私が バイオリンの品定めをするとき
まず最初に、バイオリンの見た目で好きか嫌いかを決めます。
バイオリンって、最初のうちは、どれを見ても同じに見えますが
たくさん見ているうちに
表板のfの形、fの文字の上下端の丸の形・大きさ
パフリングと呼ばれる、表板・裏板の縁に埋められた黒色の2本の線の処理の仕方
表板・裏板の隆起
ヘッドと呼ばれる、スクロールや糸倉のある部分のデザイン
スクロールの渦巻きがそんな感じか、糸倉の形がどうなっているか
ニスの色、ニスが薄くなっている雰囲気、板の割れ、ひび、修復跡 などなど
見えるところは、全て見るように過ごしていると、なんとなく違いが判ってきます。
白川総業社さんで 社長さんと工房長さんとお話しする機会があったとき
所有する Capela 2挺の真贋の見分け方について訊いたところ
「細かい説明はいりません、見てわかります」との回答
それでも納得できなかったら、特別に白川総業さんのコレクションを出してきてくださいました。
白川総業さんでは、楽器の鑑定をするために、取り扱った製作者の代表的な楽器を全て所有し、保管しているとのこと。
私のCapelaは2挺とも、STRADタイプでしたので、StradタイプのCapelaさんの白川さんのコレクションを倉庫から
出してきてくださいました。(長期保管するため、駒とテールピースは外され、魂柱も外され、楽器の中でコロコロ転がっている状態です)
白川さんのコレクションと、私の2挺の楽器は3並んで、同じ顔をしていました。
特に、表板と、裏板のとある部分の隆起は他の楽器には見られない特長があり、
それが楽器全体の特長を印象つけていました
思わず「白川さん、わかります! 細かい部分だけでなく全体で楽器を見るんですね!」
おもえば、Stefanini と Romeo Antoniazzi は、かなりの数を見てきており、彼らの代表的な作風の楽器であれば
ケースから出てきただけで、すぐ わかります。
Capelaもその時に、Stradタイプだけですが、もう見分けができると思います。
見た目、私にとってはすごく大事で
「いいな」と思えない楽器は、自分から進んで触れることはしません。
たとえ有名な製作者でも、「いいな」と思えない楽器ならその楽器を触るより、別の楽器を触る時間の方が大切だと思うからです。
楽器は、音が良ければ 見た目は… という方もおられることはわかっています
でも 楽器は 私いとっては、 とても重要な要素です
私の好きな楽器の見た目は、
暖かい雰囲気、気品のある雰囲気
→ これは 最近では 友達のてつ さんが手に入れた、Voltiniさんの2020年作の楽器がそれにあてはまります。
楽器が幸せな表情をしている
→ これは、たつのやさんの展示会で見た、ウンガリーニ。 やんちゃで…おしゃべりな楽器 という印象も持ち合わせていました
→ ガンさんの新作 アマティモデル。この楽器も自信満々な表情をしていました。
→ 弦楽器フェアーのYAMAHAのブースで見た、YAMAHAのアコバヨリンの中にも、幸せそうな顔をしている楽器がこれまでで2回出会うことがありました。1本は ヤマハがブラビーオールを発表した翌年、展示会を転戦してきたV-30という当時上から2番目のグレードでした。とても良く鳴る楽器で、フラッグシップのV-60よりはるかに好印象でした。YAMAHAの方に訊いたところ、試奏用として、一番惹かれている楽器だそうで、この楽器を購入したいと申し出たのですが、断られてしまいました。もう1回は、今のアルティーダYVN500の試作品、発表される2年前の弦楽器フェアーで展示された楽器です。これもとてもいい表情をしていました。
この2つが基本でした
そして、昨年初めて 見た瞬間に「買おう」と思わせることがありました。
いつもは、悲しげな表情の楽器は買いません。負のオーラを持ってきてしまいそうだからです
でも、その楽器は少し違いました
新しい基準は「楽器が「助けて」と訴えかけてくる」です
今回購入した 「おフランスざんす」の楽器。 オークションハウスで最初に見た時
悲しげな表情の楽器はいくつも見るのですが、この楽器のオーラには、悲壮感が感じられました。
楽器を持つと、私の気持ちの中に、「購入して、きちんと直して、鳴るようにしてあげないと」という思いが出てきたのです。
見た瞬間、典型的な フレンチバヨリンだな とは思ったのですが
聞けば、BY Paul Bailly で ランパルさんの鑑定書も付いている。
年代も1800年代の後半の良い時代
どう考えても安くはありません。
最初の売り手の提示価格は、予算オーバー。
仲介をしている、ディーラーの方に
私が考える、この楽器の適正価格(=私が購入する価格)の上限・下限を伝え
その適正価格を算出した根拠を、説明し。
最後にディーラーの方への、交渉手数料と売買が成立した時の報酬額を決めて
後はたくしましたディーラーの方へ託しました。
結果、私の伝えた適正価格の上限、すなわち最も高い金額で
プライベートセールスの売買が成立したのでした。
12月にお金は支払い、楽器はディーラーが保管。
年明けに、鑑定書がディーラーに届いて。受け渡しができる状態になりますが
非常事態宣言中なので、楽器の受け渡しは自粛。
3月下旬にようやく入手したという感じです
最初のうちは、楽器の見た目の好みはわからないかも知れません。
見た目が気になるようになれば
楽器の真贋も見れるようになると思います。
今のクレモナの新作楽器は、楽器の表情が乏しく
つめたい、蝋人形のような、楽器が増えているように思います
綺麗に丁寧に作られているけれど、なんだか物足りない
また、そういう楽器が好きな人が多いのも事実ですね~
2005年に名古屋の弦楽器店で
Marino(Marinov)の soffrittiモデルに出会ったとき、 ああこの人はきっと将来伸びると思いました。
当時トマショーの銀黒檀のセットで150万円で提示を受けましたが… 最終的には買いませんでした。
今では、クレモナでも400万円近い値段がする、巨匠になってしまわれたようです。
やっぱり と思いました。
グダグダ 書きましたが
見た目=楽器の表情
これは 大切にした方がいい
と今でも私は 思っています。