好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

リポグラムの極致atフランス。

2023-03-19 | 物語全般
『煙滅』(byジョージ・ペレック)(訳:塩塚秀一郎)、読了。
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フランスのペレックなる作家が手がけたこの創作物。
好事家らから目を向けられながら、読むチャンスの多からぬ、ある観点からのスーパーレア。

主(おも)たるプロットはこうだ。
スタートは、あるキャラクターが姿を消すところ。
他のキャラクターらは、彼を探すが報われず亡くなって、現場を去る羽目になる。
本当の事を明かせば、彼らは全て、長く受け継がれた、呪われた者。
それ故、ラストの頃は誰も残らず、幕は下ろされる。

と、顛末を反芻すると、何と鬱々たる事かと驚く。
我が遍歴──かつて触れた傑作とは感覚のかけ離れた、絶望の世だ。
普段なら、まず読む事はなかろう。
そう。こんなのを読んだのは、この本独特の言葉の戯れに、かかずらってやろうと思ったからだ。
この本では、テクストをそのまま和訳するのでなく、パズルの如く複雑な翻訳がなされ、結果、原語とは少なからぬ齟齬が見られる。
本当なら6個ある物が、8個(はっこ)まで増やされてる場面が複数ある。
4ダースとか、カナブンとかの要素がやたら取り上げられてる。エトセトラ。
そのほか、キャラクターらの名前など、まるで別物。
例えばムーオン・カナヌークとか、なかなか笑える。
「スファンクス」「ハンプテーダンプテー」「モベーデック」など、仏語の発音優先で訳された単語も散見する。
アルファベットの文は、殊更、翻訳の苦労を痛感させられる。全く別の文を載せてるんだもの。
その目的は、斜めの縦棒が二つ並んだ図柄である、“それ”を隠すためだけ……。
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以上。
破線内に限っては、日本語版『煙滅』のルールに抵触しないように気をつけて書き散らしてみた。
重い、暗い、虚しい物語だけれど、非常にイイ面も多いから、一度と言わず手に取ってほしい作品でした。

それでは。また次回。

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