戦時下における文学研究者である友人が
「映画『野火』は、すごかったよ」という。
「野火」は昭和26(1951)年に、出版された大岡昇平の小説。
これを原作として、昭和35(1959)年に市川崑が監督、
船越英二を主演に公開した映画が公開されている。
2015年には塚本晋也監督版も公開された。
友人は両方を観ての感想。
「昭和35年でしょう?
戦争を知っている人たちばかりじゃない。
だから、てきと~な、おかしなことはできないよね。」と。
友人の言葉に納得し、1959版を観る。
2015年版の方が映画としての評判は良さそうだけれど・・・
あらすじは、結核あがりの兵士(船越英二)が
命令により、集合地をめざし、フィリピンの島をさまよう・・・
そこで、人間の極限状況を目の当たりにする・・・
という映画。
(以下ネタバレ気味ながら・・・)
カニバリズム(人肉食)が話題になることも多いけれど、
そこに至るまでも、ひたすら、怖く、嫌な動悸が続く。
よく、戦争ドラマや映画で、避難民や兵士が疲れ果てて
バタバタと次々に崩れ落ちていくけれど・・・
あれって、映画の演出だと思っていた。
でも、この映画には、バタバタばかり・・・
兵士は次々に、足下から崩れ落ちては動かなくなる。
友人の言葉を借りれば、戦後10年ほどの映画なのだから
戦場の帰還兵が観ても、違和感を抱かない描写ということ。
こんなふうにバタバタと、人は倒れていくものなのか・・・
追い詰められたら、人は何でもできてしまう。
わたしなんて、普通にしていたって、頭に血が上りやすい。
おそろしい。
素人の勝手な感想文におつきあいいただき、
どうもありがとうございました。