先日、久留米市の石橋文化ホールで開催された、九州交響楽団による「ドラゴンクエストⅨ」コンサートに行ってきました。毎年恒例の「ドラゴンクエスト交響曲」コンサートですが、今回の公演は特別な意味を持つものでした。長年指揮を務めたすぎやまこういち氏がご逝去された後、初めての開催となり、新たに井田勝大氏を指揮者に迎えた記念すべき公演でした。
すぎやまこういち氏は、クラシック音楽の普及を目指し、どんなオーケストラでも演奏できるよう楽譜を設計されていたそうです。この理念のおかげで、九州交響楽団による美しい演奏が今も楽しめます。会場では、10代や20代の若者が多く見受けられ、自分たちでチケットを購入して訪れた様子に、新しいファン層の広がりを感じました。
まず印象的だったのは、ホルンによるファンファーレでした。これまでファンファーレといえばトランペットを思い浮かべていましたが、ホルンの響きにはまた違った味わいがありました。アルプスの羊飼いが朝を告げるような、爽やかな響きに、胸が高鳴る思いでした。
オーボエの佐藤太一さんによる長いソロも圧巻でした。佐藤さんは、ドラゴンクエストの音楽に感銘を受けて吹奏楽を始め、音楽大学へ進み、現在首席奏者として活躍されています。その背景を知った上で聴く演奏には、すぎやまこういち氏や楽曲への愛が感じられました。
さらに、フルートの「おおぞらをとぶ」の演奏では「ドラゴンクエスト」の世界観が蘇ってくるようでした。弦楽器と金管楽器は、楽器隊全体で一丸となり、力強く訴えるシーンが多々ありました。特にコントラバスは、情熱的かつエレガントな演奏が目を引きました。浅野さんを筆頭とする、コントラバス奏者たちのステージングの美しさは、九州交響楽団ならではの魅力かもしれません。
打楽器陣も見事でした。シンバルやティンパニが雷鳴や稲妻を表現する中、他の打楽器もそれぞれ特殊な効果音で場面を彩り、作品にさらなる臨場感を加えていました。どの楽器にも見せ場が用意されている点に、作曲者のオーケストラへの愛情を感じました。
コンサートのラストを飾ったトランペットのファンファーレは、まるで天に突き抜けるような迫力がありました。光が射すというより、その逆を行くような感覚で、心を強く揺さぶられました。
指揮者の井田勝大氏自身が「ドラゴンクエスト」のプレイヤーでもあるため、楽曲への理解が深く、お話が印象に残りました。このコンサートを通じて、すぎやまこういち氏の遺した楽曲と、九州交響楽団の素晴らしさを改めて実感しました。記念品代わりになるプログラム、欲しかったな。