俺は、大財閥の御曹司のクローン。
大切な御曹司に万一の事があった場合、パーツのスペアを取るために用意されていた。
いろいろ条件を同じにしておくため、2人は兄弟のように育てられてきた。
御曹司は悪い奴ではないが、無茶ばかり。
小さい頃から腕を折ったり足を切ったり。
結局、成人するまでに、俺は手足や眼球、内臓などいろいろと持っていかれ、
すでに俺のあっちこっちが作り物になっていた。
御曹司はもちろん健康体。
俺はクローンである人生がいいかげん嫌になっていたある日、
カーレースに参加していた御曹司が事故で、頭を潰した。
急遽、俺の脳の一部が移植される事に。
だが今度は、俺はきっぱり断った。
そんな事をしたら、今度こそお終いだ。
俺は母親の目を見つめ、自分の人生を主張する。
しかし、母は説明する。
御曹司の脳は殆どが潰れており、結局は俺の脳が全て使われるらしい。
ということは、今こそ自分は御曹司本人となり、
健康な身体と、まともな人生を取り戻せるのか!
俺は喜んで手術台に乗った。
だがその頭に、脳の情報のダウンロード装置が取り付けられる。
装置の中には、万一の為に保存してあった御曹司の全記憶。
俺の脳は、全て、御曹司の記憶に書き換えられてしまうのだ。
泣き叫ぶ俺をよそに、母親はニッコリと微笑む。
「さようなら。今まで、ご苦労さまでした」