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(イランが2012年1月2日に成功したミサイル発射実験の様子)
実は、昨年末から、私が固唾を呑んで見守ってきたのがイランによるホルムズ海峡「封鎖」宣言です。
最近、イランとアメリカの関係は、アメリカの無人ステルス偵察機RQ-170を2011年12月4日にイランが「撃墜」したと発表したことで、さらに緊張が高まってきました。
イランがアメリカの無人偵察機「撃墜」 オバマ大統領の返還要求を拒否するイランの方が筋が通っている
イラン軍は2011年12月24日からホルムズ海峡で10日間の演習を行ってきました。
これはなんのための演習かというと、欧米諸国によるイランへの追加制裁を牽制した動きでした。
国際原子力機関(IAEA)は2011年11月、イランに核兵器製造の疑いがあるとする報告書を発表しています。
それ以降、西側諸国はイランへの圧力を強めており、欧州連合(EU)は1月の次回会合までに、イラン産原油の禁輸措置を含め、追加制裁措置を実施するかどうか決定するとしているのです。
(イラン海軍の演習の様子)
これに対して、イランは12月27日、同国の原油輸出に対し制裁措置が加えられた場合には、ホルムズ海峡を封鎖し原油輸送を停止させると警告しました。
国営イラン通信(IRNA)の報道によると、ラヒミ第1副大統領は「彼ら(西側諸国)がイランの原油輸出に制裁を課すなら、原油一滴たりともホルムズ海峡を通過させない」と述べたそうです。
イラン海軍司令官が「ホルムズ海峡の封鎖は『コップの水を飲むより簡単』だ」と述べたのに対して、米国務省は、イランからの警告について「空威張り」と一蹴するとともに、米国は原油の自由な輸送を支持している、との姿勢を強調し、米海軍第5艦隊は12月28日、ホルムズ海峡の通行を阻害する行為は容認しないと表明しました。
そして、その後も、イランとアメリカのチキンレースは激化しているのです。
(米海軍第五艦隊)
米政府は12月29日、サウジアラビアに新型「F─15」戦闘機84機を売却する294億ドルの契約に調印しました。イランがホルムズ海峡封鎖を警告するなど緊張感が高まるなか、米国は、取引は域内の安全保障強化につながる、としていますが、逆に緊張感を高めるとみるほうが自然でしょう。
そして、とうとうオバマ米大統領は12月31日、休暇滞在中のハワイ州ホノルルで、イランの中央銀行と取引がある各国の金融機関に対して経済制裁を実施する法案に署名しました。
同中銀は、イランの原油取引の決済の大部分を担っています。制裁の対象は各国の民間銀行と中央銀行で、取引内容によって2~6カ月の警告期間を置いた後に実施される見通しです。
例外措置はいろいろありうるのですが、日本も米国と難しい交渉を迫られています。
これに対して、イラン国営ファルス通信は2012年1月1日、イランが初の国産核燃料棒の製造と実験に成功し、首都テヘランにある研究炉に装填したと伝えました。
さらに、国営イラン通信(IRNA)によると、1月2日、長距離地対艦ミサイル「カデル」をイラン海軍が試射し実験は成功し、ミサイルは標的を破壊したと伝えています。IRNA通信はさらに、「イラン国防軍には既に大量の地対艦カデルミサイルが配備されている」としました。
また、国営プレスTVによると、2日の演習では地対地ミサイル「ヌール」の試射にも成功したと伝えました。
イランの示威行動はタイミング良く成功していると言えるでしょう。
1月3日、イランはペルシャ湾から先週一時的に移動していた米海軍第5艦隊の空母「ジョン・C・ステニス」に対し、同湾へ戻らないよう警告しました。
米国側はこれをはねつけ、対イラン経済制裁が効果を発揮していることを示す動きだとの見方を示しています。
この空母が無事寄港できるのか。イランは本当に攻撃してしまうのか。
イランがホルムズ海峡を封鎖できないにしても何か行動を起こせば、アメリカがイラン本土を攻撃する可能性は非常に高いでしょう。常々イランの核開発施設空爆を公言しているイスラエルの動向も心配です。
これだけ、イランとアメリカがはったりだか本気だかつかない猛烈な挑発と駆け引きを繰り広げているのに、日本でほとんど報道されないのが不思議でなりません。
余談ですが、朝鮮半島といい、一触即発の世界情勢の中、食糧なんかいつでも金で買えるから食糧の自給率なんて気にしなくていいとうそぶくTPP賛成派って、なんて浮き世離れしているのでしょう。ガソリンがなければ作れない農作物・畜産物が多いのに。
世界の人口が70億人を突破 食糧安全保障の1点だけでもTPP参加はやめるべきだ
日本ではこの問題が余りにも報道されませんが、いったん、ホルムズ海峡で紛争が起きると日本経済にも大打撃となります。
米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、2009年に世界で取引された石油の2割、海上輸送された原油のおよそ4割、そして日本の輸入原油の約8割以上がこのホルムズ海峡を通過しているのです。
![地図](http://www.asahi.com/strategy/image/0604b2.gif)
ホルムズ海峡 イランとオマーンに挟まれた海峡。ペルシャ湾の入り口で、日本の輸入原油の8割以上がこの海峡を経て運搬される。イランは過去にイラン革命や、イラン・イラク戦争時に機雷をしかけて、石油価格の上昇につながった。
ただ、実際にイランにホルムズ海峡「封鎖」の実力があるかというと、かなり疑問です。イランが保有している船舶は大半が小型船で、何日にもわたって船団を組んで海峡を封鎖する能力はないからです。イランが保有するのは、23隻の潜水艦、100隻を超える巡視船や小型戦艦にすぎません。
ですから、イランは最も狭い場所でも幅34キロに及ぶホルムズ海峡の通過を継続的に阻止できる能力はないと見られていますが、海峡に機雷を仕掛けたり、ミサイル攻撃を行う能力はあると考えられています。
また、ホルムズ海峡近隣にはバーレーンに司令部を置く米国の第5艦隊があり、ホルムズ海峡におけるイランの動向に目を光らせていて、第5艦隊の目を逃れて機雷の敷設やミサイル配備を行うことは困難で、察知されれば米国の対抗措置を誘うことになりますから、イランが実際に行動を起こすのはそれほど簡単ではありません。
それに戦艦よりも頑丈にできているといわれる大型の石油タンカーを撃沈するのも容易ではないのです。
(2010年7月にホルムズ海峡で襲われ損傷を受けた商船三井の石油タンカー)
しかし、ミサイル攻撃や海上での機雷敷設、場合によっては小型船を用いた自爆攻撃、湾岸地域の原油輸出基地攻撃などによって石油タンカーや西側の戦艦を苦しめることは可能ですし、そうした危機的状況に陥った場合、最近上昇している原油価格がどれくらい値上がりするのか、想像も出来ません。
そもそも、下の図のように、ゲリラ的な行動を力で完全に押さえ込むことなど出来ないのです。
イランにとっては、ホルムズ海峡を「封鎖」できなくても、容易に航行できない危険な状態に陥れることができる能力を示せればいいわけです。
しかし、そのあぶない綱渡りが本当に戦争につながってしまう、今が瀬戸際です。
せっかくイラクから撤退したばかりのアメリカ軍が、今度は地域大国イランと戦争するようなことになったら、世界がどうなるのか想像も付きません。
国際社会もこの状況に緊張しており、たとえば、フランス外務省のバレロ報道官は2011年12月28日、イランが、原油輸出に制裁が科された場合はホルムズ海峡を封鎖すると警告したことについて、同国に対し国際法を順守するよう呼びかけました。
野田政権は緊急事態の大震災や原発事故ではなく、消費税増税に不退転の決意で取り組むなどと言っていますが、力の入れどころが違うでしょう。
戦争によって平和と人の命が奪われることが根本的に悲劇なのですが、原油価格が高騰したら、やはり原発はやめられないなんて言い出す輩が続出という、とばっちりまで容易に想像できます。
こんなとき、従来、イランとも友好関係を保ってきた日本が「同盟国」アメリカとの間を取りなせるような平和外交力があればと、残念でなりません。
政府ももうちょっと危機感持てよ!と思われた方は
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戦争は起こるものでは無く、起こすものですから。
シナリオ通りになると、第三次大戦に突入ですね。
食い止めるには、何処の国と言うよりも、各国の市民が立ち上がるしか無い様に思いますが、それにしてもマスコミがあまり取り上げないのが不思議です。
政府・中東経済のシンクタンク、経済企画庁(現、経済産業省)・財団法人中東経済研究所の創立スタッフ、主任研究員として、殆んど毎日、徹夜の連続でした。
その中で、「中東の原子力」の大部な報告書を、外人記者クラブで発表したこともありました。
その総理府(現、内閣府)広報テレビ番組に、この中東の核・原子力の概要を、発表する企画に出演するよう依頼があり、”赤いネクタイ”を締めて「カメラ取り」となりました。
特にイランのペルシャ湾・ブッシェール(ペルシャ湾側、砂漠の中)に、ドイツ技術陣のプロジェクト企画によって、120万キロワットの原子力発電建設となった。
その説明と解説のために、かなりテレビ番組みの説明に力を入れました。もっとも、そのドイツ・ウェスチングハウス社製の原発は、イラン・イラク戦争の際、フセインのイラク空軍によって破壊されましたが、、、
当時は、リビヤのカダフィ大佐も、しきりに核武装のために原爆を入手しようと、かなり画策していた。フセインのイラクも、然り。
現在でも、中東が、世界で一番、核・原子力の導入を、中東各国ともに努力している。一触即発で、世界一の危険な戦争可能性を秘めている点に、昔も今も同じ。「石油エネルギーは、世界を制覇する」に、十分の経済、財政を提供しているのが、現在も同様の古くして新しい課題ですから。
もっとも、日本も同じく、「潜在的な核兵器保有国である」ことには、変わりないのが現実の姿です。
核問題は、「核燃料と核兵器が、同じ技術と兵器=原発の核燃料システム」となっており、一番に難しい国際関係のテーマです。
しかし、日本には、その世界的な情報、核兵器・核戦略の研究所が、未だ育たない。また、新聞社TV局、政府機関、大学でも、この情報は、安全保障の観点から見て非常に手薄で、しかも逆に重要な課題でもある。
誰か、やりませんか?
当然でしょう。何の為に日本が原発推進に舵を切ったのかも知ろうとしないで、推進派を悪魔扱いすればそれで済むと思うカルト思考にはついていけないよ。
日本からエネルギー資源の選択肢を奪い取る脱原発派の方が余程罪深いよ。
それほど原発を批判するなら、日本海沿岸に立ち並ぶ中・韓に原発にも抗議するのが筋なんだけどね・・・