は怒りを爆発させたんだ。悪いのは全部僕、今でも自分がふしだらな男に思えるよ。

それが僕のInternet datingのとの出会い。今時はMyspaceじゃなくてFacebookだ。そこでは僕たちの写真がいつも本人よりずっと良く見えて、書いてある事も実際に話しをするよりずっと面白いんだ。インターネットを使って誰かと出会うのは随分ポピュラーになった。僕の良く知ってる友人の内、５人がここ１年の間ネットを使って知り合った誰かとデートしてるし。この間なんかロンドンのカフェで、僕くらいの年の男がレジ待ちの列で知り合った女の子をナンパしようとしてて、また君に会いたい、Facebookのアカウント持ってるか？って聞いたんだ。女の子は「私、ネットより現実を優先したいから」ってそれを拒絶した。彼はそこで諦めた。彼女は別に会話を終わらせたかった訳じゃないと思うんだ、だけど彼女のその言葉は男に自分は現実世界で彼女と付き合うには十分じゃないって言われたのと同じ効果を与えた。その男はそれほどひどく無かったと思う、女の方は下品で男は結構イケメンだったんだ。

でもそれってネットの素晴らしい利点じゃないのかい？勇気がいくらあっても足りない様な相手にアプローチ出来たり、現実に本人に会えたり。事実を認めようよ、ネットユーザーは皆同じ事をしてる。誰かに初めてリアルで会おうって時、その人のことに興味があったらオンラインでちょっと調べてみようとするだろ？僕たちは彼らの生活を覗き見するんだ、休日の写真や飲み仲間のこと、子供が居るのかとか、写真が自己中心的な感じじゃないかとか、わざとらしく無いかとかね。そういった探索が終わる頃には、ネットで知り合った場合と状況は同じになってる。実際はほとんど変わりがないんだ、リアルからネットへも、ネットからリアルへも。

僕はおよそInternet datingと呼べるものから無縁な、シャイな人たちを賞賛する。なぜって、大体、やってる人たちはどうやって成功させてるんだ？僕の知人はInternet datingは社会の壁を取払い、職業や収入の障害を越えて自由な交際を実現させるって主張してる。笑っちゃうのはね、彼女今まで年収４万ポンドの連中としか交際したがらないってこと。そしてその男のステイタスが確かな物かが確信出来るまで、オンラインで汚れた洗濯物を引っ掻きまわすみたいにして確かめるんだ。

そうだな、僕はネットが恋愛の過程を変えたとは思わない。誰かが「皆やってる」って言ったとしても、それが彼らがすべての人を対象に行ってると言う意味にはならない。それは僕が初めての時に理解出来なかったポイントだ。僕はいつも、誰かと最初のデートをする前に、関係が確実になるかどうかの確信を持てるまでその人の事を良く知ろうとする。すべての情報がその人と長く関係を保てるかどうかを考える要素になる。それは僕をますますその人にのめり込ませ、その人と親密になる事を可能にするんだ。僕が理解出来ないのは、その人を良く知る事が僕をその人に相応しくしてくれるって事はないし、用心するに越したことは無いって事。

映画監督のデビット・リンチが言っていた、僕らはダウンロード世代だって。ダウンロードと言っても情報処理や実際の行為は関係ない。ネットが僕たちを取り巻く現実の一部になっていて、カフェのあの女の子は間違いを犯したってこと。彼女が言った言葉の意味は、彼女はあの男に興味が無かったって意味に等しい。彼は彼女の基準を満たさず、安っぽいFacebookの魔法は効かず男に自分が間抜けだと感じさせた。彼は立ち去って正解だったと思う。



注１：原文のままInternet datingとします。直訳すると「出会い系」となりますが、MIKAの言うInternet datingは出会い専門のサイト、サービスのみを指すのではないからです。