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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑でプーチン大統領らに逮捕状発令。国連人権理事会が殺害・性的暴行・子どもの連れ去りなどロシア軍の戦争犯罪があったとする調査報告書を公表。橋下徹氏、伊勢崎賢治氏らは沈黙。

2023年03月18日 | ロシアによるウクライナ侵略

リボワベロワ全権代表は子どもの権利担当だが、ロシアに連行されたウクライナの子どもたちを洗脳する取り組みについて公然と語っていた。

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 ロシア軍によるウクライナ侵略が始まってから半年間くらい、トンデモ弁護士コメンテーターの橋下徹氏は逆張りのつもりなのかロシアを擁護し、ウクライナとNATOを批判する発言を連発しました。

 開戦翌月の2022年3月には激戦地のマリウポリから何千人もの子どもや住民がロシアに強制連行されていることが報じられました。

 

当時の報道。

 

 

 これに対して、橋下氏は2022年3月28日にこのロシア軍による強制連行の問題を扱ったフジテレビのめざまし8で、

「注意しないといけないのは、『サハリンに送られている、シベリア抑留されて強制労働させられている』というのは、ウクライナの発表によるんです」

「今、ロシアに一番厳しい姿勢を取っている日本の産経新聞がオンラインで取材をしたところ、ウクライナの東部地域に住んでいる人は、その親戚の人の家に送られている市民もいる」

「ロシアに避難ができて命が守られるのであれば、僕はそれは重要な選択肢だと思うんです」

「本当にロシア内で避難ができるのであれば、ウクライナ政府は市民にきっちり説明すべきだと思います」

と法律家とは信じられないような発言をしました。

 強制連行はジェノサイド条約違反の国際法違反であり、戦争犯罪です。

 それをロシアの言い分そのままに、ロシアに攻撃されている街の住民がロシアに避難?している、それでウクライナ人の命が助かっているのだからいいではないかというのですから、どんだけロシア信者なのか、呆れてものもいえませんでした。

 

人命尊重を装ってとんでもないことを言っている。

橋下徹氏がロシアへ強制連行されたウクライナ市民について「ロシアに避難ができて命が守られるのであれば、僕は重要な選択肢だと思うんです」。強制連行自体がジェノサイド条約違反の戦争犯罪なんですが?

 

 

 

 それから1年経過した2023年3月16日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの違法行為をめぐって、国連人権理事会が設置した独立調査委員会は、民間人に対する無差別攻撃や殺害、性的暴行、子どもの連れ去りなど、ロシア軍による広範囲の戦争犯罪があったとする調査報告書を公表しました。

 委員会のメンバーは調査にあたって、ウクライナの都市や集落など56カ所を訪問し、ロシアの侵略を受けた地域から周辺国に避難した人を含めて計595人に聞き取り調査を実施したということです。

 報告書は、ウクライナの子どもがロシア軍に連れ去られている問題では、目撃者の証言をもとに

「小さい子どもたちが家族と連絡が取れない状態になっている」

と報告し、戦争犯罪に相当すると指摘しました。

 しかし、橋下徹氏はもちろん都合の悪いことには完全黙秘、テレビでもツイッターでも何も語っていません。

ロシアの発電所攻撃は人道法違反の可能性 国連調査委が最終報告 - SWI swissinfo.ch

記者会見する国連人権理事会が設置した独立調査委員会のモーセ委員長。

国際法違反で戦争犯罪にもなりかねないロシア軍の原発攻撃に沈黙する橋下徹氏。ウクライナ人に「旧ソ連から時代は変わった」「中国がロシアに働きかける可能性もある」からロシアと妥協しろと言い募る(呆)。

 

 

 さらに、この報告書は、人口密集地へのロシア軍の爆弾やミサイルによる攻撃について

「民間人の被害を明らかに軽視している」

と指摘し、無差別攻撃を認定しました。

 また、ブチャを含むキーウ州では14歳の少年を含む計68人の処刑を確認したとし、写真や検視記録から

「最も多い殺害方法は近距離から頭を撃つことだ」

としています。

 さらに、ロシア軍が2022年10月から始めた発電所などインフラへの攻撃についても、

「人道に対する罪」

として戦争犯罪にあたる可能性があるとして、詳細な調査の必要性を訴えた。

 そして、ウクライナ軍への協力者を探すなかで、ロシア軍の兵士が4歳から82歳に対する性的暴行を行ったことも認定した上で、いずれの行為も戦争犯罪に相当すると指摘しました。

ウクライナ戦争の初期にキーウを包囲していたロシア軍が撤退した後、キーウ近郊のブチャで市民を少なくとも数百人虐殺していたことが明らかになった。

国連総会がロシア軍に対して「即時・完全・無条件」の撤退を求める決議を圧倒的多数で可決。ウクライナのインフラ・民間施設への攻撃の停止も求め、ロシアの戦争犯罪に対する調査と訴追の必要性を初めて明記。

 

 

 さらに国連人権理事会とは別にICC=国際刑事裁判所は独自の捜査を続けているのですが、3月17日、ICCはロシアのプーチン大統領の逮捕状を発行しました。

 ICCによりますと、プーチン大統領はロシアが占領したウクライナの地域から子どもをロシアへ不法に移送=強制連行した戦争犯罪の疑いがあるとして逮捕状を発行したということです。

 カーン主任検察官は、孤児院や児童養護施設から少なくとも数百人の子供たちが連れ去られた実態を確認したと表明しています。

 これらの犯罪は侵攻開始以降に行われ、プーチン氏が関与した

「合理的な根拠がある」

としています。

 ウクライナへの侵略でプーチン氏に逮捕状が出るのはもちろん初めて。そもそもICCによる逮捕状が主要国首脳に出たのが前代未聞です。

れこそナチス以来の戦争犯罪。

ロシアがウクライナの民間人に数百発のクラスター爆弾を使用。ウクライナ全土のインフラ施設にミサイル攻撃。ザポロジエ原発がロシアのミサイル攻撃で外部電源停止。ウクライナ戦争を泥沼化しているのはロシアだ。

 

 

 ICCは2002年、常設の国際刑事司法機関として、オランダのハーグに設立され、1998年にローマで採択された設立条約(ローマ条約)には、現在日本を含む120カ国以上が加盟していますが、戦争犯罪を犯すかもしれないと思っているアメリカやロシアは加盟していません。

 ICCが裁くのは、国家間紛争や国内紛争などで重大な非人道的行為を犯した個人で、具体的には、

①特定の民族や宗教集団などの壊滅をねらった集団殺害(ジェノサイド)

②一般住民の虐殺や性的暴行などの「人道に対する罪」

③捕虜の取り扱いなどを定めた戦争法規違反(戦争犯罪)

などです。

 ICCの役割は非人道的な指導者が裁かれる可能性を示し、紛争抑止につながることを大きな目的としますが、国連の裁判所による公平な判断によって、紛争当事者の和解や再建を促すねらいもあります。

ICCができる前は国連唯一の裁判所だった国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)も早くも2022年3月16日にロシアに対し、

「ウクライナで起きている広範な人道上の悲劇を深刻に受け止めており、人命が失われ人々が苦しみ続けている状況を深く憂慮している。ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

として、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置を出している。この措置には法的拘束力があるのでこれ以降のロシア軍の侵攻はこの一点だけでもすべて国際法違反。

国際司法裁判所がロシアに対し、ウクライナでの軍事行動を即時停止するよう命じる仮保全措置命令(法的拘束力あり)。「ロシアによる武力行使は国際法に照らして重大な問題を提起しており、深い懸念を抱く」

 

 

 

 もちろん、ウクライナでのロシアの戦争犯罪をめぐってはロシアは否定している上、ICCにも非加盟のため身柄の引き渡しを拒否するとみられていて、実際に裁判が開かれる可能性は低そうです。

 プーチン氏への逮捕状について、ロシアのペスコフ大統領報道官は

「言語道断であり、認めがたい」

「ロシアは、この裁判所の管轄権を認めておらず、いかなる決定もロシアにとっては無効だ」

と述べています。

 しかし、国連人権理事会にロシア軍の戦争犯罪行為を詳細に認定する調査報告書が提出され、とうとう国際刑事裁判所がプーチン大統領らに逮捕状を発令した国際的な意味は計り知れないほど大きいです。

 少なくともプーチン大統領が海外で外交する自由は大きく制限されます。

 この大きな法律的な状況の変化に、自称法律家の橋下徹氏も、自称戦時国際法の専門家である伊勢崎賢治氏も沈黙していますが、都合の悪いことには目をつぶるその不誠実さは如何ともしがたいです。

 こういうエセ平和主義者たちが戦争の違法化を遅らせ、日本と世界の判断を誤らせると言っても過言ではないでしょう。

杉原こうじ氏は武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表で、平和構想提言会議メンバー。原則として武器取引には反対していても、真の平和主義者なら悩みつつも人命尊重のために武器供給やむなしと考えるのは当然だ。

これに対して、伊勢崎氏ら即時停戦派(の一部)は「ロシアの行為が許されないのは当然にしても」などと枕詞で言うだけで、あとはウクライナとNATOの批判に終始するので、思考に苦悩がない。

だからトンデモ極左新聞の長周新聞にも堂々と何度も登場(呆)。

ウクライナ戦争に対する「即時停戦派」がなぜ「徹底抗戦派」より、国際世論でも国内的にも支持を得られないのか。その理由は即時停戦派の偏頗性=偏っていて不公平、にある。

 

 

追記

プーチン大統領は2023年1月、リボワベロワ氏に対し、ウクライナの露軍占領地域で保護者のいない子供を見つけ出すよう指示した、2022年5月の大統領令への署名で、占領地域の子供のロシア国籍取得を簡素化し、孤児をロシア人と養子縁組させることを奨励していました。

今回のICCの逮捕状の容疑が子どもたちの強制連行になっていた理由は、キーウ近郊のブチャなどで多数の民間人が虐殺されたなどの容疑だと、大統領の指示を立証するには多くの証言が必要になるので、プーチン大統領の指示が明確な子供の強制移送をまず立件した、ということです。

そしてICC加盟国123か国はプーチン大統領ら二人を逮捕する義務があるそうです。

プーチン大統領が政権の座から滑り落ちたら次の大統領が身柄を拘束してICCに渡すかもしれませんよね。

調べてみるとなかなか周到な配慮がされていて、容疑者になったプーチン氏にとっては意外と効果がありそうです。

 

 

ロシアに連れ去られた子どもたちの写真、かわいそうでかわいそうで、直視できないですよね。

ロシア軍によって我が子と引きはがされた親たちの悲劇は、ナチスドイツの収容所の悲劇に重なります。

ICCのカリム・カーン検察官はBBCに対し、

「子どもたちを戦争の戦利品として扱うことは許されず、子どもたちを国外へ移送することを許されない」

「この種の犯罪がどれほど悪質なものか、弁護士でなくても理解できる。人間なら、どれほど悪質なものか理解できる」

と語ったそうです。

国際刑事裁判所がプーチン大統領らに逮捕状を発令した意味は限りなく重いです。

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ウクライナの子供1万6226人がロシアに強制移送…戦争犯罪の疑い、プーチン氏に逮捕状

 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が、孤児を救うとの名目で行ってきたウクライナの子供の強制移送について、戦争犯罪にあたるとの判断を示した。ロシアへの同化を狙った「国家ぐるみの拉致」で、1万6226人の子供がロシアに連れ去られた。ICCは今後も、ロシアの戦争犯罪の捜査を続ける方針だ。

モスクワ郊外の大統領公邸で会談するプーチン大統領(左)とリボワベロワ氏=露大統領府公式サイト(2月16日)
モスクワ郊外の大統領公邸で会談するプーチン大統領(左)とリボワベロワ氏=露大統領府公式サイト(2月16日)

 ICCは同日、プーチン氏とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)に逮捕状を出した。

 ウクライナの子供の移送について、プーチン政権はロシアの侵略が発端にもかかわらず、子供を戦火から救い、ロシアで保護しているとアピールしていた。

 プーチン氏は今年1月、リボワベロワ氏に対し、ウクライナの露軍占領地域で保護者のいない子供を見つけ出すよう指示した。昨年5月の大統領令への署名で、占領地域の子供のロシア国籍取得を簡素化し、孤児をロシア人と養子縁組させることを奨励していた。リボワベロワ氏自身もウクライナ南東部マリウポリの15歳の少年を養子にした。

 しかし、これは子供の意に反した強制移送だった。国連人権理事会が設置した国際調査委員会は16日の報告書で、親が露軍に殺害されるなどして孤児となった子供の被害が多いと指摘した。

 親がいる子供は「キャンプ」や避難名目で親と引き離されてロシアで愛国教育を受けさせられ、戻れなくなる事例もあるという。そのままロシア人の養子にされると発見は困難になる。

ウクライナ政府の集計によると、これまでに1万6226人の子供の移送が確認され、このうちウクライナに戻ったのは308人。ウクライナの最高会議(議会)の人権オンブズマンは、両親と一緒に移送された子供を含めれば15万人近い子供が移送されたと指摘する。

 ICCは今回、加盟する約40か国の付託を受け、侵略開始直後から捜査を開始。逮捕状発行まで3~5年以上かかるのが通例だが、1年でこぎ着けた。カリム・カーン主任検察官もウクライナに入り、地元当局と連携して捜査を進めた。

 ロシアのウクライナ侵略を巡っては、キーウ近郊のブチャなどで多数の民間人が虐殺されたが、大統領の指示を立証するには多くの証言が必要になる。プーチン氏の指示が明確な子供の強制移送をまず立件した。

 ICCのカーン主任検察官は17日、「具体的な最初の一歩だ。今後も 躊躇ちゅうちょ なく逮捕状を発行し続ける」と今後もロシアの戦争犯罪を追及していく意向を示した。

 

 

2023年3月18日 BBC

Russian President Vladimir Putin meets with Maria Lvova-Belova, Russian children's rights commissioner, at the Novo-Ogaryovo state residence, outside Moscow, on February 16, 2023

画像提供,GETTY IMAGES

 
画像説明,

プーチン大統領(左)と、ロシアのマリア・リボワ・ベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)の会談の様子(2月16日)

 

オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は17日、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領らに逮捕状を出した。

ICCは、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しており、プーチン氏にこうした戦争犯罪の責任があるとしている。

また、ロシアが全面的な侵攻を開始した2022年2月24日から、ウクライナで犯罪が行われていると指摘している。

ICCは声明で、プーチン氏が直接、また他者と連携して犯罪行為を行ったと信じるに足る合理的な根拠があると説明。また、プーチン氏が大統領権限を行使して子どもたちの強制移送を止めなかったことを非難した。

ロシア政府は、戦争犯罪疑惑を否定し、逮捕状は「言語道断」だとしている。

ICCには容疑者を逮捕する権限はなく、ICC加盟国内でしか管轄権を行使できない。ロシアは非加盟国のため、この動きが何か大きな影響をもたらす可能性は極めて低い。

しかし、海外への渡航ができなくなるなど、プーチン氏に何らかの影響を与える可能性はある。

ICCは当初、プーチン氏らに対する逮捕状を非公開にすることを検討していたが、これ以上の犯罪を阻止するために公開を決めたと説明した。

ICCのカリム・カーン検察官はBBCに対し、「子どもたちを戦争の戦利品として扱うことは許されず、子どもたちを国外へ移送することを許されない」と語った。

「この種の犯罪がどれほど悪質なものか、弁護士でなくても理解できる。人間なら、どれほど悪質なものか理解できる」

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「国家による悪」を追及すると決定したカーン検察官とICCに感謝していると述べた。

同国のアンドリイ・コスティン検事総長は、「ウクライナにとって歴史的」な決定だとした。アンドリー・イェルマク首席補佐官は「まだ始まったばかりだ」と称賛した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、逮捕状は「正当だと思う」と述べた。アメリカはICCに加盟していないが、ICCは「非常に強力な主張をしていると思う」、プーチン氏が「戦争犯罪を犯しているのは明らかなので」と述べた。

連れ去った子どもを洗脳か

ロシアで子どもの権利を担当するマリア・リボワ・ベロワ大統領全権代表にも、戦争犯罪容疑で逮捕状が出された。

リボワ・ベロワ氏は過去に、ロシアに連行されたウクライナの子どもたちを洗脳する取り組みについて公然と語っていた。

昨年9月には、ロシア軍に占領されたウクライナ南東部マリウポリから、「(ロシア大統領の)悪口を言い、ひどいことを言い、ウクライナ国歌を歌った」一部の子どもたちを排除したと主張した。

また自分自身が、マリウポリ出身の15歳の少年を養子にしたと主張している。

ロシアの反応

逮捕状が出されてから数分後、ロシア政府は即座に戦争犯罪疑惑を否定した。

ロシア政府のドミトリー・ペスコフ大統領報道官はICCの決定はいずれも「無効」だと主張。ドミトリー・メドヴェージェフ前大統領は、逮捕状をトイレットペーパーに例えた。

メドヴェージェフ氏は、「この紙をどこで使うべきかなんて、説明する必要もない」と、トイレットペーパーの絵文字付きでツイートした。

一方で、ロシアの野党指導者たちはICCの発表を歓迎した。刑務所に収監されているアレクセイ・ナワリヌイ氏の側近イワン・ジダーノフ氏は、「象徴的な一歩」だが、重要な一歩でもあるとツイートした。

プーチン氏が裁かれる可能性は

ICCの逮捕状は、プーチン氏を逮捕するための非常に長いプロセスの最初の一歩に過ぎない。

ロシアはICC加盟国ではない。そのため、プーチン氏やリボワ・ベロワ氏がオランダ・ハーグで出廷する可能性は極めて低い。

ロシア国内で揺るぎない権力を享受しているプーチン氏を、ロシア政府がICCに引き渡す見込みもない。

つまり、プーチン氏がロシアにとどまる限り、逮捕のリスクはないということになる。

国際的な制裁により、プーチン氏の移動の自由がすでに大きく制限されていることを考慮すると、同氏を裁判にかけようとする国に自ら現れることはまずないだろう。

2022年2月にウクライナに侵攻して以降、プーチン氏が訪れた国はわずか8カ国。そのうち7カ国は、同氏が「旧ソ連諸国」とみなす国だった。

「旧ソ連諸国」ではない訪問先は、昨年7月に訪れたイランだった。プーチン氏はイランの最高指導者アリ・ハメネイ師と会談した。

イランは無人偵察機などの軍用装備品をロシアに提供し、ウクライナ侵攻を支援していることから、同国を再び訪問したとしてもプーチン氏に危険が及ぶことはないだろうPresentational white space

プーチン氏を裁くには少なくとも2つの大きな障害がある。

ICCの設置法「ローマ規程」は、国際犯罪の責任を負う者に対して自国の刑事裁判権を行使することが、すべての国の義務だと定めている。ICCが介入できるのは、国家が捜査や加害者の訴追を行えない、あるいは行おうとしない場合に限定される。

ローマ規程は現在、123カ国が批准しているが、ロシアは含まれない。ウクライナなど、署名はしているが批准していない国もあり、ICCの法的地位がすでに揺らいでいることがわかる。

もう1つの障害は、ICCが容疑者不在の欠席裁判を認めていないことだ。

ウクライナでの戦争にとって何を意味するのか

ICCの逮捕状は、ウクライナで起きていることは国際法違反だという、国際社会からのシグナルだと捉えられている。

同様の犯罪が現在も続いていること、そしてさらなる犯罪の発生を抑止することを理由に、今回の発表に踏み切ったと、ICCは説明している。

しかしロシアは今のところ、逮捕状は無意味だと一蹴している。ロシア政府はそれどころか、自軍による残虐行為はないとの主張を変えていない。

国際刑事裁判所=2021年3月、AP

国際刑事裁判所=2021年3月、AP

 国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)は17日、ロシアが侵攻中のウクライナから子どもの連れ去りに関与した疑いがあるとして、プーチン大統領に戦争犯罪の容疑で逮捕状を出した。ICC非加盟のロシア国内で逮捕される可能性はまずないが、戦争犯罪人としての容疑による国際的信用の失墜は避けられず、外国訪問などにも制約が出るとみられる。
 
 ICCは過去にも現職国家元首に逮捕状を出しているが、国連安全保障理事会常任理事国の元首に対しては初めて。
 ICCのカーン主任検察官は、少なくとも数百人の子どもが連れ去られ、ロシアで養子に出されたが、この過程でプーチン氏の関与があったと説明した。ウクライナ政府は身元が判明しているだけでも連れ去られた子どもは1万6000人に上るとしている。
 ロシア外務省のザハロワ情報局長は「われわれはICCの司法権を認めておらず、逮捕状に法的な意味はない」と強く反発。ペスコフ大統領報道官も「言語道断で受け入れがたい」と批判した。ただ、プーチン氏がICCに加盟する123の国・地域を訪問すれば逮捕される可能性がある。
 ウクライナのゼレンスキー大統領も声明で「歴史的な判断」と歓迎。「子どもを家族から引き離す行為は、ロシアという侵略者の国策だ」と改めて非難した。バイデン米大統領も「プーチン氏は戦争犯罪を犯した」と明言した。
 ICCは同時に、ロシアの児童権利保護の大統領全権代表マリア・リボワベロワ氏にも同じ容疑で逮捕状を出した。リボワベロワ氏はロシアが支配するウクライナ東部ドンバス地域を中心に「ロシア系の子どもの保護」を担当しており、近年ではロシアの保守的価値観を宣伝する重要なポストとなっていた。(モスクワ支局・小柳悠志)

◆主任検察官「子どもたちを戦利品にしてはならない」

プーチン大統領(AP)

プーチン大統領(AP)

 【ロンドン=加藤美喜】国際刑事裁判所(ICC)が17日、戦争犯罪の容疑でロシアのプーチン大統領に逮捕状を発付できたのは、ウクライナの子どもたちの連れ去りに関連し、プーチン氏が出した大統領令が根拠となった背景がある。逮捕は現実には困難とみられるが、識者らは今後の犯罪防止やプーチン氏の国際的な信用失墜などにつながる意義を強調。さらなる立件の可能性も指摘する。
 ICCのカーン主任検察官は17日、逮捕状発付を受けた声明で「何百人もの子どもたちがウクライナの児童養護施設から連れ去られ、その多くがロシアで養子にされていることを確認した」と述べ、「プーチン氏が発布した複数の大統領令によって、ロシア国籍の付与を早めるための法改正が行われ、養子縁組が容易になった」と説明した。
 カーン氏は「これらの行動は子どもたちをウクライナから永久に排除する意図を示すものだ」と主張し、「子どもたちを戦利品にしてはならない」と訴えた。

◆「国外に出られなくなる」「ジェノサイドにも該当」

 子どもたちの連れ去りは、ICC設立条約のローマ規程8条が定める「戦争犯罪」の複数の項目に該当する。逮捕状を発付したICC予審2部は「プーチン氏が個人的な刑事責任を負うと信じるに足る合理的な理由がある」と判断した。
 ICCは非加盟国のロシアに対して管轄権がないため、プーチン氏の逮捕は不可能に近い。しかし、英ノッティンガム大のオリンピア・ベコウ教授(国際法)は「加盟国に行けば逮捕される危険があるため、プーチン氏は事実上、ロシア国外に出られなくなる」と指摘。「逮捕状発付は被害者の声を届け、将来の残虐行為を抑止する意義がある。国際社会でプーチン政権の権威を一層失墜させることに寄与する」と評価する。
 旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で主任検察官を務めたジェフリー・ナイス氏は英BBC放送に「ロシアで将来政権が代わり、新たな指導者がプーチン氏の身柄を引き渡すことがないとは誰にもいえない」と述べ、逮捕状は「非常に重要な一歩」と解説した。
 英ボーンマス大のメラニー・クリンクナー教授(国際法)も「国際刑事法の歴史で、政治状況の変化を受けて逮捕された個人は複数いる」と指摘。「子どもたちの強制移送はローマ規程6条の集団殺害犯罪(ジェノサイド)にも該当する」とし、さらなる訴追も可能との見方を示した。
 カーン氏は「相互に関連する複数の捜査を続けている」とし、「証拠が集まればためらわずに逮捕状を請求する」と強調した。

 

民間人を殺害、監禁… 「ロシア軍が戦争犯罪」国連調査委が報告書

戦火を逃れウクライナ南部ザポリージャの施設にたどり着いた避難民=2022年4月、AP

 ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、国連人権理事会の独立調査委員会は16日、ロシア軍が民間人に対する無差別攻撃や虐待、レイプなど広範な戦争犯罪を行ったとする現地調査結果を公表した。実態はこれまでもメディアなどで度々報じられているが、ロシアは民間人を狙った攻撃は否定している。

 報告書は、ロシア軍が軍事、民間施設を区別せずに爆弾やミサイルで攻撃していると認定した。2022年10月以降続いている電力、エネルギー関連施設への攻撃でも市民生活に多大な影響が生じており、「人道に対する罪」に相当する可能性があると指摘した。

 また、ロシア軍がウクライナ軍への協力者を洗い出す過程などで、民間人の殺害・監禁や、レイプをしたり性的暴力を加えたりしていると指摘。ウクライナの子供たちがロシアに多数移送され、親と離れ離れになっている問題も「一時的な措置のはずだったのに長期化し、親子の連絡や再会、帰還に多くの障害が生じている」として、戦争犯罪に相当すると判断した。

 報告書によると、ロシアによる民間人収容施設は環境が劣悪で、満足に寝る場所もなく、トイレがバケツというケースもあった。ある収容施設では、劣悪な環境で高齢者10人が地下室で死亡したにもかかわらず、遺体は他の収容者とともに放置されたという。

 一方、ウクライナ軍についても、不特定多数の攻撃につながるクラスター弾や空中散布式の対人地雷を使ったケースがあるとみられると批判した。

 調査委員会は8回にわたりウクライナで調査を行い、約600人にインタビューをした。国連の集計では今年2月15日時点で、侵攻による民間人の死者は8006人、負傷者は1万3287人。800万人が難民として欧州などに避難し、国内避難民も540万人に上っている。【ヨハネスブルク平野光芳】

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4 コメント

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プーチン党の犯罪 (時々拝見)
2023-03-18 20:45:20
子ども連れ去り洗脳で、ナチスのほかクメールルージュ(ポルポト)の犯罪を思い出しました。
橋下氏の言い訳って、ナチスの言い訳とそっくりな気がします。ユダヤ人隔離はユダヤ人自身の安全のためと言ったり。ゲットーはユダヤ人自治地区と言い換えてました。
プーチンの心とかけて
維新の代表と解く

ハシモトと、おる
返信する
虐殺に沈黙する人 (時々拝見)
2023-03-19 12:27:25
ウクライナでの虐殺に沈黙する人々、
第二次世界大戦やその前の虐殺にも沈黙していた人々ですね。変わったところでは、いろいろ理由があるにせよ、南京大虐殺に沈黙し始めた中華人民共和国でしょうか?
返信する
Unknown (秋風亭遊穂)
2023-04-03 19:17:08
 ネット上にはICCが西側寄りという批判(中傷?)がされている。イラク戦争がよく引き合いに出されるが、米国とICCの構図をあらためて見ておきたい。

 米国はICCの締約国ではないにとどまらず、ICCを敵視している。米国軍人保護法(American Service-Members' Protection Act)は、ハーグ侵攻法(Hague Invasion Act)とも言われるが、これはICCが米国(または同盟国の)軍人や公務員を拘留することについて、米国政府が適切な手段を講じる(ICCがあるハーグに派兵する恫喝)というもの。また、政府機関等がICCを支援することを禁じたり、ICC の締約国に対する米国の軍事援助も禁じられている(都合の良い抜け穴もある)。

https://en.wikipedia.org/wiki/American_Service-Members%27_Protection_Act

 これまで米国はどんな恫喝をICCにしてきたのか。次の記事に具体的に例示されている。なお、記事はICCに批判的である。

U.S. threatened to invade International Criminal Court. Now it loves ICC for targeting Putin
https://mronline.org/2023/03/31/u-s-threatened-to-invade-international-criminal-court/

 2020年、ICCは、米国、NATO、およびアフガニスタン政府の同盟国によってアフガニスタンで犯された戦争犯罪の調査を開始したが、米国国務省は裁判所の主任検察官である Fatou Bensoudaとその同僚に制裁を科したという。
 J・ボルトンは、ICCの判事や検察官を逮捕すると脅し、「アメリカの裁判官や検察官の入国を禁止し、アメリカの金融システムで彼らの資金を制裁し、アメリカの刑事システムで彼らを起訴する。米国人に対するICCの調査を支援する企業や州に対しても同様の措置をとる」とした。

 また、NYタイムスの報道では、次のような報道がされた。
-----プーチン逮捕状の前にペンタゴンは米国がウクライナでのロシアによる残虐行為に関する証拠を国際刑事裁判所と共有することを阻止している、と当局者は述べた。軍の指導者たちは、米国人を起訴する道を開くかもしれない前例を作ることを恐れている-----

 一方、ICC自体にも差別的だとする批判がアフリカ等からされている。

 ICCにも限界や問題を含んでいるかもしれない。しかし、プーチンに出された逮捕状が戦争犯罪に対する牽制になっていることは、ロシアやペンタゴンの反応を見てもわかる。暴力から民間人を守るのは「法の支配」という原理、それを広めていく戦いが必要だと思う。
返信する
お二人ともいつもありがとうございます (raymiyatake)
2023-04-04 01:28:06
時々拝見さん、たぶん最多コメンテーターです。
いつもありがとうございますm(__)m

秋風亭遊穂さん、説得力あるコメントありがとうございます。
「プーチンに出された逮捕状が戦争犯罪に対する牽制になっている」
これが白井邦彦先生にはおわかりいただけず、悲しいです。

即時停戦派はウクライナと欧米をロシア以上にひはんするのをやめて、非軍事だけを唱えていたら筋は通っているし、ずっと支持者が増えると思ってます。
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