124.ユダヤ人達が協定を破る:
かつてアッラーの使徒(祝福と平安あれ)がマディーナに移った時、ムハージルーンとアンサールの間の決まりごとを書き記しましたが、その中にユダヤ人達と協定を結んだことが記載されていました。その史実から、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)が彼らに寛大に接していたことが分かります。彼はユダヤ人の宗教と富を容認し、彼らのためになる条件を設け、また彼らに課される条件も設けました:
『ユダヤ人で我々に追従する者は、援助と、同等のものを得、不当な目に遭うことも敵対されることもない。
またユダヤ人はクライシュの誰とも富や命を共有してはならず、ムスリムの敵になってもならない。
また戦時には、ユダヤ人はムスリムと共に出費する。
またユダヤの諸族は、信徒たちと共に一つの共同体である。
ユダヤ人には彼らの宗教があり、ムスリムにも彼らの宗教、同盟者、命がある。』
『この協定を共有する民を襲う者に対しては、互いに戦い守り合うこと。
互いに助言し合い、罪ではなく善を行い合うこと。
ヤスリブ(マディーナの旧名)を襲う者に対しては、一緒に戦うこと。』
しかし、アン=ナディール家のリーダーであるフヤイ・イブン・アハタブは、クライザ家(ユダヤ人たち)が協定に背き、クライシュに傾くよう、うまく誘導に成功しました。クライザ家(ユダヤ人たち)のリーダーであるカアブ・イブン・アサドは:私はムハンマドが正直で忠実であることしか知らない、と言っていたにもかかわらず、結局カアブは協定を破り、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)の間に結んでいたものとは我々はもう無関係である、と宣言したのでした。
この知らせがアッラーの使徒(平安と祝福あれ)に届くと、数名のアンサールと共に、(イスラーム以前からクライザ家(ユダヤ人たち)と協定関係にあった)アル=アウス族のリーダーであるサアド・イブン・ムアーズと、アル=ハズラジュ族のリーダーであるムアーズ・イブン・ウバーダを送り、知らせの真相を調べに行かせました。すると真実はさらに酷いものでした。ユダヤ人らはアッラーの使徒を軽蔑して:「アッラーの使徒とは誰だ?我々とムハンマドの間には約束も契約もない」と言っていました。しかも彼らは、ムスリムたちとの協定を破るだけでなく、ムスリムたちを襲う準備を始めていたのです。彼らは背後からムスリムたちを襲おうとしていました。このやり方は公けに襲ったり、広場で戦うよりも酷く悪質で、その状況は、次のアッラーの御言葉の通りです:【おまえ達の上から、そして、おまえ達の下から彼らがおまえ達の元にやって来た時】(クルアーン 部族連合軍章10節)
この動向は、ムスリムたちを苦しめました。ユダヤ人たちに情を示したり、彼らが危険な目に遭うたびに、かつて同情していたサアド・イブン・ムアーズは、塹壕の戦いで矢による傷を負い、腕の動脈が切れ死を覚悟した時にこう言いました:アッラーよ!クライザ家の悪い結末を見るまで私を死なせないでください!
125.いざクライザ家(ユダヤ人達)へ:
アッラーの使徒(祝福と平安あれ)と信徒たちが武器を片付け、塹壕から引き揚げマディーナに向かう途中、大天使ジブリールがやって来て言いました:アッラーの使徒よ、もう武器を置いてしまったのですか?
アッラーの使徒(平安と祝福あれ)は、そうです、と答えました。ジブリールは続けて言いました:天使たちはまだ武器を置いていません。威厳あるアッラーはクライザ家(ユダヤ人たち)のところへ行くようあなたに御命じです。私は彼らのところへ向かい、彼らを怖れさせましょう。
アッラーの使徒(平安と祝福あれ)はすぐに呼びかけ人に命じると、「命令を聞き従う者は、アスルの礼拝をクライザ家(の土地)に着いてからでしか行わないように。」と呼びかけさせました。
クライザ家(ユダヤ人達)の土地に着いたアッラーの使徒(平安と祝福あれ)たちは、25日に渡って彼らを包囲しました。アッラーは彼ら(ユダヤ人達)の心に恐怖を投げ込み給い、彼らは苦しむことになります。
(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P259~261など)