毎年の楽しみとして欠かせない「第九」の演奏会。九州交響楽団(以下、九響)の「第九」は、既に何度か聴いているのですが、今年はどうしても行きたい理由がありました。それは、ソプラノ歌手・鈴木玲奈さんが登場されるからです。全日本音楽コンクール優勝の実績を持ち「九響こうもり」や「九響ニューイヤーコンサート」に出演された玲奈さん。その歌声を、再び生で聴ける貴重な機会でした。
それにしても、全国各地で「第九」の演奏会が開催されるこの時期は、歌手にとってのピークシーズン。そんな中、玲奈さんをゲットできた「九響」とその観客は、まさに「勝ち組」だと言えるでしょう。そして、バリトンとテノールの力強い歌声も素晴らしく、アルトの方は(派手なソプラノと異なり、慈愛に満ちた感じというのでしょうか)雰囲気が素敵でした。
そして「第九」と言えば「合唱」のイメージが強いですが、今回気付いたのは、意外にティンパニーの見せ場が多いこと。演奏された森首席の雰囲気もあるのでしょうか、九響の「カミナリサマ」とか「雷神」と呼びたくなるような、迫力と緊張感がありました。
そして、合唱隊が早くからスタンバイし、姿勢を正して舞台上に待機していました。この長い「待機時間」は「不自由な世界」や「抑圧された世界」を象徴しているようにも感じられます。その後、力強く歌い始める「合唱」によって「自由な世界」が表現される。このコントラストが、作品全体のメッセージ性を際立たせているように思いました。
「第九」は、ベートーヴェンが人生最後に作った交響曲です。晩年の彼が「(神様の世界は素晴らしいというが)人間の世界も悪くない」と言っているようにも思えます。クラシック音楽は、聴くたびに新たな発見があると感じます。
演奏会終了後、出演者がお見送りをしてくれるというサービスがありました。その中には鈴木玲奈さんの姿もあり、多くの女性ファンに囲まれていました。サインを頂くためのペンを用意していなかった事が悔やまれました…