当時父はドイツに配属されていたのだが、その父に会うため、母はぼくと8人の
11歳に満たない小さな子供たちを連れての一晩の飛行の後、ようやくライン・
メイン空軍基地に到着した。たくさんのスーツ・ケースを全部引き取ると、
ぼくたち十人は混み合った税関に入った。 若い職員はぼくたちを信じられない
という顔つきで見つめて、尋ねた。
「奥さん、この荷物とお子さんは、みんなあなたのですか?」
「ええ」母がため息まじりに答えた。
「みんなわたしのです。」
職員はお決まりの質問を始めた。
「奥さん、荷物の中に何か武器や違法な薬物をお持ちですか?」
「すみませんがね」母は静かに言った。
「もし何かそういうものを持っていたら、とっくに使っていたでしょうね。」