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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ロシア軍がウクライナの各都市に最大規模の空爆をして教育機関や産科医院などで民間人を殺戮。ウクライナ兵士の捕虜を射殺。カソリック教会の活動を禁止。プーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏を北極圏の刑務所に移送

2023年12月30日 | ロシアによるウクライナ侵略

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 Xでリストにして観察している親露派陰謀論者たちがいきなり伊勢崎賢治東外大名誉教授を裏切り者呼ばわりし出したのでどうしたのかと思ったら、伊勢崎氏らがまた「今こそ停戦を」シンポを開いたらしく、その中での伊勢崎氏の発言が極左暴力集団「日本共産党(左派)」(どんだけ自尊心のないネーミングやw)の機関紙である長周新聞に掲載されたんですね。

 インボー論者たちはその中身が痛く癇に障ったようなんです。

伊勢崎賢治氏らウクライナ戦争即時停戦派が呼びかけた署名運動が悲惨。1日200人未満しか賛同者が増えず2週間で3000人未満。伊勢崎氏は自分が作った声明文がダメダメなことを認めて猛省すべきだ。

 

 

 もともと、反米拗らせ論者の伊勢崎氏はロシアの国連憲章に違反する侵略から始まったウクライナ戦争に関して、侵略者ロシア軍に「即時・無条件・完全」な撤退を求める国際的な常識論ではなく、侵略されているウクライナに停戦を求めるという点で親露派陰謀論者たちと意見が一致していました。

 そして、ロシアに侵略された上に2022年9月に4州が強制併合されてしまい4400万人の人口のうち1000万人以上が国内外で避難民となったウクライナ人に、「たかが領土」だ、諦めろと言い募りました。

侵略しているロシア軍に即時・無条件・完全な撤退を求めるのは国際社会の常識。伊勢崎氏も親露派陰謀論者もイスラエル軍にはそれを求めるだろう。

イスラエル・パレスチナ戦争から見えてくるウクライナ戦争の真実。「たかが領土」ではなくイスラエル政府の強制入植もロシア政府の4州併合も違法。侵略しているロシアに対して即時撤退を要求するのは当たり前だ。

 

 

 そんな伊勢崎氏はハマスがイスラエルに越境攻撃をして、イスラエル軍がガザ攻撃を始めた当初はまだ「たかが領土」と言っていたのですが、そもそもパレスチナ問題はイギリスが悪名高い「三枚舌外交」をした結果、パレスチナ人が住んでいる土地にイスラエル国が建設され、その後イスラエル政府が国際法違反の入植を進めたことが根本原因です。

 いま、イスラエル軍がパレスチナ市民を大量虐殺している中で「たかが領土」をまだ言うナンセンスさをさすがに周囲から批判されたのでしょう、さすがの伊勢崎氏も非を悟ってここ2カ月以上もうその主張は封印しています。

 それどころか伊勢崎氏はいきなりこのシンポで

『国家主権は大切で、それを地理的に定義するのは領土・領海・領空なので、その安全の保障と自衛が大切であることは、議論の余地がない。しかし一方で、その領有権をめぐって戦争が起きるわけだ。それを何とかするのも国連の使命だ。』

などと常識的なことを言い出しました。

 伊勢崎氏が1年半言い続けていた「たかが領土」論は何だったんだ(-_-;)。

ロシア政府が強制的に併合したウクライナ4州でも地方選挙を強行して侵略を既成事実化。ウクライナに即時停戦を促す即時停戦派はウクライナ人に「たかが領土」は諦めて人命尊重を優先すべきだと正直に説くべきだ。

 

 

 さらに親露派陰謀論者たちは、ウクライナ軍がドンパス地域でロシア系住民を虐殺していたからロシアの侵略は正当化されると主張し、伊勢崎氏も同様に主張してきていたのですが、伊勢崎氏がこれもまた突然に

『ウクライナ戦争。ウクライナ国内の親ロシア系国民の自決権の保護を名目にした「集団的自衛権の行使」がプーチンの口実だ。』

『ウクライナ戦争においてロシア軍が犯した戦争犯罪や大量殺戮はもちろんだが、それ以前に「ドンバス内戦」中に起きた親ロシア派の人々に対する人権侵害が、それと対比して認知され、和解というコンテクスト(文脈)で、ウクライナの真の平和が語られるのは、もはや時間の問題である。』

などと、プーチン大統領がロシア軍の侵略を正当化する言い分は口実に過ぎないことや、ロシア軍が戦争犯罪や大量殺戮したことを認め、これに対してウクライナ政府がやったことは「人権侵害」としか表現しなかった事も親露派陰謀論者たちの逆鱗に触れました。

ヘルソン州、2度の砲撃を受けた病院=2023年8月4日 © Andrii Dobravskyi/MSF

ヘルソン州、2度の砲撃を受けた国境なき医師団の病院=2023年8月4日 © Andrii Dobravskyi/MSF

国境なき医師団の病院がロシア軍により72時間の間に2度砲撃を受け、医師らが死傷。「ロシア軍が民間インフラ、住宅地、医療施設に攻撃を続けている」と批判声明。ロシアの戦争犯罪は西側のフェイクではない。

 

 

 どうも同じ「今こそ停戦を」と言っても、もう伊勢崎氏の関心は「ウクライナに停戦を」求めることから反米の立場からストレートに言いやすい「イスラエル政府に停戦を」求めることに移ったようです。

 そこで、伊勢崎氏は以前はロシア軍の戦争犯罪の追及に固執していたら即時停戦に支障をきたすから止めろと言っていたのですが、今後はイスラエル軍の戦争犯罪を自分が指弾できるように

『人権という概念を守るためには、残念ながら起きてしまった戦争犯罪を含む重大犯罪について、真摯に粘り強く証拠集めをし、戦犯法廷で被疑者(人権を考慮しながら)の罪を裁いていくことは絶対に必要なことだ。』

とこれまでと真逆の、しかし当然のことを言い出しました。

 この「変節」は、護憲派のように見せかけて憲法9条に自衛隊条項を入れるよう主張してきた新9条論者の伊勢崎氏の裏切り体質を見抜けていなかった親露派陰謀論者から見ると驚天動地だったようで、彼らは伊勢崎氏に対して国際刑事裁判所から逮捕状も出ているプーチン大統領を戦犯にすることを認めるのかと激昂したんですね。

ボグナー国連人権監視団団長「戦争犯罪だ。国際人権法の重大な違反」。ロシア軍は侵略開始してからウクライナで民間人864人を拘束し9割以上を拷問し77人を裁判なしで即決処刑。ロシア軍は即時撤退せよ。

 

 

 専らガザ紛争に興味が移った伊勢崎氏はハマスを「政体」として扱えと、また学者らしくもなく言葉の使い方を間違って主張したり(要は人質返還交渉だけでなく、今後のガザの統治についてイスラエル政府はハマスと話し合えと言うことが言いたいらしい)、

「イスラエル軍のガザ侵攻の結果がどうなろうと、ハマスは、すでに勝利しているのだ。くり返す。ハマスはすでに勝利している。」

と、さすが反米こじらせの面目躍如でハマスのスポークスマンのようなトンデモないことを言い出したり、ガザ紛争に関してはまだまだ害をなしそうです。

 しかし、少なくともウクライナ戦争に関しては伊勢崎氏の関心は薄れ、ネタニヤフ政権を批判する都合で同じことをしているプーチン政権をも批判せざるを得なくなったようで、まあその点だけは良かったです。

ハマス、外国人人質の一部解放を示唆 - 日本経済新聞

子どもを殺し外国人を殺し拉致したハマスは全世界を敵に回した。パレスチナ人とハマス、イスラエル人とイスラエル政府は全く別のものであるということをわきまえて、報復の連鎖を断ち切ろう。

 

 

 さて、そのロシア軍は2023年12月29日朝、首都キーウを含む主要都市に対し、侵略以来最大規模の110発のミサイルなどによる空爆を敢行し、AP通信などによると、少なくとも24人が死亡、多数が負傷したとのことです。

 ロシア軍の攻撃はキーウやポーランド国境に近い西部リビウ、東部ドニプロやハルキウ、南部ザポリージャやオデーサなどの広範囲に及び、軍事施設以外にウクライナのインフラ施設のほか、教育機関やショッピングセンターなどが被害を受けたそうです。

 東部ドニプロでは産科病院や商店、住宅が被害を受け、少なくとも5人が死亡しました。

 もちろんインフラ施設の攻撃も学校など民間施設への攻撃も、伊勢崎氏でさえ認める

「戦犯法廷で被疑者(人権を考慮しながら)の罪を裁いていくことが絶対に必要」

な戦争犯罪ないし国際法違反行為です。
 
 

2023年12月29日にロシア軍に空爆されたウクライナの各都市の様子。各都市に同時に攻撃することで地対空ミサイルの分散を促していると言われている。都市部やインフラを狙うのはウクライナ市民の厭戦気分を高めるため。

 

 

 さらに、ウクライナ最高検は12月28日、南部ザポロジエ州ロボティネ近郊の前線で捕虜のウクライナ兵3人をロシア軍が殺害した戦争犯罪について、関与したロシア軍部隊を特定したと明らかにしました。

 ウクライナのメディアはドローンから撮影された現場の動画を27日に報道したのですが、地面にひざまずいた3人が至近距離から銃撃される様子が収められていたそうです。

 そして殺害への関与が特定されたのは、ロシア北西部プスコフ州を拠点とする第76親衛空挺師団で、この部隊は2022年3月の首都キーウ近郊ブチャでの民間人大量殺戮にも関わったとされ、最高検は

「戦争犯罪で悪名高い部隊だ」

と非難しました。

 もちろんブチャでの民間人の殺戮も戦争犯罪ですし、捕虜の殺害はジュネーブ協定に反する戦争犯罪です。

 伊勢崎氏は自称国際紛争の専門家で、シェラレオネでの戦犯法廷にもかかわったそうなのですが、よく2年近くも続々と発覚するロシア軍の戦争犯罪についてこれまで言及せずに来られたもんです。

 イスラエル軍を非難するためにやっとロシア軍の戦争犯罪について少し触れ始めるとは、研究者の良心もへったくれもあったもんではありません。

2022年4月4日、解放されたブチャを訪れたゼレンスキー大統領。

なぜウクライナのゼレンスキー大統領は停戦できないのか。それはプーチン大統領が領土の割譲を禁じ刑罰を科する規定を憲法などに設けたため、停戦交渉でロシアが併合した地域を返還することが不可能だからだ。

 

 

 さて、このようなプーチン政権によるウクライナ侵略やロシア軍による戦争犯罪は、それまでの長年にわたるプーチン政権による言論弾圧や人権侵害が可能にしたのだということは何度も書いてきました。

 そして、プーチン政権による宗教弾圧は苛烈で、チェチェン紛争を招いたイスラム教徒への圧政は有名です。

 今日は特にカソリックへの弾圧について書きたいのですが、12月7日、プーチン政権が強制併合を宣言したウクライナ南部の州で、キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ教皇庁)の傘下にある「ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会」(UGCC)の活動が禁じられました。

 プーチン政権の大義名分はカソリック教会が宗教施設に武器を保管し、「反ロシア暴動を画策している」のが理由だというのですが、要は強制併合した4州ではまだロシア軍に対する抵抗が続いており、その拠点の一つであるカソリック教会の信教の自由をも奪って弾圧するということなのです。

 特にUGCCは近代以降、ウクライナにとってアイデンティティーのよりどころとなり、ウクライナが民族としての独自性を主張する根拠となってきたのだそうで、ソ連時代にウクライナの分離独立を目指した民族主義者ステパン・バンデラ(1909~59年)の父親もUGCCの聖職者だったということです。

プーチン政権がロシアに入国した外国人にもロシア政府を批判しない「忠誠」を求める法案を準備。ロシアの軍事予算はソ連崩壊後初めて社会保障費を上回り予算全体の4割で22兆円。プーチンロシアは軍事独裁政権だ

 

 

 さて、何十年ものプーチン支配の中でプーチン政権を批判するジャーナリストは次々と殺され、プーチン大統領の政敵は毒殺され、抵抗する民衆は投獄され殺されてきました。

 行方不明になっていた一番の政敵のナワリヌイ氏は文字通り「シベリア送り」になり、北極圏の刑務所に拘束されているのが発見されました。

 ロシア軍の侵略を侵略とも認めず、その戦争犯罪は無視し、ロシア政府の人権侵害もスルーして、ただただウクライナ政府の問題点にだけ焦点を当ててきた反米拗らせ論者と親露派陰謀論者たちのロシアやウクライナの市民の人命や国際人道に対する罪は限りなく重いです。

ロシア軍の兵士を確保するために中絶の権利を否定。プーチン大統領の政敵ナワリヌイ氏は移送され行方不明。リベラル派の大統領候補は立候補禁止。このプーチン政権の人権侵害がウクライナ侵略を可能にしている。

 

ロシア政府の言論弾圧が続いている。プーチン政権批判したバンドのライブ会場に治安部隊突入。LGBT運動を「過激派」に認定。ウクライナの子ども2442人を連れ去りベラルーシ国内でロシア愛国心再教育。

 

ロシア軍はウクライナへの侵略を開始してからの2年弱で、現役の地上兵力のうち87%、31万5千人以上の死傷者を出して失った。それでも戦争を継続できるプーチン大統領の専制支配はもはや奴隷制だ。

 

ロシア人受刑者が10~15万人も従軍し、ロシア軍による戦争犯罪の担い手となっているということは何度も書いてきましたが、その元受刑者たちの声がこの記事の末尾の記事に載っています。

「人間として扱われなかった」

というのが彼らの言い分で、そんなひどい扱いを受けてきた彼らが、占領地で支配しているウクライナ市民や、戦闘で捕獲したウクライナ軍の捕虜を戦時国際法通りに扱うことができるわけもありません。

人命尊重のために即時停戦をと、安全圏からおためごかしのきれいな言葉で語ってきた伊勢崎氏は、それでロシア軍の占領を固定化することがどれだけウクライナ市民の人命を損なう、ロシア軍兵士をも苦しめる非人道的な主張だったか噛み締めるべきです。

「今こそ訂正を」。

「今こそ反省を」。

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ロシア軍がウクライナに最大規模の空襲…全土に無人機やミサイル攻撃

 ロシア軍は29日、ウクライナの首都キーウなどのウクライナ全土に無人機やミサイルによる大規模な攻撃を行った。ウクライナ当局によると、病院や住宅などの民間施設が被害を受け、少なくとも19人が死亡し、108人が負傷した。ウクライナ側は、昨年2月のロシアによる侵略開始後、最大規模の空襲だとしている。29日、ロシアのミサイル攻撃を受けたキーウの倉庫で活動する消防士=ロイター

29日、ロシアのミサイル攻撃を受けたキーウの倉庫で活動する消防士=ロイター

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はSNSで露軍の29日朝までの攻撃について、キーウやポーランド国境に近い西部リビウ、東部ドニプロやハルキウ、南部ザポリージャやオデーサなどの広範囲に及んだと明らかにした。軍事施設やインフラ施設のほか、教育機関やショッピングセンターなどが被害を受けた。

 ゼレンスキー氏は、露軍が攻撃で無人機や巡航ミサイル、長距離地対空ミサイル「S300」などの兵器を使ったと主張した。ウクライナ空軍は、露軍による無人機やミサイルの攻撃総数は158に上り、そのうち無人機27機と巡航ミサイル87発を撃墜したと強調した。

 東部ドニプロでは産科病院や商店、住宅が被害を受け、少なくとも5人が死亡した。

 

前線で任務に就くウクライナ兵=11月4日、南部ザポロジエ州ロボティネ近郊(EPA時事)

 ウクライナのメディアが、ドローンから撮影された現場の動画を27日に報道。地面にひざまずいた3人が至近距離から銃撃される様子が収められていた。
 殺害への関与が特定されたのは、ロシア北西部プスコフ州を拠点とする第76親衛空挺(くうてい)師団。昨年の首都キーウ(キエフ)近郊ブチャの民間人殺害にも関わったとされ、最高検は「戦争犯罪で悪名高い部隊だ」と非難した。

 

 

 ロシアのプーチン政権が、侵攻したウクライナの占領地域で、カトリック教会を弾圧している。ロシア正教会を含む東方正教会と対立してきたカトリックを「侵略者」と位置付け、国民を結束させる狙いがある。400年余に及ぶキリスト教の東西対立が蒸し返されている。(小柳悠志、写真も)

◆「宗教施設に武器を保管している」

 インタファクス・ウクライナ通信は7日、ロシア当局が併合を宣言したウクライナ南部の州で、キリスト教カトリックの総本山バチカン(ローマ教皇庁)の傘下にある「ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会」(UGCC)の活動を禁じたと報じた。宗教施設に武器を保管し、「反ロシア暴動を画策している」のが理由という。
リトアニア・ビリニュスで1月、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の礼拝堂

リトアニア・ビリニュスで1月、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会の礼拝堂

 UGCCはソ連時代の1946年にも禁教とされ、政府の管理下にあるロシア正教会への統合が進められた。ソ連崩壊後に復興したが、UGCCにとってロシアは長年の仇敵(きゅうてき)であり、侵攻を命じたプーチン大統領を厳しく非難し、徹底抗戦を訴えてきた。

東方正教会 キリスト教の一派でビザンツ帝国の国教として発展し、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの源流となる国家「キエフ・ルーシ」は988年に受容した。ギリシャ、東欧、旧ソ連圏で信者が多い。11世紀にローマを拠点とするカトリックと分裂した。正教とカトリックの折衷型であるウクライナ・ギリシャ・カトリック教会は「帰一教会」「東方典礼カトリック」「ユニエイト」とも呼ばれ、信者数は数百万人規模とされる。

エストニアのタリンで2022年12月、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会に集うウクライナからの避難民ら

エストニアのタリンで2022年12月、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会に集うウクライナからの避難民ら

 現地の宗教事情についての著書もある角茂樹・元駐ウクライナ日本大使によると、UGCCは近代以降、ウクライナにとってアイデンティティーのよりどころとなり、ウクライナが民族としての独自性を主張する根拠となってきた。ソ連時代にウクライナの分離独立を目指した民族主義者ステパン・バンデラ(1909~59年)の父親もUGCCの聖職者だったという。

◆16世紀にさかのぼる対立

 ウクライナでの宗教対立は、カトリックの東方拡大にさかのぼる。
 カトリックは16世紀、ルターらによる宗教改革によって生まれたプロテスタントに対抗し、イエズス会などを通じて日本を含むアジアや東欧で布教を強化した。現在のウクライナ、ベラルーシ領を含む中世の大国ポーランド・リトアニアでは、正教徒をカトリックに改宗させる動きが強まった。
 こうした過程で、正教会の典礼(儀礼)を維持したままローマ教皇の権威を認めるUGCCが誕生。ベラルーシ西部グロドノの宗教博物館によると、「カトリックとともに、ウクライナやベラルーシに西欧の文化が流入した」という。

◆ウクライナの西欧化を警戒

 ロシアは勢力圏とみなす東欧が西欧の文化に取り込まれることを嫌っており、東欧で加盟国を広げる軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)とカトリックをともに「ロシアを脅かす存在」と位置付けてきた。
モスクワ郊外で2021年5月、ロシア正教会を代表する聖地のセルギエフポサト大修道院

モスクワ郊外で2021年5月、ロシア正教会を代表する聖地のセルギエフポサト大修道院

モスクワで4月、復活祭のため信者が持ち込んだパンや卵を聖化するロシア正教会の聖職者(左)

モスクワで4月、復活祭のため信者が持ち込んだパンや卵を聖化するロシア正教会の聖職者(左)

 ロシアのラブロフ外相は10月、NATOの東方拡大やウクライナへの支援を「米国が率いる十字軍が、ロシアを攻撃している」と非難した。中世にカトリック勢力の第4次十字軍が、東方正教を保護したビザンツ帝国を攻撃した史実を踏まえた発言とみられる。またプーチン氏は性的少数者(LGBTQ)や同性愛を容認する西欧を「信仰を失い、堕落した社会」と糾弾している。
モスクワで2020年2月、取材に答えるアンドレイ・クラエフ氏

モスクワで2020年2月、取材に答えるアンドレイ・クラエフ氏

反体制派として知られるロシア正教会の聖職者アンドレイ・クラエフ氏の話 プーチン政権が、NATOの東方拡大を十字軍による東方世界の破壊に例えるのは、哀れなプロパガンダ(政治宣伝)だ。ロシアの右派は西欧のキリスト教が堕落して悪魔崇拝に陥り、ウクライナとロシアを戦争に陥れたと信じている。プーチン大統領は、ロシアが聖なる国であり、キリスト教本来の信仰を保持していると主張している。プーチン政権が「ロシアと西欧の宗教対立」を叫ぶのは理由がある。植民地のように扱ってきたウクライナに対して、苦戦している現実に我慢できないからだ。「敵はウクライナではなく西欧全体」と印象付けることで、国民の不満を和らげるつもりだろう。
 
 
 

ロシアでプーチン政権を批判する急先ぽうとして知られ、今月、所在が不明となっていた反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏について、支援団体は北極圏にある過酷な環境の刑務所に収監されていると明らかにしました。

アレクセイ・ナワリヌイ氏は、ロシア政府の関与が疑われる毒殺未遂事件に見舞われ、2021年、療養先のドイツから帰国した際に過去の経済事件を理由に逮捕され、実刑判決を受けてモスクワ近郊の刑務所に収監されていました。

ナワリヌイ氏の支援団体は今月6日以降、ナワリヌイ氏との連絡が途絶え、所在が不明となっていると訴えていましたが、25日、ナワリヌイ氏がロシア北部のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所にいることがわかったとSNSで明らかにしました。

弁護士が刑務所でナワリヌイ氏と面会し、元気だとしています。

ナワリヌイ氏は今月上旬、来年3月のロシア大統領選挙に向けて、支援団体を通じて、プーチン大統領以外の候補者に投票するよう呼びかける運動を始めたばかりで、安否を懸念する声が上がっていました。

ナワリヌイ氏が新たに移送された刑務所は、極寒の北極圏にあるロシアで最も厳しい施設の1つとされ、ナワリヌイ氏の側近はSNSで「手紙を送ることすらほぼ不可能で世界から最も隔離された場所だ」としてナワリヌイ氏の状況に懸念を示すとともに、プーチン政権を批判しています。

 
 
 「ストームZ」の兵士として戦った経験を語るアンドリー=21日、ウクライナ西部の収容施設(共同)

 「ストームZ」の兵士として戦った経験を語るアンドリー=21日、ウクライナ西部の収容施設(共同)

 ウクライナに侵攻するロシア軍が前線に投入する元受刑者らの突撃部隊「ストームZ」の兵士2人が29日までに共同通信の取材に応じ、十分な訓練や武器もないまま肉弾戦に放り込まれ、多数が犠牲になったと証言した。作戦もずさんで「人間として扱われなかった」と語った。ロシアの刑務所での国防省による勧誘の実態も明らかにした。
 2人は投降して捕虜となりウクライナ西部の収容施設でインタビューに答えた。ウクライナ当局は施設の場所を明かさない条件で取材を許可。当局者は同席しなかった。
 配送業を営んでいたアンドリー(36)はロシア西部スモレンスクで2011年、当時20代の知人男性が借金を返さないことに腹を立てておので殺害、禁錮19年の判決を受け収監された。
 国防省担当者が刑務所に現れたのは今年5月。6カ月間の軍務の代わりに出所を認め、月20万ルーブル(約31万円)の報酬を支払うと勧誘した。受け入れると、ロシア占領下のウクライナ東部ルガンスク州の基地に送られた。
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2 コメント

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ナワリヌイ氏 (時々拝見)
2023-12-30 17:16:21
極夜で北極圏と確信したんでしょうか。
不屈の魂を称賛します。

なぜか、ロシアの占領地/傀儡国は「人民共和国」。
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Unknown (暗黒大将軍)
2023-12-30 22:28:05
親露派陰謀論者どもが殺し文句だと思ってるらしい「可哀想なロシア系住民」ってやつですが、まぁ可哀想だと見做すのはこいつらの選好の問題だしかまわんでしょ

パレスティナにハマスがいても可哀想だと思う人が多いように、ロシア系住民に分離主義者ってゴロツキがいても見て見ぬふりはできますし

陰謀論者はマイダン政変で高支持率だった親露派ヤヌコビッチがアメリカの工作で不当に失脚させられた、なーんて俗受けしそうな話を未だに触れ回ってるんですが、もしそうなら国連も公正選挙だと認めてる2014年大統領選で堂々と親露派候補の高支持率ぶりを見せつけて圧勝できたんじゃないんですかね

この時は選挙をボイコットさせたり分離主義者に投票所を破壊させたりホントみっともないことやってたわけでしょ

しかし来年はこいつらの願望どおりロシアの当たり年になりますね
侵略はほぼ成功し、議長国になってBRICSの「裏国連」化を進め、パリ五輪では当然のように選手に醜い政治パフォーマンスをさせるでしょう

陰謀論者どもは今年以上に侵略国家の歴史修正に加担する、奉仕する喜びに浸れるわけです(笑)
そんな時に今さら侵略国家と距離を置こうとするって、ホント伊勢崎って空気の読めない奴ですね
返信する

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