第4章 私とピースボートとのかかわり
① 問題発言をめぐる関わり
水先案内人によるガイダンスの一つに「ロマ」問題があった。ロマの女性活動家Pさん(国籍はスペイン)による3回の連続講演の企画があり、ジプシーとして知られているロマの差別の状況、解放への取り組みなどに関しての報告があった。会場質問Q「ジプシーは差別的な用語ではないか?」:PさんA「差別的な状況で使われたら、差別用語だ」。私的には「ウーン」となる。私見では言葉は流布する中で、人々の思いがニュアンスとしてその言葉にまとわりつきます、いわば手垢がつく、それが侮蔑的、排外的、劣等視の手垢にまみれてくると差別的な用語となっていく。ジプシーもそのような用語なので私は以下ロマと書く。(この私の認識は後半に関係してきます。)
Pさんによれば、ロマは10世紀ころインド地域で起こった紛争を嫌った人々が西へと漂泊する民になっていくというのが始まりで、中東から全ヨーロッパ地域に流れていく。ロマは、家族第一主義、定住よりも移動生活でも可能な生業ナリワイを主とする、などの経済的・文化的特徴があり、その差異ゆえに、異端視され差別・迫害されてきた。ロマの言葉を喋らせないよう舌を切るとか、不妊手術とか相当エグイことも行われたようだ。ナチスの迫害はユダヤ人だけでなくロマにも及んだだけでなく、現代の社会でも、スエーデンでロマに対する迫害があったことを認めたのもつい先年だそうだ。(日本でもアイヌを旧土人と呼ぶ法律が改正されたのはそう古くではなかったことを思い出しました) 教育の分野でも地域住民との分離・隔離政策や、養護学校にしか入れないなどが今も続いているらしい。 Pさんは、女性解放の立場からのコミットもしているそうだ。ただ、差別の存在理由は、まだ各国政治指導者のなかに偏見を持ち差別する政治家がいるから、経済的要因は資本主義の価値観と衝突するからとしか聞き取れなかったのは、私の理解力不足か?
それで、勇気を奮ってQ「差別の理由は、政治家が、ロマは自分らの文化を守り、国民として戦争などでは頼りにならぬと考えているとしか聞こえない、だとすれば徴兵に対してはロマはどんな立場をとるのか」 A「1点目すれちがい、2点目 スペインでは徴兵制は無い」 エ、ソウナノ。認識不足でした。
問題にしたいのは2回目のことだ。事務局か講師のどちらの提案か知らないが、「皆さんも身のまわりの差別について10分ほど討議してください」というということになり、近所の席での話になった。そしていくつか発表を求めたところ、一人のオバさんが「日本でもそういう人がいる、問題がある」と言って、得々と蔑称語を連発し始めたのである。驚いた以上にショックだった。晩飯に一杯飲んだことは関係ないと思うが、不覚にも悔し涙がこぼれてしまったのだ。「私は東京なので詳しくは知らないが」・・なら、喋るな、「関西では」・・黙れ!「なんでも、肉屋さんなどに多く」 アウトや。差別発言や!!! でも、鼻水拭くので忙しく、抗議の声もあげがたく、次のグループの発表に移ってしまった。
このままでは終われない、会終了後、進行責任のピースボート・スタッフKさんに話し合いを申し込む。「過去と現状との意識的混同や、当事者の思い抜きの興味本位の知識ひけらかしは偏見の拡大につながりやすいこと、現に人権問題・同和教育に携わってきた者にとって悔しすぎる発言であることを伝え、次回に抗議の声があったことと、事務局の見解を聞きたい」旨申しいれた。Kさんも「問題だ」という認識はあったようで、快諾してくれた。
そして3回目の冒頭、Kさんは、「人権問題を語る時、様々な意見・思いを持つ人がいることに留意する必要があり、現に抗議もあった」ことを言明したので、マ、許したろカ。それで講演者への上記質問になったわけです。しかし不十分だ、終了後も話をさせてほしいと頼み、Pさんに「前回の乗客の一人の発言は不十分な理解に基づくもので、これをもって日本の人権問題を語ってほしくない」こと、二つ目に「克服・解決の道筋を示しながら、取り組みの成果が進んでいることも知ってほしい」ことを述べ、理解してもらった(と思う?通訳をいれた会話だから)。Pさん、まだまだ若い、がんばってねと声援を送った。
これで1件落着というわけでなくスタッフのKさんと話し合いを続けていた。Kさんも同和教育を受けた経験がなく、大変前向きに今後の対処を含めて考えており、自主企画で取り扱えないかという提言については断ったが、自分らも研修したいという意向は大事にしたいと思い、その申し出には応じた。デ5/20、Kさんを含むスタッフ自主研修を行い、講師として同和問題を語り、少し質疑もおこない、1時間半ほど交流した。さらに、こういった状況に置かれた時の対処についても知りたいという意向もあったので、教員研修などを想起しながら、2回目の研修を行ったので、スタッフとは顔見知りになることができた。
② ピースボート上の若者との接触に関して
A 朝の自主企画「お仕事」と、アンケートの実施について
私は、教員退職後、企業の海外駐在および帰国社員の帯同した子どもの教育相談の職を得た。その後、ニート対策のNPOに出発直前まで働いていた。つまり、子ども・若者に関して何らかの形で業として関わってきた。しかし、ピースボートでは、若者と接触の機会とてなかったところへ、自主企画で「お仕事」が始まると知り、彼らの乗船の動機も知りたく思っていたので参加した。発題者の若者は「将来、先生になりたいが、先生以外の他の仕事について教えるためには、いろんな職業体験について聞きたい」という意図であったようだ。
若者数名と私を含むシニア3~4名が、自分の仕事に就いて語り質疑応答するというものであったのだが、隣の落語ビデオ放映の笑い声で聞こえにくいという悪条件にもかかわらず、それはそれで私には興味深いものであった。女子の看護士、保育士がいたことは予想通りであったが、NPOを立ち上げたり働いていたという者、社寺仏閣の文化財など修理資職人など、多彩な職歴の者もいた。考えてみるまでもなく、自営業を除けば、百日に及ぶ航海に参加できるわけはなく、乗船中の若者はニート状態にあるといえる。マ、この船に乗ってトレーニング状態にあると言えないこともないのだが、下船後、職探しをしなければいけないという意味合いからは、われら退職シニアと違い、若者は真剣にならざるをえないので、議論の中身は真剣なものであったように思う。離転職の経験を披露するときもあったが、その際、一人の若者の「職場の中にはロール・モデルとしたいような先輩がいなかった」という発言は大いに考えさせられるものであると同時に、発言した若者は優秀な人材なのかな?と思ったものだが、その後の彼の行動を見ていると非常に優秀であると認めざるを得なかった。契約社員・給料の話も出た。社会的にはニートが大量に生まれてくるのはミスマッチという言葉が主流のような雰囲気だが、福祉・介護・看護等の職種の賃金のレベルにこそ問題があるという話はシニアも含めて共感を呼んだ。しかし、回数を重ねるうち参加している若者は限定されてきて、おまけにPBのお手伝いをしているようなメンバーが多いようで忙しく、話題も詰まってきたため、中断というか、会合そのものが設定されなくなってきた。
私としては、何となく中途半端な気持ちが残ったのと、マイナスイメージで語られることの多い「ニート」の中にも、この企画で話すことのできた若者のように多様な可能性をひめた存在が少なくないのでは、という思いから、意識調査―アンケートをしてその結果を返せば、それなりのゴールになるのではないか、と思い立った。ちょうど若者のリーダーの一人と、夕食時、4階食堂で同じテーブルに着いたので話をし、「設問用紙と集計はこちらのほうでやるので、若者への配布・回収はそちらにお願いしたい」という線で、おこなうこととした。
結論的に言えば、アンケートはそれなりに実施でき、それなりに知見をひろげる結果も得られたのだが、若者とのコミュニケーションということでは失敗した。回収時期に、このアンケート実施について、私のほうは確認がとれていると思っていたことに対し、若者から異論が挟まれた。「僕は下船後の計画は決まっている」「ほかの人の意見を知ったからといって自分が考える際にどれだけ影響があるというのか。その結果に左右されず討論し合うことが大事だ」・・そりゃーナイぜ! 十分時間を取って話し合ったわけではないが、了解しあったと考えていたのだが・・・若者からの提言で、ピースボートに乗った影響などの設問も新たに設けたし、だからこそ、60人からの回収に努力してくれたのではなかったか・・マア、いい。若者とけんかしても始まらない。何が食い違ったのか?私が、若者と言ってもそれ相応の扱いではなく、つい高校生と同じように接したせいだろうか、ザックバラン過ぎたのかもしれない。いまだに、よく分からないが、譲れない点は一つある。協力してくれた人に結果をフィードバックすることである。それはマナーでもあることを力説したところ彼らも否定することはできなかった。それで、最後の会合の機会を設定してもらったのだが、23時の会合だって。
こちらは通常オネムの時間、行ってやろうじゃない・・結局、一人の若者だけが来ていつの間にか帰っていった。こちらも筋を通すため伝言板で広報したが、誰も来ず、完敗。マア、いいけど、と思いつつもやっぱり不愉快な感覚が残った。老人パワーに刺激を受けて、自分の得意分野でお役にたちたいと思ったのだが、マ、あんまりお呼びでもない所にシャシャリ出ることはやめたほうがいいという教訓でした。
(だから、付録として「ピースボート体験の影響」と、「仕事に関して」のアンケート結果をあげますが、ピースボートの旅とは直接関係するというわけではないので、関心ある人だけ読んでください。)
かくて、6月24日、少し割り切れぬ思いを抱いて横浜港に到着しました。関東地方では雹の降る天候のなか、家路へと急いだのです。(完)
<付録> アンケート結果
男 女
20歳代 14 25
30歳代 5 11
◎調査対象 ピ-スボート乗船の若者(ニート調査にあわせて20歳代、30歳代とした)は、スタッフに尋ねると約200人、半数に配布できたとして100人、アンケートの回収率は2/3くらいと踏んでいた。私は学生も想定していたのだが、配布に当たる者たちは対象外と考えていたようだ。それでも、教育に関わるセミナーで大量配布したことから、スタッフ・CCも協力してくれたようで(無記名なので実数は不明)、20歳代39、30歳代16、学生6 計61人から、回収できた。統計上信頼できるサンプル数とまではいいにくいので、男女・年代・社会人経験の有無を考慮した下位グループの特徴までは言及しがたいが、「○○というような傾向はみられるのではないか」という程度のことは見えたと考えられる。
(参考)
・男子の乗船前の職業(回答者12)は 教員・土木業・レストランスタッフ・エンジニア・会社員(食品メーカーや営業・遊技業管理職)・アルバイト(複数)などであり、自営業者としてはホームステイ業という者がいた。
・ これに対し女子では(回答者29名)、医療・看護系10名(看護士5、薬剤師2、歯科衛生士、医療秘書、病院勤務)と、教育・福祉系6名(保育士4、介護、大学先生)とで半数以上を占めている。また、コンサルタント、企画運営の業務、NPO代表とかの専門性の高い業務についている者や、栄養士、クレープ屋、養豚場など食品関係(3名)もいる。
◎ ピースボート体験の影響
<この船に乗った理由(乗船前)複数回答可 %表示>
元社会人男19人、元社会人女36人、学生6 それぞれのグループ、および計61人のそうだと答えた割合(学生は6人であまり意味はないが、傾向は読み取れる)
社男 社女 学生 総計
1 観光 26 53 17 41
2 見聞して考えたい 53 56 50 54
3 外国のこと知りたい 47 58 50 54
4 語学ができるようになりたい 16 44 83 36
5 友達をつくりたい 32 47 83 46
6いろんな人と知り合いになりたい 42 25 33 36
7 企画を楽しみたい 4 19 33 21
8 その他 3人 7人 2人 12人
(レダック感想)この結果には少なからず驚いている。私はあまりピースボートについて予習しなかったせいか、観光目的以外の何物でもなかったし、シニアの場合圧倒的な数値が出ると思われるのだが、若者の場合、わずかに女子が半数強で、知りたい・考えたい・人間関係を求めてということが主力になっている。「世界各地を見聞する中で若者の交流を促す船」という当初からの?役割を十分果たしていると思われる。
なお、その他の自由記述としては
男子 PBVスタッフになる、うまいものを食べる、様々な経験をしたい
女子 家を出てみたい、自分を変えるきっかけをつかみたい、日本から逃げ出したい
誘われた、企画を通して成長支援、平和の文化を構築、ゆっくりしたい
<アンケート回答時点での変化(複数回答可) %表示>
社男 社女 学生 総計
1 自信が出来た おもしろくなった 32 36 33 34
2 たくさんの友達、知り合いができた 42 50 83 51
3 世界や国際関係に対する興味・関心が高まった 68 64 100 69
4 特にはない 5 8 0 7
5 その他 1人 3人 0 4人
(レダック 感想) 200人の若者のうち、回答したものは、比較的まじめで、ピースボート乗船も積極的に何かを求めている者たちと推測している。それにしても、見事ではないか! 3人に2人は、世界への関心を高め、半数は自分の周りの世界を広げ、3人に一人は自分の世界に自信をもつようになった。ピースボートは若者の世界を広げる訓練船の機能を果たしている。かく言う私自身も「グローバルな資質とはどういうことか」を一つのテーマにして考えているのだが、ラテンの国々やポリネシアについては全く無知であることを
思い知らされた。
<下船してからも仕事やボランティアで関わり続けようと考えているテーマがありますか(複数回答可) 人数表示>
(人数) 社男19 社女36 学生6 総計61
1 平和や核の問題 9 15 3 27
2 環境問題 9 14 3 26
3 人権問題 3 7 2 12
4 難民問題 3 7 1 11
5 ジェンダーについて 1 4 3 8
6 国際交流 7 17 3 27
7 子どもの教育 9 11 1 21
8 東北復興支援 8 10 0 18
9 その他 1 5 2 8
10 特にはない 2 7 0 9
(レダック 感想)回答者はどう解釈したかは別として、質問者は知識面での関心を問うたのではなく、「仕事やボランティアで」と限定詞をつけることによって行動、ないしは態度面での関与を調べたかったのである。だから、割合%表示より実人数表示とした。
(なお、その他としては貧困2、大量虐殺の問題、国際紛争等)
この資料の読み方として、たかだか100日あまりの生活のなかで、平和や核の問題、国際交流、環境問題、子どもの教育などについて、考え行動しようとする若者が20人を超える単位で生まれていると考えたら、大変なことではないか! 文科省は「グローバル人材の育成」を喫緊の教育の課題にあげ、本年平成26年度から「グローバル・リーダーズ・ハイスクールGLH」を指定したわけだが(私も帰国後知った)、ちょっと方向性が違うんではなかろうか?と思う。今回、出会った若者の中から、将来国際社会で活躍する人物(人材ではない)が出てくるだろうと確信している。
◎ 仕事アンケートの結果
<仕事観(何のために働くか)>
(学生も含めて)若者の仕事観を探るため、労働のもつ経済性・社会性・個人性の側面に加え、離転職の理由として人間関係を挙げる者が少なくないことから、4つの項目を立て、大切と思うものを、有効回答者数を母数とした%で表示(複数回答可)するとともに、次にその中で一番大事なものを答えてもらった。
20男 30男 男計 20女 30女 女計 総計 学生
①収入を得て生計を支える 100 80 95 76 91 81 85 100
一番大事 57 80 63 21 70 47
②社会の中での役割を担う 79 20 63 56 73 61 62 50
一番大事 36 20 32 21 20 20
③自分の能力や適性を発揮し伸ばす 79 20 63 76 55 69 67 100
一番大事 7 0 5 17 10 15
④職場を通じ人間関係を広げる 64 20 53 44 27 39 44 67
一番大事 0 0 0 25 0 18
(レダック感想)「①収入―経済性」は当然としても、「②社会性」を軽視しているわけではないし、「③個人性」にこだわっているともいえない。わりあい健全なバランスを保っているのではないか。
一番大事だと思うものについては、①「収入」をあげた人の割合が女より男のほうが多く(男63%:女47%)、20代より30代が多かった(20代男57%:30代男80%、20代女37%:30代女70%)。生計維持の現実の必要性を反映していると推測される。
また、女では「収入」を一番に挙げる者が半数以下で、仕事・労働への思い入れが多様であることが分かる。
<離転職理由>
・離転職経験は、男女差は見受けられなかったが、男女とも、20歳代よりも就業経験の長い30歳代の方が離転職経験者が多いのは当然であろう。20歳代 経験有14人:無19人、
30歳代 有9人:無6人
・経験者の離転職理由について回答してくれた25人の内、上記4つの仕事観の否定形およびその他で記述してもらった理由のうち否定的なものは15人であった。
①収入が不満 3、②やっている仕事に意味を見出さない(男2女5)7、
③自分の能力や適性にあわない 1、④職場の人間関係がイヤ2、
その他自由記述で 疲れて何もできない 1、得るもの無い 1、
これに対し⑤起業や引き抜きなど積極的な理由で 女2、およびその他自由記述で キャ
リアアップのため 女1 資格取得のため 女1、世界1周のため 男1の、計5人の積極的転職者は、女性に顕著であった(オ-、トラバーユ!)
なお、これ以外には⑥家族や近親者などの理由1、けが・病気のため1、環境変えたい1、
住む所へのこだわり1、会社方針変更につき1、計5名であった。
(レダック感想)「②やっている仕事に意味を見出さない」からと、キャリアアップなどを加えると、女性の離転職者15人中、なんと9人が積極的な転身を図っている(環境変えたいや、住む所へのこだわりも詳しく事情を聞けば、積極的転身なのかもしれない)。
<能力・適性と仕事>
この項目についてはあまり科学的知見に基づく設問というわけではない。
実際に高校生の進路指導の経験や、組織の中での人事管理の体験などから、適切な自己理解・
自己認識がいかに重要か痛感してきた。
人間関係のトラブルなどで悩んでいる人には「自己肯定感」「自尊感情」の育成が大事だと
言われており、仕事を考えるときにも重要な要素になると考え設問とした。
・ 設問「お仕事に活かせる(であろう)自分の適性・能力について、自分で理解・把握していますか ①はい ②いいえ」
ここでの有効回答数は男17、女34、学生6 計57である。
総計では「はい38:いいえ19」でちょうど2:1となっている。さすがに30歳代では12:3だが、20歳代では23:13となっている。
(レダック感想)設問者としては、「はい」がもっと多いのではないかと思っていたので、少し意外な感がした。若者のモラトリアム期間の延長が指摘されて久しいが、ますますその傾向は詰まっているのかもしれない。高学歴化のなかで期待をこなせないと自信をもてない、持たさないという構造こそが問題で、ニートを生み出す文化的基盤は社会全体がいわば共犯者なのだ。いわく「世界は君の回答を待つのに飽き飽きしている」ト。私の外面的観察では、回答者の若者は、結構謙虚で、やはり問題意識が高いと思うがもっと厚かましくてもいいのでは、と思っている。老婆心ながら(ジジイだけれど)、人間のパーソナリティ構造としては職業的性格も大きな部分・要素をしめており、これから作り上げていくものだと言いたい。
なお、この結果を見た限りにおいて、ピースボートの仕掛けの一つとして、若者からシニアへの質問ーそれへの回答をできる場の設定を工夫できないものかと思う。
・自分の能力・適性をあげてもらう設問も用意したが、自分を客観的に見つめる機会をつくるということであまり意味はないが・・。
「自分の能力・適性として自信のあるもの」
男子 「人を教えたり指導する」、「困っている人を助けたり世話をする」、「人をまとめる」、「人の扱いがうまい」が上位4位
女子 「困っている人を助けたり世話をする」、「計画・企画し実現する」、「飲食物などを作ったり提供する」、「調査・研究しまとめる」 が上位4位
・さらに仕事・職業を通じて、発揮・伸長させたい自分の能力・適性を、どう自覚しているか、という設問への回答結果
男子は有効回答数が少ないこともあり、「人をまとめる」5、「計画・企画し実現する」3、以外は分散した。
女子では、「計画・企画し実現する」7 が、「困っている人を助けたり世話をする」5 をおさえてトップだった。
(レダック感想)
男女雇用機会均等法の趣旨や、ジェンダーについて理解しているつもりであったが、どうしても男子が管理・企画的職務を担うという固定観念が強いことを思い知らされた。他の結果も参考にすれば、女子の管理・企画・調査研究等への志向性が高くかつ転身も図っているという傾向に時代の新しい波を感じざるを得ない。
① 問題発言をめぐる関わり
水先案内人によるガイダンスの一つに「ロマ」問題があった。ロマの女性活動家Pさん(国籍はスペイン)による3回の連続講演の企画があり、ジプシーとして知られているロマの差別の状況、解放への取り組みなどに関しての報告があった。会場質問Q「ジプシーは差別的な用語ではないか?」:PさんA「差別的な状況で使われたら、差別用語だ」。私的には「ウーン」となる。私見では言葉は流布する中で、人々の思いがニュアンスとしてその言葉にまとわりつきます、いわば手垢がつく、それが侮蔑的、排外的、劣等視の手垢にまみれてくると差別的な用語となっていく。ジプシーもそのような用語なので私は以下ロマと書く。(この私の認識は後半に関係してきます。)
Pさんによれば、ロマは10世紀ころインド地域で起こった紛争を嫌った人々が西へと漂泊する民になっていくというのが始まりで、中東から全ヨーロッパ地域に流れていく。ロマは、家族第一主義、定住よりも移動生活でも可能な生業ナリワイを主とする、などの経済的・文化的特徴があり、その差異ゆえに、異端視され差別・迫害されてきた。ロマの言葉を喋らせないよう舌を切るとか、不妊手術とか相当エグイことも行われたようだ。ナチスの迫害はユダヤ人だけでなくロマにも及んだだけでなく、現代の社会でも、スエーデンでロマに対する迫害があったことを認めたのもつい先年だそうだ。(日本でもアイヌを旧土人と呼ぶ法律が改正されたのはそう古くではなかったことを思い出しました) 教育の分野でも地域住民との分離・隔離政策や、養護学校にしか入れないなどが今も続いているらしい。 Pさんは、女性解放の立場からのコミットもしているそうだ。ただ、差別の存在理由は、まだ各国政治指導者のなかに偏見を持ち差別する政治家がいるから、経済的要因は資本主義の価値観と衝突するからとしか聞き取れなかったのは、私の理解力不足か?
それで、勇気を奮ってQ「差別の理由は、政治家が、ロマは自分らの文化を守り、国民として戦争などでは頼りにならぬと考えているとしか聞こえない、だとすれば徴兵に対してはロマはどんな立場をとるのか」 A「1点目すれちがい、2点目 スペインでは徴兵制は無い」 エ、ソウナノ。認識不足でした。
問題にしたいのは2回目のことだ。事務局か講師のどちらの提案か知らないが、「皆さんも身のまわりの差別について10分ほど討議してください」というということになり、近所の席での話になった。そしていくつか発表を求めたところ、一人のオバさんが「日本でもそういう人がいる、問題がある」と言って、得々と蔑称語を連発し始めたのである。驚いた以上にショックだった。晩飯に一杯飲んだことは関係ないと思うが、不覚にも悔し涙がこぼれてしまったのだ。「私は東京なので詳しくは知らないが」・・なら、喋るな、「関西では」・・黙れ!「なんでも、肉屋さんなどに多く」 アウトや。差別発言や!!! でも、鼻水拭くので忙しく、抗議の声もあげがたく、次のグループの発表に移ってしまった。
このままでは終われない、会終了後、進行責任のピースボート・スタッフKさんに話し合いを申し込む。「過去と現状との意識的混同や、当事者の思い抜きの興味本位の知識ひけらかしは偏見の拡大につながりやすいこと、現に人権問題・同和教育に携わってきた者にとって悔しすぎる発言であることを伝え、次回に抗議の声があったことと、事務局の見解を聞きたい」旨申しいれた。Kさんも「問題だ」という認識はあったようで、快諾してくれた。
そして3回目の冒頭、Kさんは、「人権問題を語る時、様々な意見・思いを持つ人がいることに留意する必要があり、現に抗議もあった」ことを言明したので、マ、許したろカ。それで講演者への上記質問になったわけです。しかし不十分だ、終了後も話をさせてほしいと頼み、Pさんに「前回の乗客の一人の発言は不十分な理解に基づくもので、これをもって日本の人権問題を語ってほしくない」こと、二つ目に「克服・解決の道筋を示しながら、取り組みの成果が進んでいることも知ってほしい」ことを述べ、理解してもらった(と思う?通訳をいれた会話だから)。Pさん、まだまだ若い、がんばってねと声援を送った。
これで1件落着というわけでなくスタッフのKさんと話し合いを続けていた。Kさんも同和教育を受けた経験がなく、大変前向きに今後の対処を含めて考えており、自主企画で取り扱えないかという提言については断ったが、自分らも研修したいという意向は大事にしたいと思い、その申し出には応じた。デ5/20、Kさんを含むスタッフ自主研修を行い、講師として同和問題を語り、少し質疑もおこない、1時間半ほど交流した。さらに、こういった状況に置かれた時の対処についても知りたいという意向もあったので、教員研修などを想起しながら、2回目の研修を行ったので、スタッフとは顔見知りになることができた。
② ピースボート上の若者との接触に関して
A 朝の自主企画「お仕事」と、アンケートの実施について
私は、教員退職後、企業の海外駐在および帰国社員の帯同した子どもの教育相談の職を得た。その後、ニート対策のNPOに出発直前まで働いていた。つまり、子ども・若者に関して何らかの形で業として関わってきた。しかし、ピースボートでは、若者と接触の機会とてなかったところへ、自主企画で「お仕事」が始まると知り、彼らの乗船の動機も知りたく思っていたので参加した。発題者の若者は「将来、先生になりたいが、先生以外の他の仕事について教えるためには、いろんな職業体験について聞きたい」という意図であったようだ。
若者数名と私を含むシニア3~4名が、自分の仕事に就いて語り質疑応答するというものであったのだが、隣の落語ビデオ放映の笑い声で聞こえにくいという悪条件にもかかわらず、それはそれで私には興味深いものであった。女子の看護士、保育士がいたことは予想通りであったが、NPOを立ち上げたり働いていたという者、社寺仏閣の文化財など修理資職人など、多彩な職歴の者もいた。考えてみるまでもなく、自営業を除けば、百日に及ぶ航海に参加できるわけはなく、乗船中の若者はニート状態にあるといえる。マ、この船に乗ってトレーニング状態にあると言えないこともないのだが、下船後、職探しをしなければいけないという意味合いからは、われら退職シニアと違い、若者は真剣にならざるをえないので、議論の中身は真剣なものであったように思う。離転職の経験を披露するときもあったが、その際、一人の若者の「職場の中にはロール・モデルとしたいような先輩がいなかった」という発言は大いに考えさせられるものであると同時に、発言した若者は優秀な人材なのかな?と思ったものだが、その後の彼の行動を見ていると非常に優秀であると認めざるを得なかった。契約社員・給料の話も出た。社会的にはニートが大量に生まれてくるのはミスマッチという言葉が主流のような雰囲気だが、福祉・介護・看護等の職種の賃金のレベルにこそ問題があるという話はシニアも含めて共感を呼んだ。しかし、回数を重ねるうち参加している若者は限定されてきて、おまけにPBのお手伝いをしているようなメンバーが多いようで忙しく、話題も詰まってきたため、中断というか、会合そのものが設定されなくなってきた。
私としては、何となく中途半端な気持ちが残ったのと、マイナスイメージで語られることの多い「ニート」の中にも、この企画で話すことのできた若者のように多様な可能性をひめた存在が少なくないのでは、という思いから、意識調査―アンケートをしてその結果を返せば、それなりのゴールになるのではないか、と思い立った。ちょうど若者のリーダーの一人と、夕食時、4階食堂で同じテーブルに着いたので話をし、「設問用紙と集計はこちらのほうでやるので、若者への配布・回収はそちらにお願いしたい」という線で、おこなうこととした。
結論的に言えば、アンケートはそれなりに実施でき、それなりに知見をひろげる結果も得られたのだが、若者とのコミュニケーションということでは失敗した。回収時期に、このアンケート実施について、私のほうは確認がとれていると思っていたことに対し、若者から異論が挟まれた。「僕は下船後の計画は決まっている」「ほかの人の意見を知ったからといって自分が考える際にどれだけ影響があるというのか。その結果に左右されず討論し合うことが大事だ」・・そりゃーナイぜ! 十分時間を取って話し合ったわけではないが、了解しあったと考えていたのだが・・・若者からの提言で、ピースボートに乗った影響などの設問も新たに設けたし、だからこそ、60人からの回収に努力してくれたのではなかったか・・マア、いい。若者とけんかしても始まらない。何が食い違ったのか?私が、若者と言ってもそれ相応の扱いではなく、つい高校生と同じように接したせいだろうか、ザックバラン過ぎたのかもしれない。いまだに、よく分からないが、譲れない点は一つある。協力してくれた人に結果をフィードバックすることである。それはマナーでもあることを力説したところ彼らも否定することはできなかった。それで、最後の会合の機会を設定してもらったのだが、23時の会合だって。
こちらは通常オネムの時間、行ってやろうじゃない・・結局、一人の若者だけが来ていつの間にか帰っていった。こちらも筋を通すため伝言板で広報したが、誰も来ず、完敗。マア、いいけど、と思いつつもやっぱり不愉快な感覚が残った。老人パワーに刺激を受けて、自分の得意分野でお役にたちたいと思ったのだが、マ、あんまりお呼びでもない所にシャシャリ出ることはやめたほうがいいという教訓でした。
(だから、付録として「ピースボート体験の影響」と、「仕事に関して」のアンケート結果をあげますが、ピースボートの旅とは直接関係するというわけではないので、関心ある人だけ読んでください。)
かくて、6月24日、少し割り切れぬ思いを抱いて横浜港に到着しました。関東地方では雹の降る天候のなか、家路へと急いだのです。(完)
<付録> アンケート結果
男 女
20歳代 14 25
30歳代 5 11
◎調査対象 ピ-スボート乗船の若者(ニート調査にあわせて20歳代、30歳代とした)は、スタッフに尋ねると約200人、半数に配布できたとして100人、アンケートの回収率は2/3くらいと踏んでいた。私は学生も想定していたのだが、配布に当たる者たちは対象外と考えていたようだ。それでも、教育に関わるセミナーで大量配布したことから、スタッフ・CCも協力してくれたようで(無記名なので実数は不明)、20歳代39、30歳代16、学生6 計61人から、回収できた。統計上信頼できるサンプル数とまではいいにくいので、男女・年代・社会人経験の有無を考慮した下位グループの特徴までは言及しがたいが、「○○というような傾向はみられるのではないか」という程度のことは見えたと考えられる。
(参考)
・男子の乗船前の職業(回答者12)は 教員・土木業・レストランスタッフ・エンジニア・会社員(食品メーカーや営業・遊技業管理職)・アルバイト(複数)などであり、自営業者としてはホームステイ業という者がいた。
・ これに対し女子では(回答者29名)、医療・看護系10名(看護士5、薬剤師2、歯科衛生士、医療秘書、病院勤務)と、教育・福祉系6名(保育士4、介護、大学先生)とで半数以上を占めている。また、コンサルタント、企画運営の業務、NPO代表とかの専門性の高い業務についている者や、栄養士、クレープ屋、養豚場など食品関係(3名)もいる。
◎ ピースボート体験の影響
<この船に乗った理由(乗船前)複数回答可 %表示>
元社会人男19人、元社会人女36人、学生6 それぞれのグループ、および計61人のそうだと答えた割合(学生は6人であまり意味はないが、傾向は読み取れる)
社男 社女 学生 総計
1 観光 26 53 17 41
2 見聞して考えたい 53 56 50 54
3 外国のこと知りたい 47 58 50 54
4 語学ができるようになりたい 16 44 83 36
5 友達をつくりたい 32 47 83 46
6いろんな人と知り合いになりたい 42 25 33 36
7 企画を楽しみたい 4 19 33 21
8 その他 3人 7人 2人 12人
(レダック感想)この結果には少なからず驚いている。私はあまりピースボートについて予習しなかったせいか、観光目的以外の何物でもなかったし、シニアの場合圧倒的な数値が出ると思われるのだが、若者の場合、わずかに女子が半数強で、知りたい・考えたい・人間関係を求めてということが主力になっている。「世界各地を見聞する中で若者の交流を促す船」という当初からの?役割を十分果たしていると思われる。
なお、その他の自由記述としては
男子 PBVスタッフになる、うまいものを食べる、様々な経験をしたい
女子 家を出てみたい、自分を変えるきっかけをつかみたい、日本から逃げ出したい
誘われた、企画を通して成長支援、平和の文化を構築、ゆっくりしたい
<アンケート回答時点での変化(複数回答可) %表示>
社男 社女 学生 総計
1 自信が出来た おもしろくなった 32 36 33 34
2 たくさんの友達、知り合いができた 42 50 83 51
3 世界や国際関係に対する興味・関心が高まった 68 64 100 69
4 特にはない 5 8 0 7
5 その他 1人 3人 0 4人
(レダック 感想) 200人の若者のうち、回答したものは、比較的まじめで、ピースボート乗船も積極的に何かを求めている者たちと推測している。それにしても、見事ではないか! 3人に2人は、世界への関心を高め、半数は自分の周りの世界を広げ、3人に一人は自分の世界に自信をもつようになった。ピースボートは若者の世界を広げる訓練船の機能を果たしている。かく言う私自身も「グローバルな資質とはどういうことか」を一つのテーマにして考えているのだが、ラテンの国々やポリネシアについては全く無知であることを
思い知らされた。
<下船してからも仕事やボランティアで関わり続けようと考えているテーマがありますか(複数回答可) 人数表示>
(人数) 社男19 社女36 学生6 総計61
1 平和や核の問題 9 15 3 27
2 環境問題 9 14 3 26
3 人権問題 3 7 2 12
4 難民問題 3 7 1 11
5 ジェンダーについて 1 4 3 8
6 国際交流 7 17 3 27
7 子どもの教育 9 11 1 21
8 東北復興支援 8 10 0 18
9 その他 1 5 2 8
10 特にはない 2 7 0 9
(レダック 感想)回答者はどう解釈したかは別として、質問者は知識面での関心を問うたのではなく、「仕事やボランティアで」と限定詞をつけることによって行動、ないしは態度面での関与を調べたかったのである。だから、割合%表示より実人数表示とした。
(なお、その他としては貧困2、大量虐殺の問題、国際紛争等)
この資料の読み方として、たかだか100日あまりの生活のなかで、平和や核の問題、国際交流、環境問題、子どもの教育などについて、考え行動しようとする若者が20人を超える単位で生まれていると考えたら、大変なことではないか! 文科省は「グローバル人材の育成」を喫緊の教育の課題にあげ、本年平成26年度から「グローバル・リーダーズ・ハイスクールGLH」を指定したわけだが(私も帰国後知った)、ちょっと方向性が違うんではなかろうか?と思う。今回、出会った若者の中から、将来国際社会で活躍する人物(人材ではない)が出てくるだろうと確信している。
◎ 仕事アンケートの結果
<仕事観(何のために働くか)>
(学生も含めて)若者の仕事観を探るため、労働のもつ経済性・社会性・個人性の側面に加え、離転職の理由として人間関係を挙げる者が少なくないことから、4つの項目を立て、大切と思うものを、有効回答者数を母数とした%で表示(複数回答可)するとともに、次にその中で一番大事なものを答えてもらった。
20男 30男 男計 20女 30女 女計 総計 学生
①収入を得て生計を支える 100 80 95 76 91 81 85 100
一番大事 57 80 63 21 70 47
②社会の中での役割を担う 79 20 63 56 73 61 62 50
一番大事 36 20 32 21 20 20
③自分の能力や適性を発揮し伸ばす 79 20 63 76 55 69 67 100
一番大事 7 0 5 17 10 15
④職場を通じ人間関係を広げる 64 20 53 44 27 39 44 67
一番大事 0 0 0 25 0 18
(レダック感想)「①収入―経済性」は当然としても、「②社会性」を軽視しているわけではないし、「③個人性」にこだわっているともいえない。わりあい健全なバランスを保っているのではないか。
一番大事だと思うものについては、①「収入」をあげた人の割合が女より男のほうが多く(男63%:女47%)、20代より30代が多かった(20代男57%:30代男80%、20代女37%:30代女70%)。生計維持の現実の必要性を反映していると推測される。
また、女では「収入」を一番に挙げる者が半数以下で、仕事・労働への思い入れが多様であることが分かる。
<離転職理由>
・離転職経験は、男女差は見受けられなかったが、男女とも、20歳代よりも就業経験の長い30歳代の方が離転職経験者が多いのは当然であろう。20歳代 経験有14人:無19人、
30歳代 有9人:無6人
・経験者の離転職理由について回答してくれた25人の内、上記4つの仕事観の否定形およびその他で記述してもらった理由のうち否定的なものは15人であった。
①収入が不満 3、②やっている仕事に意味を見出さない(男2女5)7、
③自分の能力や適性にあわない 1、④職場の人間関係がイヤ2、
その他自由記述で 疲れて何もできない 1、得るもの無い 1、
これに対し⑤起業や引き抜きなど積極的な理由で 女2、およびその他自由記述で キャ
リアアップのため 女1 資格取得のため 女1、世界1周のため 男1の、計5人の積極的転職者は、女性に顕著であった(オ-、トラバーユ!)
なお、これ以外には⑥家族や近親者などの理由1、けが・病気のため1、環境変えたい1、
住む所へのこだわり1、会社方針変更につき1、計5名であった。
(レダック感想)「②やっている仕事に意味を見出さない」からと、キャリアアップなどを加えると、女性の離転職者15人中、なんと9人が積極的な転身を図っている(環境変えたいや、住む所へのこだわりも詳しく事情を聞けば、積極的転身なのかもしれない)。
<能力・適性と仕事>
この項目についてはあまり科学的知見に基づく設問というわけではない。
実際に高校生の進路指導の経験や、組織の中での人事管理の体験などから、適切な自己理解・
自己認識がいかに重要か痛感してきた。
人間関係のトラブルなどで悩んでいる人には「自己肯定感」「自尊感情」の育成が大事だと
言われており、仕事を考えるときにも重要な要素になると考え設問とした。
・ 設問「お仕事に活かせる(であろう)自分の適性・能力について、自分で理解・把握していますか ①はい ②いいえ」
ここでの有効回答数は男17、女34、学生6 計57である。
総計では「はい38:いいえ19」でちょうど2:1となっている。さすがに30歳代では12:3だが、20歳代では23:13となっている。
(レダック感想)設問者としては、「はい」がもっと多いのではないかと思っていたので、少し意外な感がした。若者のモラトリアム期間の延長が指摘されて久しいが、ますますその傾向は詰まっているのかもしれない。高学歴化のなかで期待をこなせないと自信をもてない、持たさないという構造こそが問題で、ニートを生み出す文化的基盤は社会全体がいわば共犯者なのだ。いわく「世界は君の回答を待つのに飽き飽きしている」ト。私の外面的観察では、回答者の若者は、結構謙虚で、やはり問題意識が高いと思うがもっと厚かましくてもいいのでは、と思っている。老婆心ながら(ジジイだけれど)、人間のパーソナリティ構造としては職業的性格も大きな部分・要素をしめており、これから作り上げていくものだと言いたい。
なお、この結果を見た限りにおいて、ピースボートの仕掛けの一つとして、若者からシニアへの質問ーそれへの回答をできる場の設定を工夫できないものかと思う。
・自分の能力・適性をあげてもらう設問も用意したが、自分を客観的に見つめる機会をつくるということであまり意味はないが・・。
「自分の能力・適性として自信のあるもの」
男子 「人を教えたり指導する」、「困っている人を助けたり世話をする」、「人をまとめる」、「人の扱いがうまい」が上位4位
女子 「困っている人を助けたり世話をする」、「計画・企画し実現する」、「飲食物などを作ったり提供する」、「調査・研究しまとめる」 が上位4位
・さらに仕事・職業を通じて、発揮・伸長させたい自分の能力・適性を、どう自覚しているか、という設問への回答結果
男子は有効回答数が少ないこともあり、「人をまとめる」5、「計画・企画し実現する」3、以外は分散した。
女子では、「計画・企画し実現する」7 が、「困っている人を助けたり世話をする」5 をおさえてトップだった。
(レダック感想)
男女雇用機会均等法の趣旨や、ジェンダーについて理解しているつもりであったが、どうしても男子が管理・企画的職務を担うという固定観念が強いことを思い知らされた。他の結果も参考にすれば、女子の管理・企画・調査研究等への志向性が高くかつ転身も図っているという傾向に時代の新しい波を感じざるを得ない。