フィリピンの教育の現状と、15歳の子供たちが他の79カ国の子供たちと比べて数学、科学、読解でどのような評価を受けているかについて、国際学習到達度調査(PISA)の評価によると、フィリピンの子供たちが国際的な同世代の中で最下位だった。このことは、フィリピンの子供たちが諸外国と比較、最も学習能力が低く、将来への準備もできていないことを示唆しているといっても過言ではない。
2022年度経済協力開発機構による国際的な生徒の学習到達度調査 | |||||||
2022年度国別四半期別数学の平均成績 | |||||||
COUNTRY | 下位四半期 | 第 2 四半期 | 第 3 四半期 | 上位四半期 | 下位ー上位 | OECD | |
順位 | 平均点 | 平均点 | 平均点 | 平均点 | 進捗率対比 | 平均点数 | |
経済協力開発機構(OECD)平均点 | 400.3 | 424.3 | 445.8 | 481.1 | 20.0% | 進捗率対比 | |
1 | Singapore | 514.7 | 560.4 | 599.8 | 626.2 | 21.7% | 8.2% |
2 | Japan | 494.5 | 525.5 | 549.2 | 575.3 | 16.4% | -18.4% |
3 | Korea | 479.4 | 515.7 | 539.8 | 576.9 | 20.3% | 1.4% |
4 | Estonia | 472.4 | 495.8 | 520.5 | 553.4 | 17.2% | -14.4% |
5 | Switzerland | 453.6 | 493.2 | 523.5 | 570.6 | 25.8% | 28.7% |
6 | Canada | 459.6 | 487.4 | 512.5 | 536.1 | 16.6% | -17.0% |
7 | Denmark | 451.4 | 479.7 | 507.0 | 525.3 | 16.4% | -18.3% |
8 | United Kingdom | 458.0 | 479.2 | 495.9 | 544.3 | 18.8% | -6.0% |
9 | Ireland | 456.7 | 478.3 | 504.5 | 530.5 | 16.1% | -19.5% |
10 | Czech Republic | 428.9 | 476.4 | 499.9 | 544.5 | 27.0% | 34.5% |
60 | Argentina | 344.8 | 362.5 | 384.6 | 419.6 | 21.7% | 8.2% |
61 | Indonesia | 351.6 | 359.5 | 365.9 | 385.7 | 9.7% | -51.7% |
62 | Albania | 352.9 | 358.4 | 362.6 | 401.6 | 13.8% | -31.1% |
63 | Uzbekistan | 355.5 | 358.2 | 364.5 | 377.9 | 6.3% | -68.6% |
64 | Morocco | 350.8 | 356.6 | 357.9 | 394.1 | 12.3% | -38.5% |
65 | Jordan | 345.6 | 355.6 | 359.8 | 385.5 | 11.5% | -42.4% |
66 | Philippines | 338.9 | 354.3 | 350.6 | 375.3 | 10.7% | -46.4% |
67 | Panama | 325.3 | 341.4 | 359.1 | 401.9 | 23.5% | 17.4% |
68 | Cambodia | 328.9 | 334.1 | 333.0 | 349.8 | 6.4% | -68.2% |
69 | El Salvador | 319.7 | 334.0 | 345.0 | 376.6 | 17.8% | -11.2% |
70 | Guatemala | 319.5 | 333.4 | 345.5 | 379.2 | 18.7% | -6.7% |
71 | Dominican Republic | 322.1 | 330.1 | 339.1 | 367.3 | 14.0% | -29.9% |
72 | Paraguay | 315.0 | 323.6 | 332.9 | 381.4 | 21.1% | 5.3% |
資料−1:国と経済は、国の社会経済的地位の第 2 四半期における生徒の数学の成績の降順でランク付け。
このことが、フィリピンの労働力について調べるきっかけとなった。フィリピンの労働者は、海外の労働者と比べて、知性、能力、利用可能性の点でどうなのだろうか。
周知のように、熟練した教育を受けた労働力を持つことは、競争力のある経済を持つための基本である。人材指数が高ければ高いほど、長期的な国家繁栄の可能性は高くなる。破壊的なテクノロジーによって生活や働き方が変化している今日、このことは特に顕著である。
スイスの経営開発研究所(IMD)は毎年、世界的な調査を実施し、各国の労働力における人材のランク付けを行っている。各国は3つのカテゴリーに基づいて評価される: すなわち、「投資と開発」(自国の人材を育成するために国が投資した資源の量)、「魅力」(海外から人材を引き寄せることができる度合い)、「準備」(その国で利用可能なスキルの質を数値化したもの)である。
昨年は63カ国が評価された。フィリピンに関する情報は、IMDの現地パートナーであるアジア経営研究所(AIM)によって収集された。
良いニュースは、フィリピンが2018年の55位から2019年には49位に6ランクアップし、ランキングで最も大きな改善を記録したことだ。チリ、ロシア、アルゼンチンに先行され、南アフリカ、ヨルダン、ブルガリアに続いた。
シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイがそれぞれ10位、22位、41位、43位を占めたため、ASEAN6の中では最下位となった。
フィリピンで需要の高いスキル
デジタルスキルは、もうひとつの重要なスキルカテゴリーとして浮上している。基本的なデジタルスキルは、従業員の71.2%が必須と考えられ、同時に、ITサポート、サイバーセキュリティ、データ分析と視覚化などの高度なデジタルスキルも、地域平均よりも高い優先順位にある。
ITスキルは、フィリピン経済のGDPに毎年約300億米ドル貢献している、国の主要なビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)部門にとって不可欠で、最近のジョブストリートのレポートによると、フィリピンではITスキルを持つ労働者が20万人不足している。
I Tスキルの多くがコールセンターである。
従業員のモチベーションは高いものの、スキルアップを阻むインフラ上の障壁
従業員のスキルアップの動機はさまざまであり、従業員がデジタルスキルを習得する最大の動機は、無料のオンラインコースへの容易なアクセスと利用可能性(37%)で、これに高い給与と交渉力(33%)、新しい仕事のチャンスの探求(29%)が続く。「概して、従業員は仕事でよりよい成果を上げ、昇進するだけでなく、より多くの収入を得ることができるスキルを習得したいと考えているが、これはフィリピンの従業員にとってキャリアアップが大きな動機であるという調査結果と一致しています。
高いモチベーションにもかかわらず、新しいデジタルスキルを習得する上での最大の障壁は、オンラインコースに参加するためのインターネットアクセスの悪さ(41%)で、この問題は、国のスキルアップのニーズにとって特に困難になっている。半数以上(57%)がデジタルスキルアップの主なソースとしてオンラインコースに依存しており、地域平均(42%)を大幅に上回っているためである。
インターネットの普及率と使用率が高いにもかかわらず、フィリピンはインターネットのパフォーマンスの悪さとコストの高さに悩まされている。
最近の調査によると、国の人口の50%以上がモバイルインターネットの基本パッケージさえ購入でき図、急を要する場合に少額のチャージを行なっている。
従業員の 10人中 4人が挙げたもう1つの課題は、新しいコースを学習する時間がないことである。
メディア、ヘルスケア、マーケティング、広告などの分野で働く従業員は、週4時間を超えて働いている。さらに、調査によると、フィリピンの労働者の約50%が職場でのストレスを経験しており、これは東南アジアで最も高い割合である。
時間の不足や職場でのストレスに加え、新しいデジタルスキルを習得する上で、コースの費用の高さも従業員の30%が指摘したもう1つの課題で、この国は東南アジア地域で最も費用のかかる教育システムの一つと言われる。そのため、コースの費用は労働者のスキルアップの大きな障害となっている。
スキルアップのための時間がない。大きな要因は、通勤障害である。常態的な交通障害(渋滞)による通勤時間の長さによる時間ロスである。多くの社員や工員は、起床時間が4時。帰宅時間が9時から10時とも言われる。通勤時間による時間ロスで教養や技術習得に要する時間配分ができない。
収入と技術習得に要する費用バランスが整わず、P C等の購入をすると生活に要する費用ができなくなる。また物価と収入のバランスが異常で、一般企業で働く社員や工員は設備投資が困難である。切り詰めて購入したとしても、年式の古い中古品が多いこともスキルアップにつながらない。
もう一つは国民性にある。携帯電話の使用時間率は世界一でありながら、その世界一になっている内容はSNSに興じる時間である。
教育がフィリピンのアキレス腱であることがまた証明された。
調査によると、フィリピン政府は生徒1人当たり年間平均376ドルを費やしている。また、教師1人に対して生徒が29.08人と、生徒と教師の比率も下から5番目である。ちなみに、シンガポールは生徒1人当たり年間12,890ドルを投資し、教員と生徒の比率は14.69を維持している。当然のことながら、シンガポールの学生は世界で2番目に知能が高いと分類されている。資料−1参照
教育水準が低いフィリピンの卒業生は、株の知識、批判的思考、技術的スキルの面で最も劣っていると言われている。
徒弟制度や従業員研修に関しては、フィリピンは中位に位置している(63カ国中28位)。このことは、民間企業における人材育成が比較的競争的であることを物語っている。
つまり海外から人材を惹きつける力という点では、フィリピンは31位と比較的良いスコアを獲得した。有利な所得税率と手頃な生活費により、フィリピンは上位15%にランクインしている。さらに、フィリピン企業は従業員のモチベーションを高め、人材を確保するためのプログラムが充実していると言われている。
報酬は上級管理職には競争力があるが、熟練した専門職には見劣りする。
マイナス面としては、フィリピンで働く駐在員にとって、公害と貧弱な司法制度が挙げられる。フィリピンは、外国人駐在員にとって魅力的な国の上位50%に入る。タイやポルトガルと同レベルの魅力があると言われ、全体的な生活の質は南アフリカやメキシコと同じレベルである。
国内に優秀な人材がいるかどうかという点では、フィリピンは高得点を獲得した。フィリピンはこのカテゴリーで26位。言語能力、科学者数、労働力増加率に関しては上位20位に入っている。
国際的な経験、金融知識、高度な経営教育を受けた人材という点では一部の恵まれた人材に限っては中位に位置している。しかし、全体的に見れば、シニア・マネジャーの能力は上位30パーセント程度で英語能力が高いなどと言われる割には決して高い数値ではない。
ここでもまた、フィリピンの地位の足を引っ張っているのは大学教育システムである。
評価では、大学のカリキュラムはもはやデジタル時代の新興経済のニーズに対応していないことが明らかになった。加えて、フィリピンの大学は国際化が極めて遅れている。外国人学生がフィリピンで学ぶ機会(あるいはその逆)は、依然として世界最低水準にある。生徒100人当たりの留学生の数はわずか0.14人だ。
生徒一人当たりの政府支出、教師対生徒の比率、時代遅れの大学カリキュラムなど、フィリピンのランキングの低さがなければ、フィリピンは世界ランキングの上位50パーセントに入り、マレーシアと肩を並べることができた可能性がある。
フィリピン政府は今年の国家予算で教育省に5,213億5,000ペソを計上しており、これは全省庁の中で最高である。残念ながら、それでもまだ足りない。生徒数が2,720万人であることを考えると、単純計算で生徒一人当たりの支出は約370ドルで一定である。
2019年からほとんど変化はない。
議会は今年、教育省の予算を200億ペソ増やしたと主張している。しかし、これは増え続ける生徒数によって相殺される。
様々な調査や指標によれば、教育はこの国で最も弱いものである。
教育システムに真のインパクトを与えるためには、生徒1人当たりの投資を500ドルに増やす必要がある。専門家によれば、これは生徒が社会に出たときの即戦力に影響を与えるのに十分な額だという。そのためには、DepEdに1840億ペソの追加予算が必要である。
今こそ政府は、教育システムのあり方について緊急に行動を起こすときである。
そんな矢先に、教育庁の予算不正疑惑が起き上院で審議中である。
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