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アッラーはすべてを赦し給う?

2009年12月10日 | 他の解説
以下は、あるシスターにいただいた質問:「アッズマル章53アッラーは本当に凡ての罪を赦されるとありますが、殺人、姦通など大罪、人に対しての罪はどうですか?」に対する、私が調べて得た情報を基にした答えです。

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ご指摘の「アッズマル章53」の言葉は、「タウバの存在」と、「罪がアッラーに同位者を置く(シルク)でないこと」という条件があって、成立します。つまり、シルク以外のすべての罪は、タウバすれば赦されるということです。女性章48節を参照してください。
人に対しての罪はどうか?ですが、
他人の権利を返上することが困難でない場合、きちんと出頭なりするべきだと思います。
しかし、「アッラーは100人殺した男を赦した」というハディースがアル=ブハーリーとムスリムにあるので、他人の権利を何らかの理由で返上できず、タウバだけになってしまっても、アッラーは赦してくださる、とも理解できます。
殺人罪からのタウバについての他の意見に、次のようなものがあります:殺人罪からの完全なタウバ(悔悟)には、
①タウバに必要な諸条件
②自分自身が報復刑に処されるために、出頭すること。もしくは報復権を放棄した遺族に血債を支払うために、出頭すること。
が必須。
もし罪人が①の条件に適ったタウバをしても、報復刑に処されるために出頭しなかった場合、彼のタウバは正しいが、出頭していないという罪は残る。これは他人の権利に関連している独立した罪なので、別のタウバが必要。

参考に、「人間の権利の種類」を以下に述べます。
1.金品:持ち主に返すか、持ち主に自分がそれを持っている・いたことを伝えた後に放免してもらう。
2.尊厳など金品と関係ないもの:タウバ実現の条件に、本人にその罪について知らせるべき(私はあなたの悪口を言いましたなどと、と被害者に伝えること)かどうかで、学者間で意見が分かれている。
①アブー・ハニーファ、アッ=シャーフィイー、マーリク、アフマドの伝承:知らせることは、条件。
②イブン・タイミーヤが選んだアフマドの別の伝承:被害者に知らせる必要は無い。知らせることで、不仲になったり、問題解決がさらに難しくなるため。→①以外は、後悔とイスティグファール(罪の赦しを乞うこと)とその罪に二度と戻らないと決心することと、自分の不品行のために被害者となった人のために祈ることで足りる(=イブン・タイミーヤの見解)。
3.1、2と違うが他人の権利が絡むもの:誰かの被害者の報復刑の権利

参考文献:タサッウォフのひらめきとその歴史、アッ=サーイフ・アリー・フサイン著、79~81項
     アッ=タフスィール・アル=ワスィート第一巻、ワフバ・アッズハイリー著、363項