山王アニマルクリニック

日々の診療、いろんな本や音楽などについて思い巡らしながら、潤いと温もりのバランスを取ってゆこうと思います。

インサイド・ヘッド & モンスターズ・インク

2015-08-17 18:02:55 | 絵本&幼き心
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 なんとなく心にひっかかり、いつか見ようと思いつつ、ずっと見ていなかった『モンスターズ・インク』……公開されてから、もう14年も経っていたんですね。今さらながら見てみました!

 なぜなら当ブログは、知らぬ間に「感情」との係わりが深くなってきていますし、『モンスターズ・インク』の監督ピート・ドクターの新作『インサイド・ヘッド』(原題はInside Out)は、一人の脳内の様々な「感情」たちのせめぎ合いをコミカルに映像化!この夏、絶賛公開中なのです!

 「週間文春」に掲載された映画評論家、町山智浩さんのエッセイによると、『モンスターズ・インク』は、ピート・ドクターが初めての娘とのコミュニケーションに困った体験から生まれたんだそうです。

 登場するブーと呼ばれる女の子は、おそらく「魔の2歳児──Terrible2!」何でもイヤイヤと自己主張が強くなり、自分では何もできないくせに何でもやりたがる、ある意味でこわいもの知らずのハチャメチャ期のように感じました。

 ウチの子が「魔の2歳児」だった頃と、よく似てるのでもう大笑い!例えば女の子ブーは、青いモンスターのサリーのことを、あんなに大きくてゴリラ顔なのに「にゃんにゃん!」と屈託なく呼びます。

 ウチの子はアルパカを見てもヒツジを見ても「わんわん!」とそっくりの口調で言っていました。

 早く歩けるようになったのが楽しくてたまらないのか?あっという間に思いがけない所にもぐり込んでしまうような突進力もそっくりです。

 作品では楽しく表現されていますが、実際にはピート・ドクターもかなり苦労したのでしょう(笑いの陰には苦悩あり)。

 特に人口密度の高い都会では、人間の子どもにイヌのようなリードをつけることの賛否が問われる時代──その無邪気な突進力は一歩間違えると交通事故などにつながりかねない恐ろしさとも表裏一体なのです。

 さて?「叱らないでほめて伸ばす」という理想ばかりが強調される現代、このような生死にかかわること、その延長にある戦争の残酷さなどまでも、おだやかな表現で伝えることはできるのでしょうか?(医療教育なども)

 8月6日広島、8月9日長崎に原爆が投下され今年で70年目──被曝者の方が子どもたちにその体験を伝える活動をしていたら、「子どもを怖がらせるのはやめてくれ!」というクレーム電話がきた!なんて話をテレビで見て考え込んでしまいました。

 無邪気な心は素晴らしくもあるのですが、無邪気だからこそ邪気を引きよせ邪気の化身であるモンスターは生まれるのかもしれません。

 文明もしくは経済的な進歩にしたがって邪悪なるものを徹底的に子どもの目につかない所へと隠そうする傾向となってしまうのでしょうが、いつの時代も世界のどこかで争いが起こり人が殺されているのが現実です。

 そこで、少しでも誰かがモンスター化しないための精神的ワクチンとしてモンスター的なものをイメージとして強烈な印象で伝えておく…というのが先人の知恵のような気がします(節分の鬼や秋田のなまはげなど)。

 『モンスターズ・インク』の世界では、モンスターたちは子どもを怖がらせ、その悲鳴からエネルギーを得ています。

 その反面、本当は無害な子どもたちを病原菌のように恐れている…という設定は、本質を見失う形で硬直化しがちな現代社会、私たち大人への皮肉みたいにも感じられます。

 …とまあシビアな話も織り交ぜて書いてみましたが、動物病院的にはエリザベスカラーの描写に大ウケ!子どもと大人が理屈抜きで楽しめ、とらえ方によっては思っていた以上に深い物語でした!

 恐ろしい存在であるべきモンスターが物語の中でたどりついたモンスター的には予想外な発見も、お堅く考え過ぎて?それこそモンスターのようなしかめっ面になるだけでは解決しない問題を解くヒントですよね! 

 

 『インサイド・ヘッド』は一人の心の中に複数の感情──ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリ──がせめぎ合っていることがテーマのこころに すむ おおかみ (インディアンのティーチングストーリー)にもつながってくる物語です(ある意味ではインディアンのティーチングストーリー 古井戸に落ちたロバにもつながるシーンも)。

 ちなみに中医学では喜(心臓)、怒(肝臓)、思(脾臓)、悲─憂(肺)、恐─驚(腎臓)と5つの臓器に対応させつつ7つに分けています(七情)。 

 これもまた、ピート・ドクター監督の娘さんが11歳になった時の実話が元になっているそうです。

 ドクター一家がミネソタからピクサーのあるサンフランシスコに引っ越すと、明るかった娘さんが突然、情緒不安定に!(これも実際にはとても大変だったと思います)。

 ドクター監督は、仕事を理由にそこから背を向けるのではなく、娘さんと共に真剣に悩んだのでしょう。

 『モンスターズ・インク』もそうでしたが、一人の親として自分の中心が揺らぐほど苦悩した証のようなものが、作品の所々ににじみ出ているように感じられるのです。

 仕事が忙しい時などに限って、子どもにややこしい問題が起こったりするんですよね!そんな時は妻に丸投げしたくなるし、だいたいの男はしちゃってますよね?(残念な夫を代表してゴメンナサイ)聞く所によると、逆パターンもあるようですが…… 

 でも、特に子どもの精神的な問題などは、夫婦つまり男と女という時に大ゲンカするまでに理解し合えないほど異なったものたちが、それでも一緒になって協力しないとうまくいかないのだろう……と様々な本を読んだり身近な具体例を見たりすると感じます(シングルでやっていくしかないケースもあるのでしょうが、そんな時も自分と相反する力の導きにオープンでありたいものです)

 よく陥りがちな悪循環は、自分自身の葛藤から逃れられる何らかの屁理屈に取りつかれてしまう方向のような気がします。

 タイミングが悪いことが続いてしまうこともあり、実際にはとても大変ですが、自らの変化がキーポイントであることを夫も妻も受け入れる、それが大切な一歩なのでしょう――互いに誰かや何かなどアウトサイドのことだけに目を奪われ、またアウトサイドだけを変化させようとし、インサイドに向き合うこと、そしてその変化を忘れがちでは?

 子どもは、家族の中で表面的には隠されているすれ違いなどから生じる渦をも驚くほど敏感に感じ取るのですが、うまく言葉にできないためその渦の中に自分が落下してしまうことがあるのでしょう。

 そんな悲しく歪んだ形で「お父さんとお母さんそして家族全体がうまくいってほしい」というメッセージを必死に送っているように見える子がいます。

幼き子どもと同じく、ワンちゃんやネコちゃんも言葉が話せないからこそ、表面的な言葉などにごまかされないのです。そして言語化されていない混乱の渦そのままを感じ取り、言葉ではない悲しみのメッセージを様々な形で発します

 ドクター監督は、「仕事か?家庭か?」の二者択一を迫られ、どちらにも向き合い、この作品を完成させたのでしょう(そのせいか?完成まで5年もかかったそうです)。

 現実はそんなに甘くないとも思いますが、それでも「どちらかではなく、どちらも生き生きさせたい!」という情熱が強く伝わってくるように感じられ、私はそこに深く感動し、同じ親として目頭も胸も熱くなりました

 宮崎駿さんも試写会が終わった後、立ち上がって拍手をしたそうですし、ドリカムの作った主題歌のあらゆる感情を肯定するような歌詞も、いったん下げてから上げる感じの曲展開も素晴らしいです(ウチの子も大好きで、最近はアナ雪のレリゴーかこの曲!)

この動画で省略されたバージョンが流れます。

『インサイド・ヘッド』DREAMS COME TRUE楽曲入り予告編

 子どもも大人も楽しめるようにうまく工夫されていますし、子どもや自分の訳がわからない所を理解するヒントにもなると思いますので、まだ見ていない方はぜひ家族みんなで劇場へ!(Blu-ray+DVDは絶賛発売中です!!)

 

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