シリーズ平成の本音―司法に突きつけられた衆議院の出直し選挙! (その1)
3月6日、東京高裁は、昨年12月に行われた衆議院選挙が選挙区により人口比率を平等、公正に反映されておらず、「1票の格差」が最大で2.43倍のまま実施されたので違憲であるとの弁護士グループの訴訟に対し、区割り規定を違憲としたのを始めとして、全国で16件の裁判において、3月27日までに14件は格差が是正されないままで行われた選挙は違憲とされ、他2件も違憲状態とされた。特に広島高裁では選挙自体を無効とし、11月26日をもって効力が発生するとし、立法府に是正の猶予を与えたが、岡山支部は猶予を与えることなく無効とした。これで全国31選挙区、2閣僚を含む31議員について憲法違反の選挙による選出となり、国会の権威どころか、資格自体が問われる深刻な事態となっており、司法により衆議院の出直し選挙が突きつけられた形だ。
2009年8月の総選挙では「1票の格差」が2.3倍であったが、最高裁は2011年3月にこれを「違憲状態」とし、是正を促していた。昨年12月の総選挙での「1票の格差」に関する一連の違憲判決は、2011年3月の最高裁判決を踏まえてのものであるが、国会が是正措置を講じ無かったため予想されたことでもある。高裁レベルでの違憲判決は、今後最高裁で審理されることになろうが、最高裁としては2011年3月の判決より厳しい判決を出すことが予想される。
1、「0増5減」ではまた憲法違反となる恐れ
与党自民、公明両党は、議席数を「0増5減」すれば「1票の格差」は2倍以内に収まるとしてまずこれを実現したいとしている。
しかし昨年12月の選挙では、全国31選挙区、31議員について憲法違反の選挙とされており、単に議席を5減らしても憲法違反の選挙区は残り、「0増5減」で選挙を実施してもまた憲法違反や無効とされる選挙区が続出する恐れがある。
「0増5減」による緊急避難的な是正については、格差を最大で1.998倍と2倍以内にはするが、限りなく憲法違反に近い格差が残ることになり、かろうじて違憲判決を回避するためのアリバイ作りの色彩が強く、政治としての有権者への誠意、責任が全く見られない。多くの有権者の投票の価値を犠牲にしている。民主主義の基礎である有権者の票の重さを1対1の状況に出来るだけ近付けることこそが政治の責任ではないのだろうか。裁判所が“2倍以内なら合憲”としたのは、政治的混乱を避けつつも、立法府に対し自主的な是正を促したものであるが、立法府が根本的な是正に着手しないのであれば、そろそろ「票の平等性」についての明確な見解を出す時期にあると言える。また昨年11月に「0増5減」案は国会で採択はされたが、総選挙が1年以内に行われる時期に来ていた上、自民、公明が「近いうち解散」の時期を巡り与党民主党に圧力を掛けており、選挙が差し迫っていた。しかし今回は、任期が始まったばかりである上、裁判所はより公正な格差是正を促しており、事情は全く異なる。それとも取り敢えず便宜的な違憲回避の措置を取り、解散権を手にし野党を牽制しようというのであろうか。多くの有権者の投票の価値を犠牲にして、党利党略を優先し、権力の座にしがみつこうとでもいうのだろうか。
どうも憲法違反に対する認識が甘過ぎるようだ。憲法は法の中の法と言われ、国家のあり方や国民の基本的な権利・義務などを定めたものであり、国民の平等原則、権利・義務の平等性は、民主主義の一丁目一番地となる基本である。「1票の重さ」の平等性とは、基本的に1対1の関係を保証するというものであり、国会や裁判所が2倍以内であれば良いとか、1.5倍以内であれば良いとかというのは恣意的な判断に過ぎず、適正でない。もし格差2倍以内で平等性を確保しているなどと主張するのであれば、憲法上の法の下の平等を著しく歪めるものであり、そのような基本的な概念さえ理解しない国会は、憲法改正はもとより、教育改革などを論じる資格もないと言えよう。
「1票の格差」の是正は、平等原則から基本的には票の重さを1対1の状態に近づけることを意味する。技術的な困難さがあるとしても1.1倍程度、最大でも1.2 倍以内に収める努力が不可欠である。比例代表を含めた格差是正が必要であろう。
2、比例代表制を廃止し、有権者が直接議員を選べる制度へ (その2に掲載)
3、参議院の「1票の格差」是正も厳しく問われる (その3に掲載)
(2013.3.28.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)
3月6日、東京高裁は、昨年12月に行われた衆議院選挙が選挙区により人口比率を平等、公正に反映されておらず、「1票の格差」が最大で2.43倍のまま実施されたので違憲であるとの弁護士グループの訴訟に対し、区割り規定を違憲としたのを始めとして、全国で16件の裁判において、3月27日までに14件は格差が是正されないままで行われた選挙は違憲とされ、他2件も違憲状態とされた。特に広島高裁では選挙自体を無効とし、11月26日をもって効力が発生するとし、立法府に是正の猶予を与えたが、岡山支部は猶予を与えることなく無効とした。これで全国31選挙区、2閣僚を含む31議員について憲法違反の選挙による選出となり、国会の権威どころか、資格自体が問われる深刻な事態となっており、司法により衆議院の出直し選挙が突きつけられた形だ。
2009年8月の総選挙では「1票の格差」が2.3倍であったが、最高裁は2011年3月にこれを「違憲状態」とし、是正を促していた。昨年12月の総選挙での「1票の格差」に関する一連の違憲判決は、2011年3月の最高裁判決を踏まえてのものであるが、国会が是正措置を講じ無かったため予想されたことでもある。高裁レベルでの違憲判決は、今後最高裁で審理されることになろうが、最高裁としては2011年3月の判決より厳しい判決を出すことが予想される。
1、「0増5減」ではまた憲法違反となる恐れ
与党自民、公明両党は、議席数を「0増5減」すれば「1票の格差」は2倍以内に収まるとしてまずこれを実現したいとしている。
しかし昨年12月の選挙では、全国31選挙区、31議員について憲法違反の選挙とされており、単に議席を5減らしても憲法違反の選挙区は残り、「0増5減」で選挙を実施してもまた憲法違反や無効とされる選挙区が続出する恐れがある。
「0増5減」による緊急避難的な是正については、格差を最大で1.998倍と2倍以内にはするが、限りなく憲法違反に近い格差が残ることになり、かろうじて違憲判決を回避するためのアリバイ作りの色彩が強く、政治としての有権者への誠意、責任が全く見られない。多くの有権者の投票の価値を犠牲にしている。民主主義の基礎である有権者の票の重さを1対1の状況に出来るだけ近付けることこそが政治の責任ではないのだろうか。裁判所が“2倍以内なら合憲”としたのは、政治的混乱を避けつつも、立法府に対し自主的な是正を促したものであるが、立法府が根本的な是正に着手しないのであれば、そろそろ「票の平等性」についての明確な見解を出す時期にあると言える。また昨年11月に「0増5減」案は国会で採択はされたが、総選挙が1年以内に行われる時期に来ていた上、自民、公明が「近いうち解散」の時期を巡り与党民主党に圧力を掛けており、選挙が差し迫っていた。しかし今回は、任期が始まったばかりである上、裁判所はより公正な格差是正を促しており、事情は全く異なる。それとも取り敢えず便宜的な違憲回避の措置を取り、解散権を手にし野党を牽制しようというのであろうか。多くの有権者の投票の価値を犠牲にして、党利党略を優先し、権力の座にしがみつこうとでもいうのだろうか。
どうも憲法違反に対する認識が甘過ぎるようだ。憲法は法の中の法と言われ、国家のあり方や国民の基本的な権利・義務などを定めたものであり、国民の平等原則、権利・義務の平等性は、民主主義の一丁目一番地となる基本である。「1票の重さ」の平等性とは、基本的に1対1の関係を保証するというものであり、国会や裁判所が2倍以内であれば良いとか、1.5倍以内であれば良いとかというのは恣意的な判断に過ぎず、適正でない。もし格差2倍以内で平等性を確保しているなどと主張するのであれば、憲法上の法の下の平等を著しく歪めるものであり、そのような基本的な概念さえ理解しない国会は、憲法改正はもとより、教育改革などを論じる資格もないと言えよう。
「1票の格差」の是正は、平等原則から基本的には票の重さを1対1の状態に近づけることを意味する。技術的な困難さがあるとしても1.1倍程度、最大でも1.2 倍以内に収める努力が不可欠である。比例代表を含めた格差是正が必要であろう。
2、比例代表制を廃止し、有権者が直接議員を選べる制度へ (その2に掲載)
3、参議院の「1票の格差」是正も厳しく問われる (その3に掲載)
(2013.3.28.)(All Rights Reserved.)(不許無断引用)