シリーズ平成の本音― 一体改革などではなく消費税の分離増税だ!
野田内閣は、3月30日、消費税の10%への引き上げを閣議決定し、法案を国会に提出する構えだ。
同内閣は、2月17日、消費税増税を軸とした「社会保障と税の一体改革」大綱を決定したが、破綻状況の国民年金など、年金制度の抜本改革が見えないまま、消費税を切り離し増税を推進することになる。それは一つの政策選択であり、政治決断と言える。その判断は、国会に委ねられることになるが、最終的には有権者である国民が下すことになる。
今回の野田政権の消費税増税決定については、2つの基本的な問題がある。
一つは、「社会保障と税の一体改革」と言うが、浪費垂れ流し状態の放漫な年金制度の抜本改革が見えないまま、消費税を切り離し、増税を先行させることになるので、もはやこれは「社会保障と税の一体改革」などではなく、実態的に消費税を切り離した分離増税の色彩が強い。
社会保障改革のうち最も深刻で国民生活に重く響いている年金制度改革については、受給資格期限の10年への短縮、低所得層に対する年金加算や高所得者の年金減額など、現行制度に基づいて若干の手直しをしているに過ぎない。また厚生年金基金の運用などについても不適正な運用振りや放漫さや浪費が問題となっており、現行制度を前提とする手直し程度では膨大な浪費体質、制度的な赤字体質は解消されそうにない。医療・介護、及び子育て分野についても、低所得層や主婦などへの配慮をする一方、高齢者や高所得層への負担増を図るなど、現行制度の下での手直しに過ぎない。
支出(給付額など)が収入(年金保険料など)を上回り、赤字状態の制度破綻にあり、将来的にも少子高齢化、長寿化が継続し、負担能力が逓減して行くので、現行制度におけるコストの抜本的削減を図らなければ、消費税増税をして資金を供給しても赤字体質を引きずることになる。癌が進行しているのに除去しないまま、栄養を供給し続けるに等しい。
企業にしてもどのような組織にしても、支出が収入を大幅に上回り、赤字が拡大し、倒産、破綻状態になれば、まず行うことは抜本的なコスト削減だ。コスト削減も行わず、値上げをしても破綻は回避出来ない。
政府事業については、税収を図り、予算を投入すれば事業は継続出来ることから、コスト意識が希薄になる弱点があることが知られている。現在、日本が直面する財政欠陥は正にコスト意識の希薄さが大きな原因となっていると言えよう。また社会的、国民的なニーズの変化に伴う優先度の変化への対応が遅れている。財源に制約がある以上、ニーズの変化に伴い優先度を変えて行かなければ対応出来ない。
もう一つの問題は、2009年8月の総選挙におけるマニフェストからの事実上の離脱だ。国民は、国民との契約として示されたマニフェストに基づき民主党に政権を託した。個別の政策事項にしても、節減による財源の捻出や予算の優先度の転換などにしても不十分であり、そのような中で消費税増税を決定したことは、現政権はマニフェストから逸脱し、実質的な路線変更を行ったと言えよう。
これらの点を、有権者、国民がどう判断するかである。同時に、これらの改革を先送って来た旧自・公政権の責任と野党としての対応も問題となろう。(2012.3.30.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
野田内閣は、3月30日、消費税の10%への引き上げを閣議決定し、法案を国会に提出する構えだ。
同内閣は、2月17日、消費税増税を軸とした「社会保障と税の一体改革」大綱を決定したが、破綻状況の国民年金など、年金制度の抜本改革が見えないまま、消費税を切り離し増税を推進することになる。それは一つの政策選択であり、政治決断と言える。その判断は、国会に委ねられることになるが、最終的には有権者である国民が下すことになる。
今回の野田政権の消費税増税決定については、2つの基本的な問題がある。
一つは、「社会保障と税の一体改革」と言うが、浪費垂れ流し状態の放漫な年金制度の抜本改革が見えないまま、消費税を切り離し、増税を先行させることになるので、もはやこれは「社会保障と税の一体改革」などではなく、実態的に消費税を切り離した分離増税の色彩が強い。
社会保障改革のうち最も深刻で国民生活に重く響いている年金制度改革については、受給資格期限の10年への短縮、低所得層に対する年金加算や高所得者の年金減額など、現行制度に基づいて若干の手直しをしているに過ぎない。また厚生年金基金の運用などについても不適正な運用振りや放漫さや浪費が問題となっており、現行制度を前提とする手直し程度では膨大な浪費体質、制度的な赤字体質は解消されそうにない。医療・介護、及び子育て分野についても、低所得層や主婦などへの配慮をする一方、高齢者や高所得層への負担増を図るなど、現行制度の下での手直しに過ぎない。
支出(給付額など)が収入(年金保険料など)を上回り、赤字状態の制度破綻にあり、将来的にも少子高齢化、長寿化が継続し、負担能力が逓減して行くので、現行制度におけるコストの抜本的削減を図らなければ、消費税増税をして資金を供給しても赤字体質を引きずることになる。癌が進行しているのに除去しないまま、栄養を供給し続けるに等しい。
企業にしてもどのような組織にしても、支出が収入を大幅に上回り、赤字が拡大し、倒産、破綻状態になれば、まず行うことは抜本的なコスト削減だ。コスト削減も行わず、値上げをしても破綻は回避出来ない。
政府事業については、税収を図り、予算を投入すれば事業は継続出来ることから、コスト意識が希薄になる弱点があることが知られている。現在、日本が直面する財政欠陥は正にコスト意識の希薄さが大きな原因となっていると言えよう。また社会的、国民的なニーズの変化に伴う優先度の変化への対応が遅れている。財源に制約がある以上、ニーズの変化に伴い優先度を変えて行かなければ対応出来ない。
もう一つの問題は、2009年8月の総選挙におけるマニフェストからの事実上の離脱だ。国民は、国民との契約として示されたマニフェストに基づき民主党に政権を託した。個別の政策事項にしても、節減による財源の捻出や予算の優先度の転換などにしても不十分であり、そのような中で消費税増税を決定したことは、現政権はマニフェストから逸脱し、実質的な路線変更を行ったと言えよう。
これらの点を、有権者、国民がどう判断するかである。同時に、これらの改革を先送って来た旧自・公政権の責任と野党としての対応も問題となろう。(2012.3.30.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)