(合わない本でした)
『あなたのための物語』(by長谷敏司)、読了。
2009年初出。
あるスマホゲームでタイトルを知ってから興味を持って、図書館で借りた。
舞台は2084年。
環境破壊の進む一方、脳神経学への研究、ひいてはヒトの意識と連動した機械も普及しつつある社会。
主人公である科学者・サマンサは、ヒトの意識を投影したソフトウェア「wanna be (ワナビー)」(なりたい)を開発し、「彼」に独自の小説を完成させる実験を重ねる。
が、そんな折、サマンサは不治の病に冒されている事が判明する。
感想としては。色んな意味で、読み進める事に時間がかかった本だった。
まず、和訳されたようなぎこちなさを感じる文体に私には感じて。
冒頭に登場人物一覧が欲しかった。
次に、専門用語のラッシュがきつい。
結局「wanna be」とは「何」なのか、私は今も理解してない。
そして最大のネックだったのが、ストーリーの鬱屈ぶり。
医学の進んだ未来でも、遺伝による免疫不全というサマンサの病を治す術は無い。
しかも、いわゆる闘病ものに出てくる病と違い、彼女のそれは主に大腸の炎症。
下血、下痢、脱糞という、まさしく尊厳破壊と言わんばかりの病状が緻密詳細に描かれている。
食事前後には、私は絶対に読めない。
私がSFに求めるのは、ひとえにワクワクするセンスオブワンダーだから、辛かった。
人の自我は、肉体あってこそ成立する。
肉体は刻々と朽ちていき、人は必ず死ぬ。
という作品のテーマは受け止めるが、私には合わない本だった。
それでは。また次回。