▶今日の見学場所は5箇所もありました。
❤ このファイト・シュトースの墓碑(手前)を見つけるまでに何十分かかったことか…。でも始めと終わりの文字以外は読めません。
▶まずスタートはお墓探しからです。
◆2022年9月29日(木曜日)21312歩
『結・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーからシュトース』を書くときに参考にしたカタログ「芸術と大罪 ファイトシュトース、ティルマン・リーメンシュナイダーとミュンナーシュタットの祭壇」(バイエルン国立博物館)に出ていたのが、2枚目の写真、シュトースの墓碑でした。ニュルンベルクに行ったら見たいと思っていた私と、アダムクラフトの「嘆きの群像」を見たいと思っていた三津夫、どちらも同じヨハネ墓地にあることがわかったので、ホテルに荷物を預け、朝一番で墓地に向かいました。
ホテルから西北に約2km歩くと Johannisfriedhof という墓地があります。ここまでは迷うことなく着きました。ところがいざ墓地の中に入ってどこをどう探したらシュトースのお墓にたどり着けるのかは皆目見当がつきません。それほどたくさんのお墓があるのです。キョロキョロしていたらお掃除の方がいたので「ファイト・シュトースのお墓はどこですか?」と聞いてみたところ、知らないなぁと首を捻るのです。「でもデューラーのお墓ならあそこにあるよ」と教えてくれました。そちらに向かう途中で案内板に気が付き、見てみるとデューラーのお墓の近くにありそうです。
そこでデューラーのお墓を先に見つけてお参りし(といってもお花もありませんが)、シュトースはこの辺かと探すのですが、なかなか見つかりません。先程のプレートに戻って見るとお墓の番地が書かれているのに気が付きました。2人でウロウロと歩き回ってようやく見つかったのがトップ写真のオレンジがかったお墓でした。見つかるまでおそらく20~30分はかかったような気がします。
❤ デューラーのお墓は649番、シュトースのお墓は268番だとわかりました。
その次に探すのはアダム・クラフトの群像ですが、Holzschuherkapelle(木靴の礼拝堂? 教会・修道院㉘)というところにあるはずです。何かに囲まれたような写真を見ていたので、私は墓地の周りにあるそれらしき場所を探しましたが見つかりません。三津夫は反対側の方を探すも見つけられず、2人で墓地の隅にあった小さな教会を覗いてみました。すると、中にいる女性が「今からちょっとセレモニーがあるので外に出てくださいませんか」と言います。「アダムクラフトの群像はどこにあるか探しているのですがご存じですか?」と聞いたらまっすぐ入口の方を指さして「あそこの礼拝堂にありますよ」と教えてくれました。それが Holzschuherkapelle であり、トップ写真の三津夫の頭の向こうに見える赤い屋根の小さな礼拝堂だったのです。
ところが行ってみるとドアはあっても鍵がかかっていて開きません。「なんだ、見られないんだ」とガッカリしながらぐるっと一回りしてみたところ、丸い穴に気が付いたのです。中を覗いてみたらその群像がありました! その穴から写すと、まるで群像が外にあるように見えたのです。
❤ Holzshuherkapelle(教会・修道院㉘) 木の後ろに、黒くて丸い覗き穴があります。
❤ Holzschuherkapelle 内の「嘆きの群像」 アダム・クラフト 1508年(緑)
▶次のお目当ては Burgkapelle (美術館・博物館⑲)です。
ニュルンベルク城の中にある礼拝堂 Burgkapelle(博物館の中なのでこちらでカウント ) にはシュトースの磔刑像があるのです。これは三津夫がエルケさんにいただいたシュトースのカタログに載っていた作品で、急遽訪問先に加えたのでした。
旧市街はさすがに観光客が多く、切符を買うにも城内を回るにもソーシャルディスタンスに気を遣いました。こちらの人々はもう普段はマスクもしていませんから、私たちも特別なことがないと交通機関以外ではマスクをしないで動いています。
大分時間をかけて切符を買い、とにかく中に入って順路通りに進んだらちゃんと磔刑像があったので写真を写していたところ、誰か男の人が後ろから大きな声で怒鳴るのです。三津夫が邪魔だと言っているようです。三津夫は自分のことだと気が付いて場所を譲り、その人が写した後で元の場所に戻って撮影し始めたら、今度は上の階段から怒鳴り声が聞こえました。城内の監視員です。2段ほどある階段の向こう側に綱が張ってあるので、その階段に上がったら怒られたのです。仕方なく階段から下りたのですが、三津夫の怒りがおさまりません。誰だって綱の手前までは上がって良いと思えるはず。ずいぶん横暴な怒鳴り方を立て続けにされた三津夫の気持ちが私にもよくわかりました。特に最初の男性は「自分が写すのに邪魔だ、どけ!」という感じでしたから、どうも日本人だと馬鹿にされたような、ドイツでは珍しく不愉快な経験でした。
▶3箇所目は聖ゼバルドゥス教会(教会・修道院㉙)です。
ここもニュルンベルクに来れば必ず寄る場所になっています。私の目標はゼバルドゥス墓碑(『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』177~180頁)の詳細を丁寧に写すことでした。できれば聖ゼバルドゥスの逸話を彫ったレリーフを全部写したかったのですが、柵の合間から少しだけ見えるという状態で諦めました。せめて天辺の幼子イエスをしっかり写したかったのですが、下から見上げるしかなく、結局顔の表情まではよく写せずに終わりました。それにしても高所に立つ聖人たちのかっこよさ。流れるような服の襞が素晴らしいのです。望遠でなければ見えにくいペーター・フィッシャー(父)の魅力を少しだけ紹介しておきます。
❤ ゼバルドゥス墓碑の部分 ペーター・フィッシャー(父)1508~1519年 (緑)
▶その後も冒険続き
そして4箇所目は聖ロレンツ教会(教会・修道院㉚)です。やはりファイト・シュトースの磔刑像を見て撮影。ここの磔刑像が一番良いねと三津夫。
5箇所目は途中通り越したことに気が付いてロレンツ教会から戻った Heilig-Geist-Spital (聖霊ホスピタルと訳すようです 教会・修道院㉛)です。ここも入口がなかなかわからず、建物の横に回ると全然雰囲気が違うモダンな入口があったので通り過ぎようとしたところ、サッと自動ドアが開くのです。中に入ってみたら受付がありました。中には女性が座っていて、アダムクラフトの磔刑像があるかどうか聞くと「真っ直ぐ廊下を行くとドアがあるから、通り越して左に行けば見られますよ」と言います。嬉しくなって「あの自動ドアが招き入れてくれたんだね」と話しながら進み、建物の中庭に出てようやく磔刑像を見つけました。中央にキリスト、写真には写っていませんが両脇の角にはキリストと同時に磔刑となった罪人像がかかっていました。今日だけでもキリストの磔刑像を3体見たことになります。最後のアダム・クラフトの磔刑像(砂岩)が一番大きく、お城の礼拝堂の磔刑像(木彫)が一番小さくまとまっていました。
❤ Heilig-Geist-Spital の中庭 「磔刑像」アダム・クラフト 1507/1508年(緑)
さて、これで今日の目的は全部達成。ホテルに戻ろうとすると、さっき通って来たドアが開きません。またリエージュの博物館と同じ事態になってしまった! 来る時に簡単に開いたドアは帰るときには開かないということをすっかり忘れていました。どうしようと慌てているとちょうど通りかかった掃除婦さん。「出口はどこでしょう?」と聞いたら「ここを左に行けば出られますよ」と前の小道を指さしました。あ~、良かった。
▶今日はインゴルシュタットまで移動しました。
無事にホテルに戻って荷物を引き取り、ニュルンベルク中央駅14時27分発の列車でインゴルシュタットに向かいました。約30分の近さですが、その後の訪問には便利なためここで3泊します。
インゴルシュタット中央駅はあまりにも静かで驚きました。人気のないホーム地下道には何の案内もなく、どちらが町への出口なのかヒントが掴めません。偵察に出てようやくホテルを確認してから荷物を持って出ました。
ホテルは中央駅にすぐ近く、チェックインしてから旧市街に向かって11番のバスに乗りました。Rathausplatz の一つ先で下車して500mほど歩くとグナーデンタール修道院 (教会・修道院㉜)があるとフロントで教えてもらいました。ここには私たちが長い間見たいと思っていたハンス・ラインベルガーの代表的な彫刻「聖アンナ三代像」があるのです。ところが言われた通りに下車して地図で見てもどこなのかよくわからず、冷たい雨まで降ってきました。傘を差しながら2回地元の人に聞いて、結局先まで歩き過ぎたことがわかり、ようやく修道院にたどり着きました。
修道院の重たいドアを開けると小さな窓がありました。どうしたら良いのかキョロキョロしていると小さな修道女がその小窓を開けて声をかけてきました。訪問の趣旨を話すと彼女が「今日は夕方シスターの集まりがあるので無理なのだけれど、もし明日の午後2時~4時に来られれば私がいるからお見せしましょう」と言います。お名前を伺うとシスター・サロメさんとおっしゃいます。それでは明日その時間に伺いますと言ってお別れしようとすると絵はがきを3枚くださったのです。そして「すぐ近くのMaria de Victoria(教会・修道院㉝) も素晴らしい教会ですよ。」と勧めてくれたのでそちらにも寄ってみましたが、きらびやかな装飾で、いわゆる好きなタイプではない教会でした。
近くのREWEで食料品を買い込んでバスに乗ってホテルに戻りました。
今日はこんなバタバタ歩き回った一日だったので歩数は2万歩を超え、この旅行で一番歩いた旅となりました。さすがに足腰にきましたが、何とか歩けたということは、私の足腰も少しずつ癒えてきているのかもしれません。
明日はミュンヘンまでエラスムス・グラッサーの作品を見に行く予定です。
2015-2023 Midori FUKUDA