りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“Thank you!リトルレディ” ―全8場― 3.5

2013年02月11日 21時08分54秒 | 未発表脚本

  ザック「ただいま・・・」
  モア「・・・あ!兄ちゃん!」
  エレナ「おかえりなさい、ザック。」
  アナベラ「おかえり・・・」
  ザック「何か面白いことでもあったのかい?楽しそうな笑い声が
      扉の外まで聞こえていたよ。」
  アナベラ「またお母様のご病気が始まったのよ。(笑う。)」
  ザック「病気・・・」
  モア「ほら!これ見てみろよ!兄ちゃんの可愛いカッコ!(写真
     を見せるように。)」
  ザック「あ・・・!!それは!!おまえ!!その写真、どこで・・・
      !!返せよ!!」
  モア「嫌だよ!!姉ちゃんが見せてくれたんだから!!」
  ザック「姉さん!」
  アナベラ「あら、折角おしゃれしたあなたの写真、モアちゃんに
        見せてあげたって構わないでしょう?(笑う。)」
  ザック「・・・おしゃれって・・・」
  モア「おばちゃん!この写真、あたいが貰ってもいいか?」
  ザック「おまえ・・・何言ってんだよ・・・!!」
  エレナ「まぁ、そんな写真どうするの?可愛いザックの写真なら
      沢山あるから、1枚くらいあなたにあげたって構わないけ
      れど・・・」
  ザック「母さん・・・!!」
  モア「やったっ!!」
  ザック「おい、返せ!!返せったら・・・(写真を取ろうとする。)」
  モア「ヤダね!!(写真を持って逃げる。)」
  ザック「おい、おまえ・・・おい、待てったら!!(モアを追い掛け
      る。)そんな写真、一体どうすんだよ!」
  モア「あたい・・・淋しくなったらこの写真を見て笑うんだ・・・」
  ザック「・・・え・・・?」
  モア「そのうち祖母ちゃんが元気になって、家に帰れるようにな
     るだろ?そしたらあたい、また祖母ちゃんと村に戻って、2
     人で暮らしていくことになるんだ・・・。あたい・・・今までこん
     な風に・・・沢山の家族に囲まれて生活したことなんてない
     から・・・今の・・・この賑やかで楽しい生活を・・・一生忘れ
     たくないんだ・・・。この写真見たら・・・楽しかった今を、思い
     出せるじゃないか・・・。だからこの写真・・・持ってっていい
     だろ?なぁ、兄ちゃん!!」
  ザック「おまえ・・・」
  アナベラ「あら、じゃあお祖母様が退院なさったら、2人揃って家
        で暮らせばいいじゃない。ねぇ、お母様。」
  エレナ「そうねぇ・・・それはいいアイデアだわ、アナベラ。」
  モア「・・・おばちゃん・・・」
  エレナ「ねぇモアちゃん、そうしなさいよ。何も村外れの淋しい場
      所へ帰ることはないわよ。ずっとここにいればいいのよ。」
  ザック「母さん・・・」
  エレナ「ねぇザック!あなたも名案だと思うでしょう?」
  ザック「それはそうだが・・・。そうですね・・・(モアに向いて。)ど
      うだ?ここで一緒に暮らすかい?ずっとここにいていいん
      だぞ。」
  モア「・・・ありがとう・・・おばちゃん・・・姉ちゃん・・・それに兄ちゃ
     ん・・・。あたい・・・こんな温かい家族の温もりを感じたのっ
     て・・・初めてだ・・・。」
  エレナ「じゃあ直ぐにも引越しの準備を・・・」
  モア「(首を振る。)・・・ううん・・・あたい・・・祖母ちゃんが元気に
     なったら・・・祖母ちゃんと一緒に、自分家へ帰るよ・・・」
  エレナ「どうしてなの?」
  モア「そりゃ・・・ここは家ン中にシャワーがあって・・・床はフカフ
     カだし・・・ボール遊びが出来る程広い廊下があって・・・お
     ばちゃん達や兄ちゃんがいて・・・こんなとこがホントにあた
     いン家だったら、どんなにいいだろうって・・・」
  エレナ「だったら・・・」
  モア「でも・・・あの家は・・・父ちゃんと母ちゃんと一緒に暮らした
     家なんだ・・・」
  ザック「・・・え・・・」
  モア「まだ何も分からない小さい頃に、2人共死んじゃって・・・そ
     れから祖母ちゃんとずっと2人で暮らして来たから・・・父ち
     ゃんの顔も・・・母ちゃんの顔も、思い出そうったって思い出
     せねぇんだけど・・・あの家には・・・父ちゃんと母ちゃんの香
     りが染み付いてんだ・・・」
  ザック「・・・モア・・・」
  モア「こんな風に写真も残ってないけど・・・父ちゃんと母ちゃん
     がそこにいた・・・その温もりがあの家には残ってるんだ・・・
     !だから、あたい・・・」
  ザック「・・・分かったよ・・・もう・・・。その変わり、またいつでも遊
      びに来ていいんだぞ。(モアの頭に手を置く。)」
  モア「・・・兄ちゃん・・・うん・・・ありがとう・・・」
  アナベラ「ザック・・・」

         その時、上手より執事(マーベリック。)
         登場。

  マーベリック「奥様・・・」
  エレナ「どうしたの?マーベリック。」
  マーベリック「それが・・・玄関に何やら様子の怪しい者が参って
          おりまして、奥様に会わせろと騒いでいるのですが
          ・・・」
  ザック「・・・怪しい者・・・?」
  マーベリック「はい・・・」
  エレナ「まぁ・・・どなたかしら・・・」
  ザック「母さん、僕が会いましょう。マーベリック、中へ通してくれ
      ・・・」
  マーベリック「はい。」
  モア「・・・兄ちゃん・・・」

         マーベリック、上手へ去る。
         ザック残してカーテン閉まる。

    ――――― 第 5 場 ―――――

         一時置いて、上手よりマーベリック、続いて
         粗末な身形の1人の女性(シンシア。)登場。

  マーベリック「ザック様、お連れしました。」

         マーベリック、上手へ去る。

  ザック「(振り返って2人を認める。)」      
  シンシア「(興奮した様子でザックの側へ。)どこにいるんだい!
        ?愛しい私の子は!!ここにいるんだろ!?早く呼ん
        で来とくれよ!!」
  ザック「・・・失礼ですが・・・あなたは・・・」
  シンシア「何言ってんだい!!あんたん家に誘拐された子の母
        親だよ!!」
  ザック「誘拐・・・?」
  シンシア「ああ、そうさ!!私が働きに出る間、婆さん家に預け
        て行った、モ・・・モ・・・モグ・・・モグだよ!!さっさと返
        しとくれ!!今までずっと会わずして、寝る間も惜しん
        で働いて来て、今日やっと家に戻ってみたら家はもぬ
        けの殻だ!途方に暮れていたら、親切な人がここに連
        れて行かれたって教えてくれたんだよ!!家の子を
        拐って、外国へでも売り飛ばすつもりかい!?それと
        もここの使用人にでもするつもりかね!?そんなこと
        はさせないよ!!男手は子どもだろうが何だろうが貴
        重なんだ!!家の子をタダであんたン家に持ってか
        れたんじゃあ、堪ったもんじゃないよ!!さぁモグ!!
        出ておいで!!母さんが助けに来てやったよ!!そ
        れとも何かい・・・?どうしてもあの子が欲しいって言う
        んなら・・・相談に乗らなくもないよ・・・。そりゃあ私だっ
        て、自分の腹を痛めて産んだ子を手放すのは忍びな
        いさ!!だけど婆さんと2人、働き手がなくなったら、
        こっちとしても困るじゃないか・・・。その辺は・・・どうな
        んだい?」
  ザック「あなたは金で自分の子を売ると・・・?」
  シンシア「だから言ってるだろ・・・私だって、可愛い我が子を手
        放すのは辛いさ・・・(身に着けていたエプロンで、目頭
        を押さえる。)だけど・・・あの子も必要とされた場所で
        生活出来るのが幸せに決まってんだ・・・。」

         カーテン開く。と、玄関ホール。
         その時、後方階段をモア、ゆっくり
         下りて来る。

  ザック「(モアを認め、手を上げて合図する。)ああ、こっちだ・・・」
  モア「・・・兄ちゃん・・・何・・・?」
  ザック「この人がおまえに用があるそうだ、モア。」
  シンシア「・・・モア・・・?(小声で。)え・・・モグじゃないのかい?
        ん・・・?モ・・・ア・・・?」
  モア「・・・おばちゃん・・・誰・・・?」
  シンシア「あ・・・ああ!!(小声で。)この際、名前なんてどうで
        もいいわ・・・!!モア!!会いたかったよ!!どんな
        に長いこと、この日を夢見て来たと思ってんだい!!
        さぁ、早くもっとこっちへ来て、母ちゃんに顔をよく見せ
        とくれ!!まぁ・・・何て立派な男の子におなりだい・・・
        !!(モアに近寄りながら。)」
  モア「・・・母ちゃん・・・?母ちゃん・・・って・・・」
  シンシア「そうだよ、モア!母ちゃんだよ!!」
  モア「嘘だ・・・」
  シンシア「嘘なもんか!!ほらこうやって、今日やっと出稼ぎか
        ら戻って、その足で真っ先におまえを迎えに来たんだ
        よ!!」
  モア「嘘だ・・・嘘吐き!!母ちゃんは死んだんだ!!ずっと・・・
     ずっと昔に!!祖母ちゃんがそう言ってた!!」
  シンシア「嘘なんかじゃないよ、モア!!ほら、この通り母ちゃ
        んは生きて・・・」
  ザック「お引き取り下さい。」
  シンシア「・・・え?」
  ザック「残念だが、あなたはこの子の母親でも何でもないようだ
      。」
  シンシア「どうしておまえにそんなことが分かるんだい!!実の
        母親の私がそう言ってんだよ!!それのどこが嘘だ
        って言うんだい!!昔々に生き別れた実の母親を、
        嘘つき呼ばわりするなんて、どう言った見解だね!!
        ・・・まぁ、どうでもいいさ、そんなこと!子どもを返さな
        いってんなら、金を払いな!!この子の代金だ!!そ
        れとも誘拐罪で訴えようか?大病院の名に傷が付くね
        ぇ・・・(笑う。)」
  モア「兄ちゃん・・・」
  ザック「(溜め息を吐いて。)やれやれ・・・あなたは初めからとん
      だ勘違いをなさっているようだが・・・」
  シンシア「勘違い・・・?何が勘違いなんだよ・・・!!」
  ザック「あなたはこの子を、お腹を痛めて産んだ子だと・・・そう
      言われましたね?」
  シンシア「あ・・・ああ、そうさ・・・それがどうしたんだい・・・」
  ザック「ならば・・・自分の産んだ子の性別も分からないような母
      親がどこにいると言うんだ!!」
  シンシア「・・・え・・・?」
  ザック「モアはこんな格好をしてはいるが、正真正銘、女の子だ
      !!」
  シンシア「・・・女・・・?あ・・・え・・・?私・・・さっきから・・・可愛い
        娘になったね・・・って・・・だから・・・(狼狽えたように。
        )」
  ザック「こちらが反対に脅迫罪で訴えてもいいんだぞ!!」
  シンシア「きょ・・・脅迫だって・・・!?一体私がいつ・・・(観念し
        たように。)キーッ!!ええいっ!!何だっておまえは
        女のくせに、そんな汚らしい格好をしてるんだい!!
        女なら女らしく、もっと身奇麗にしときなってんだ!!
        フン!!あのパン屋の糞親父!!男だなんて、いい
        加減なことを吹き込みやがって!!全く、頭にくるよ!
        !もうちょっとで金をたんまりふんだくれたって言うの
        に!!キーッ!!」

         シンシア、一人ブツブツと怒りながら、
         上手へ去る。

  ザック「何なんだ一体・・・」
  モア「あたい・・・」
  ザック「ん?」
  モア「あたい・・・ずっと夢見てたんだ・・・」
  ザック「・・・夢・・・?」
  モア「うん・・・小さい頃、祖母ちゃんから父ちゃん母ちゃんは、あ
     たいが生まれて直ぐ死んだって聞かされたんだ・・・。けど、
     あたいは信じなかった・・・。父ちゃん母ちゃんは働きに行っ
     てるだけで、いつか・・・いつか今みたいに・・・あたいを迎え
     に来てくれるんだって・・・そう信じてたんだ・・・ずっと・・・」
  ザック「モア・・・」
  モア「今はそんなの有りっこないって分かってっから、変な期待
     なんてしないけど・・・。今みたいに・・・嘘だって分かってた
     って・・・あのおばちゃんに、あんな風に言われて・・・あたい
     ・・・ちょっとだけ嬉しかったんだ!」

         音楽流れモア、スポットに浮かび上がり、
         歌う。(カーテン閉まる。)

         “いつも祖母ちゃんと2人で
         肩寄せ合って生きてきた・・・
         いつかそれも消え去るようで
         心細くて震えてた・・・
         だけど気付かなかった
         とてつもなく大きな愛が
         私の回りに溢れてた・・・
         一人じゃないんだそう思えて・・・
         心の氷が溶け出すようで
         どこからか・・・
         春の陽差しが私を照らす・・・”

         暗転。

    ――――― 第 6 場 ――――― A

         カーテン開く。と、病室。
         中央、置かれたベッドの上に、モアの祖母、
         寝ている。横にザック立ち、診察をしている
         ように。

  祖母「先生・・・ありがとうございました・・・命を助けて頂いて・・・
     。」
  ザック「いえ・・・僕がたまたま見つけたから良かったようなもの
      の・・・もう少し遅ければ、今頃どうなっていたか・・・」
  祖母「お医者様のいない村ですから・・・先生に偶然見つけて頂
     いたのは、本当に奇跡としか言い様がありません・・・。それ
     に・・・私が死んでしまったらモアは・・・あの子は独りぼっち
     になってしまうところでした・・・。本当になんとお礼を言えば
     いいのやら・・・」
  ザック「あの・・・聞いてもいいでしょうか・・・?」
  祖母「はい・・・?」
  ザック「・・・モアのご両親はどうして・・・」
  祖母「ああ・・・流行病ですよ・・・」
  ザック「流行病・・・?」
  祖母「ええ・・・丁度12年程前・・・今、私達の住む村で、何やら
     訳の分からない伝染病が広まったのでございます・・・。あ
     の子の両親はその病で・・・」
  ザック「そう言えば・・・僕がまだ学生の頃・・・一つの村が、ある
      感染性の病によって、隔離される異常事態が発生したと
      記憶しています・・・。確か・・・村は壊滅状態だったと・・・」
  祖母「そうそう、それですよ・・・。モアの母親・・・つまり私の娘は
     産後の肥立ちが悪く・・・暫く生まれたばかりのモアは、以
     前は他所の村で暮らしていた私のところで、面倒を見てい
     たのです。」
  ザック「それでモアだけ・・・」
  祖母「はい・・・。その頃、近くの集落のどこにも、お医者様は1人
     もおらず・・・隣り街の大きな病院から先生が来て下さった
     時には、もう村に入ることすら出来ない状態で・・・外にいる
     者は、衰弱して亡くなっていく村人達を、ただ黙って眺めて
     いることしか出来なかったのです・・・。」
  ザック「そんな・・・」
  祖母「今でこそ・・・まだ私達の住む村に、お医者様はいません
     が、隣り村には薬草屋が出来たので、それでも随分と助か
     っているのですよ、先生・・・」
  ザック「・・・病院のない村・・・」
  祖母「病院が出来たところで・・・私達の村に住む者は皆、貧し
     くて・・・先生に診てもらうことは出来ないのでしょうけど・・・
     薬草を買うことだって・・・余程のことがないと、皆少々の具
     合の悪さには、耐えて凌ぐのです・・・。モアのような小さな
     子が、靴磨きやなんかをして、一家を支えているような村
     じゃ・・・高額な治療費なんて、ちょっとやそっとじゃ払えな
     いですからね・・・。」









   ――――― “Thank you!リトルレディ”
                         4へつづく ―――――











 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    






 
 





















“Thank you!リトルレディ” ―全8場― 3

2013年02月11日 21時08分29秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン開く。と、ハミエル邸居間。
         その時、上手方からモアの声が聞こえる。

  モアの声「わあーっ!!」

         そこへ上手より、ボールが飛び込んでくる。
         (窓際の花瓶に当たり割れる。
         音“ガッシャーン”) 
         一時置いてモア、走り登場。

  モア「やっべぇ・・・!!」

         モア、転がっていたボールを拾い、
         回りを見回し、抜き足差し足で上手方へ。
         そこへ下手より、車椅子に乗ったエレナ、
         ゆっくり登場。

  エレナ「まぁまぁ、元気のいい娘さんだこと・・・(笑う。)」
  モア「(その声に驚いて立ち止まり、ゆっくり振り返る。)は・・・は
     は・・・(作り笑いする。)あたい・・・暇だったから・・・ちょっと
     そこの階段の踊り場で・・・」
  エレナ「ボール遊びかしら?」
  モア「あ・・・いや・・・このボール・・・兄ちゃんの部屋に転がって
     たんだ!だから・・・」
  エレナ「そのボールは、ザックの思い出のボールなのよ。(微笑
      む。)」
  モア「思い出・・・?」
  エレナ「ええ。学生時代にずっとサッカーをやっていた・・・」
  
         そこへ下手よりアナベラ登場。
       
  アナベラ「(エレナの言葉を遮るように。)運動音痴のザックが、
        ゴールを決めた最初で最後のボールよ。(笑う。)」
  モア「兄ちゃんが運動音痴って・・・!(笑う。)」
  エレナ「アナベラ・・・あなたは相変わらずザックには辛口ね。」
  アナベラ「あら、お母様、ザックは運動は苦手だったかも知れな
        いけれど、勉強が出来たんだから、それで良かったの
        よ。下手に運動が少しくらい出来て、そちらの方に興
        味が強ければ、ザックのことだからお父様の跡を継い
        で、お医者様になったかどうか怪しいものよ。(笑う。)
        」
  エレナ「そうだわね。」

         モア、2人が話している間に、ボールを
         持って上手方へ、そっと出て行こうとする。

  エレナ「モアちゃん!」
  モア「(その呼び掛けに驚いて立ち止まる。)はいっ!」
  エレナ「こっちへいらっしゃい。(手招きする。)」

         モア、ゆっくりエレナの側へ近寄る。
         アナベラ、その様子をチラッと見ながら
         ソファーへ腰を下ろし、テーブルの上の
         本を手に取る。

  モア「・・・何だよ・・・おばちゃん・・・」
  エレナ「あなた、可愛いお顔しているのに、その言葉使いは少し
      残念ね。」
  モア「んなこと言われたって・・・」
  エレナ「それにその汚れたお洋服も・・・」
  モア「(自分の服を見る。)・・・何か可笑しい・・・のかよ・・・」
  エレナ「そうねぇ・・・先ずは・・・」

         音楽流れ、エレナ歌う。

         “お風呂に入りましょう
         身奇麗にして
         石鹸の香りに包まれるのよ
         髪を梳かして
         可愛いリボンをつけましょう
         頭の上からつま先まで
         ピカピカにして着飾りましょう
         女の子らしくフワフワの
         ドレスを着ましょうピンク色
         ほら忽ち可愛いレディに大変身!”

         エレナ、モアの髪に、引き出しから
         取り出したリボンをつける。
         テーブルの上の手鏡を、モアへ
         差し出す。

  エレナ「どうかしら?」
  モア「・・・(鏡を見て。)あ・・・女みてぇだ・・・」
  エレナ「女みてぇ・・・じゃないのよ。あなたは紛れもなく、可愛ら
      しい女の子なんだから。」
  アナベラ「また始まったわ・・・お母様のご病気が・・・」
  エレナ「まぁ、失礼ね、アナベラ・・・。私のどこが病気なのかしら
      ・・・」
  アナベラ「あら、お忘れかしら?お母様のデコレーション病。家
        の中の調度品は勿論のこと、私たち姉弟・・・その手が
        離れたら、次はいとこのマーサ・・・そしてお隣の家の
        マリィ・・・それから愛犬のジョン・・・そうそう、愛猫のネ
        リーを忘れちゃ駄目ね。(笑う。)ほら、これが証拠の写
        真・・・(写真を取り出し、テーブルの上へ置く。)」
  モア「わあーっ・・・!(写真を手に取る。)へぇ・・・皆、可愛く着飾
     ってら・・・あれ・・・?これ・・・」
  アナベラ「(写真を覗き込む。)ああ、ザックね。」
  モア「・・・兄ちゃん・・・?」
  アナベラ「そうよ。」
  モア「えーっ!?兄ちゃん、こんなフリフリのブラウス着て、女み
     たいだ!!(大笑いする。)」
  アナベラ「そうでしょ!お母様は男でも女でも、生きてるもので
        も身につけるものでも・・・何だってこんな風に、可愛く
        デコレーションしてしまうのよ。」
  モア「へぇ・・・」
  エレナ「あら・・・いいじゃない。可愛いものに囲まれて、生活して
      いると、幸せな気分になれるんですもの。」
  アナベラ「まあお母様の趣味だから、皆諦めているけれど・・・」
  モア「ふうん・・・」
  アナベラ「だから次は、あなたの番って訳よ。」
  モア「えーっ・・・?あたい、今までスカートだって、履いたことな
     いのに・・・」

         その時、上手よりザック登場。

  ザック「ただいま・・・」
  モア「・・・あ!兄ちゃん!」
  エレナ「おかえりなさい、ザック。」
  アナベラ「おかえり・・・」
  ザック「何か面白いことでもあったのかい?楽しそうな笑い声が
      扉の外まで聞こえていたよ。」
      
  
      









    1月22日(火)

    しばらくお休みしていて、すみませんでしたm(_ _)m
    再びスタート致します(^^;


   
                              どら。



































 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    (どら余談^^;)

    明後日は小学校公演です♪
    なので明日は朝から練習・・・午後から舞台設置に・・・と、
    一日ドタバタと過ごすことになりそうです(^^;
    
    今は編集作業も自分で行っている為、昨日などは
    一日、不慣れな作業に四苦八苦しながら、アリアちゃん
    作品を手直ししておりました(>_<)
    
    いつも間際にならなければ動き出さないのが欠点の私・・・
    今日も明日の朝には搬入する荷物を、ひっちゃかめっちゃ
    かに入れ込んであるクローゼットの中から引っ張り出したり
    ・・・、購入したまま放ってあった投光器のセットをしたりと、
    なんで前日に・・・と思われるかも知れませんが・・・
    そんな準備作業に追われておりました・・・(^_^;)

    それでは明日、明後日と、ここへやって来るのが、いつも
    より遅めになってしまうかも知れませんが、お許し下さい
    m(_ _)m


                                
    











 
  http://milky.geocities.jp/little_pine2012/index.html
 
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“Thank you!リトルレディ” ―全8場― 2

2013年02月11日 21時08分06秒 | 未発表脚本


         
    ――――― 第 2 場 ――――― B

         モア残してカーテン開く。と、パン屋。
         (下手方に扉。)
         店の中、カウンター内にパン屋の主人、
         客の相手をしているよう。

  パン屋の主人「ありがとうございました!」

         客、扉から去る。
         一時置いて、扉を開けてモア、躊躇うように
         ゆっくり入って来る。

  パン屋の主人「(用事をしながら。)はい、いらっしゃいませ。」
  モア「・・・こんにちは・・・」
  パン屋の主人「何にしましょう・・・(モアの顔を見て。)あ・・・おま
           えは、あの時の・・・!」
  モア「ごめんなさい!!もうしません!!二度としません!!こ
     のお金もちゃんと返しに来ました!!だから、あたいのこと
     許して下さい!!(土下座する。)お願いします!!」
  パン屋の主人「(カウンターの外に出、モアに近寄り肩に手を掛
           ける。)なぁに、いいってことよ。その金も返さなく 
           ていいから・・・。(笑う。)」
  モア「(頭を上げて、主人を見る。)・・・え・・・?」
  パン屋の主人「それと今日はここにあるパンを、好きなだけいく
           らでも持っていいていいぞ。」
  モア「・・・持ってって・・・?」
  パン屋の主人「ああ!それだけじゃない。明日も明後日も、腹
           が空いたらいつだってパンを取りに来ていいんだ
           !さぁ、今日はどいつが食べたいかな?どれでも
           いいぞ。このクリームの入ったパンはどうだ?美
           味いぞ!婆さんにはこの白いフワフワのパンがい
           いな。(紙袋の中にパンを入れながら。)」

         モア、呆っとパンを袋に入れる主人を
         見ている。

  パン屋の主人「ほら!(袋をモアへ持たせる。)これだけあれば
           、今日は満腹になるだろ。(笑う。)さぁ、帰った帰
           った。早く帰って、婆さんにも食わせてやんな!(
           モアの背中を押して、扉から出す。)」

         扉の外、呆然と袋の中のパンを見るモア。
         ゆっくり下手へ去る。
         パン屋の奥から、ゆっくりザック登場。

  パン屋の主人「(ザックを見て。)ザック坊ちゃん、これでいいん
           ですかい?」
  ザック「ああ、ありがとう。」
  パン屋の主人「しかしまぁ・・・どうしてまた、あの子どもが金を返
           しに来るって・・・それに・・・(カウンターの下から、
           金貨の入った重そうな袋を取り出す。)ホントにこ
           んな大金、貰っていいんですかい?うちはあの子
           にやったパン代さえ払って貰えりゃあ十分なんで
           すけど・・・いや・・・まぁ・・・頂けるって言うんなら、
           有り難く頂戴しますがね・・・へっへっへ・・・」
  ザック「金が足りないなら、いつでも言ってくれ。その変わりあの
      子が腹を空かせてやって来た時には、存分にパンを与え
      てやって欲しい・・・」
  パン屋の主人「はいはい、分かりましたよ。」
  ザック「頼んだぞ。」
  パン屋の主人「へぇ!」

         ザック残してカーテン閉まる。
         音楽流れ、ザック歌う。

         “何て不公平な世の中だ・・・
         金なんてあってもなくても
         同じ人の筈・・・
         金があるから偉い訳でない
         金がないから見下げるのか・・・
         そんなことは有り得ない・・・
         みんな同じ人間だ・・・
         生きる為にただひたすらに
         自分の足元のその道を・・・
         一歩ずつ歩いているだけ・・・”

         ザック、上手へ去る。

    ――――― 第 3 場 ―――――

         カーテン開く。と、粗末な小屋の中。
         モアの祖母(ドーン)、食事の支度を
         しているように。

  ドーン「(鍋をかき混ぜながら。)モアは一体どこへ行ったんだろ
     う。また仕事を探してあちこち回っているのかねぇ・・・。私
     がもう少し若ければ・・・うんと働いて・・・あの子に苦労をか
     けずに済んだのに・・・(スープをお椀に入れながら。)今日
     も、塩をひとつまみ入れただけの野草のスープだけなんて
     ・・・育ち盛りだと言うのに・・・」

         そこへ下手よりモア、走り登場。

  モア「祖母ちゃーん!!祖母ちゃーん!!」
  ドーン「(モアを認める。)まぁまぁモア・・・どうしたんだい?そん
      なに慌てて・・・」
  モア「祖母ちゃん!!見てくれよ、これ!!(腕に抱かえていた
     紙袋をドーンの方へ差し出す。)」
  ドーン「何だい・・・?(紙袋の中を覗く。驚いて。)まぁ・・・!!こ
      んなに沢山のパン・・・!!一体どうしたんだい・・・!?」
  モア「あたいもよく分かんないんだけど、パン屋のおっちゃんが
     持ってっていいって言ってくれたんだ!!お陰で今日は祖
     母ちゃんに、腹一杯食べさせてやれるよ!!」
  ドーン「全く、どうしてそんな・・・」
  モア「きっと、こんななりしたあたいのこと、可哀想に思ったんじ
     ゃねぇか?すっごく気前良くって、明日も明後日も、腹が減
     ったらいつでも来ていいって!!」
  ドーン「本当かい・・・?」
  モア「うん!!きっと神様のお恵みだぜ、祖母ちゃん!!あたい
     達、ずっと頑張ってきたから!!」
  ドーン「本当だねぇ・・・。ああ、有り難い有り難い・・・何て世の中
      には親切なお方がいらっしゃるんだろうねぇ・・・。」
  モア「さぁ、祖母ちゃん!!早く座って一杯食べなよ!!こんな
     にあるんだ!!祖母ちゃんが食べやすい、白いフカフカの
     パンも一杯入れてくれたんだぜ!!」
  ドーン「私はもう年だから、少しでいいんだよ・・・その変わり、モ
      アが沢山お食べ・・・お腹一杯何かが食べられるなんて、
      いつ以来だろ・・・う・・・(胸を押さえて座り込む。)」
  モア「うん!!・・・(苦しそうなドーンの様子に気付いて。)・・・
     祖母ちゃん・・・?祖母ちゃん・・・(駆け寄る。)祖母ちゃん!
     !どうしたんだよ!!祖母ちゃん!!祖母ちゃん!!(ド
     ーンを揺する。動かないドーンの様子に呆然と。)祖母ちゃ
     ん・・・大変だ・・・誰か・・・誰かーっ!!祖母ちゃん、しっか
     りしてくれよ!!」

         その時、下手よりゆっくりザック登場。

  ザック「ごめんください・・・。ノックをしても返事がないので黙って
      入って来てしまいました・・・。こちらに子どもが・・・」
  モア「(振り返り、ザックを認める。泣き声で。)あ・・・兄ちゃん!!
     」
  ザック「(微笑む。)矢っ張りここだったのか・・・。随分捜して・・・
      (モアの様子に。)・・・どうした・・・?」
  モア「兄ちゃん・・・祖母ちゃんが・・・祖母ちゃんが!!」
  ザック「え・・・?(モアの横に倒れているドーンを認める。)お婆
      さん!!(ドーンに駆け寄る。)どうしたんだ!?(脈を見
      たり、胸の鼓動を確かめたりする。)」
  モア「分からないよ・・・急に胸を押さえて倒れたんだ・・・兄ちゃ
     ん・・・祖母ちゃん大丈夫だよね・・・!?ね!?ね!?祖母
     ちゃん死なないよね!!あたいのたった一人の祖母ちゃん
     なんだ・・・!!」
  ザック「よし!!まだ大丈夫だ!!(ドーンを抱き上げる。)この
      まま病院までそっと運ぶぞ!!」
  モア「え・・・?」
  ザック「おまえもついて来い!!」
  モア「兄ちゃん・・・う・・・うん・・・!!」

         ドーンを抱き上げたザック、心配そうなモア、
         急いで下手へ去る。
         暗転。カーテン閉まる。

    ――――― 第 4 場 ―――――

         カーテン前。
         下手スポットにパン屋の主人、
         浮かび上がる。電話しているように。

  パン屋の主人「ああ、俺だ・・・。ちょっとばかし金になりそうな話
           しがあるんだが・・・乗らねぇか?ああ・・・ああ・・・
           そうさ・・・なぁんもヤバイことじゃねぇんだ。向こう
           から勝手に転がり込んだ上手い話しさ・・・。ああ
           ・・・ああ・・・分かった。それじゃあ、おまえに頼み
           たい役どころがあるんだ・・・。ああ・・・なぁに、簡
           単なことさ・・・へっへっへ・・・ああ・・・ああ・・・じゃ
           あ、また連絡する・・・。(電話を切る。)」

         パン屋の主人、フェード・アウト。
         入れ代わるように上手スポット。
         (ソファー)ベッドに横になっているドーン。
         横に白衣のザック、ドーンの診察をして
         いるよう。
         ベッドの横に、医者仲間(マービン)立つ。

  マービン「おまえ、またこんな金になりそうにない婆さんを運び
        込んで、一体どうするつもりなんだ?」
  ザック「マービン・・・」
  マービン「ちゃんと診察料は取れるんだろうな。」
  ザック「おまえは金になるから人の命を助けるのか・・・?金にな
      らない者は助けるに値しない・・・とでも言うつもりか・・・。」

         ザック、診察を終え、立ち上がる。
         ザック、マービン、一寸前へ。
         (ドーン、フェード・アウト。)

  マービン「・・・違うのか?じゃあおまえは何の為に医者になった
        んだ。」
  ザック「何の為・・・?」
  マービン「そうだなぁ・・・生まれつき大病院の院長先生の跡取り
        息子として、この世に生を受け生きてきたおまえには、
        屹度、医者になる意味など、どうでも良かったんだろう
        な。」
  ザック「マービン・・・」
  マービン「おまえは、この病院をどうするつもりなんだ。運営のこ
        とは二の次に、慈善事業をしていくつもりか?」
  ザック「慈善事業・・・?」
  マービン「そうだろ?代々続いたこの病院は、いずれおまえが
        継ぐんじゃないのか?それを他の仲間や利益も考え
        ずに、慈善事業で運営が成り立つと、本当に思ってい
        るのか・・・?」
  ザック「それは・・・」
  マービン「学生時代からのライバルとして・・・そして親友として
        おまえに忠告しといてやろう。世の中、義理人情だけ
        で生きていけるなら、そんな楽な話しはないってこと
        だ。そんなものに流されて、目の前の大切な事柄を見
        落とせば、後で泣くのは自分自身なんだぞ。」

         ザック残して、マービン、フェード・アウト。
         中央スポットにモア、浮かび上がる。
         ザック、モアの側へ。

  モア「(ザックを認め、慌てて近寄る。)兄ちゃん・・・!!祖母ち
     ゃんは・・・」
  ザック「大丈夫、軽い心臓発作だ。暫く入院して養生すれば、ま
      た直ぐに良くなるさ。」
  モア「本当!?」
  ザック「ああ・・・」
  モア「良かった・・・」
  ザック「今まで、随分無理をしてきたんだろう。栄養失調気味で、
      昔から心臓が悪かったようだし、長年の無理がたたって
      心臓に負担をかけたんだな・・・。」
  モア「祖母ちゃん・・・あたいが中々お金を稼いでこないから・・・
     毎日、食材を探しに、この寒い中・・・裏山へ野草を摘みに
     行ってたんだ・・・。」
  ザック「そうか・・・」
  モア「もっと、あたいらみたいな子どもでも出来る仕事があった
     ら・・・そしたらもっと働いて、美味しいもん沢山食べさせて
     やれるのに・・・。昨日、折角パンを貰って来たのに倒れち
     まって・・・あ・・・そう言やぁ、兄ちゃん・・・パン屋のおっちゃ
     んが、あたいに好きなだけパンを持ってっていいって言っ
     たんだ・・・。変だろ・・・?金もないのにだぜ!おまけに、明
     日も明後日も・・・ずっとくれるって言うんだ・・・。あたい・・・
     ずっと今まで・・・盗みをやっては追いかけられて・・・見つ
     かって・・・捕まって・・・打たれて・・・そんな生活してきたか
     ら、何だか人に親切にしてもらうのって・・・慣れてなくって
     ・・・お礼、言いそびれちまったよ・・・。今度会ったら言わな
     くっちゃ・・・」
  ザック「・・・良かったじゃないか。(微笑む。)」
  モア「(ザックを見て。)・・・うん・・・」
  ザック「それより、どうだ?お婆さんが退院するまで、家で暮らさ
      ないか?」
  モア「・・・え・・・?」
  ザック「自分家に帰ったって、誰もいないんだろ?家からだと、婆
      さんの見舞いにも行きやすいし・・・。食事にも困らないぞ。
      」
  モア「・・・兄ちゃん・・・でも・・・あたい・・・」
  ザック「子どものくせに、遠慮なんかするなよ。(微笑む。)」
  モア「・・・本当に・・・行っていいの・・・?」
  ザック「ああ・・・。それに言わなかったっけ?母は昔、教師をや
      ってたんだ。子どもが好きなんだよ。今はもう、俺も姉も大
      人になってしまって、手を掛ける相手がいなくなったから、
      淋しがってたんだ。丁度いい、母の話し相手になってやっ
      てくれ。それがおまえの仕事だ。それと引き換えに、寝食
      の場を提供する。婆さんにも会い放題!どうだ?悪い話
      しじゃないだろう?」
  モア「兄ちゃん!!(嬉しそうに。)」

         ザック残して、モア、フェード・アウト。
         音楽流れ、ザック歌う。

         “俺は今まで少しの
         疑問だけで何もかも
         見て見ぬ振りをしてきた・・・
         そう言われても仕方ない
         たとえどんな風に世界が
         間違って進んでいても
         それが自分の身に直接
         関わりがないのなら
         知らぬ顔を決め込むだけ・・・
      
         やっと分かった今までの
         疑問の答えが・・・
         心の中の正義が只管に
         間違いを否定する
         そうだ
         それこそ・・・
         俺がずっと探して来た道・・・”

  ザック「親がひいてくれたレールじゃ駄目なんだ・・・。自分で苦
      労してひいたレールでないと・・・。」

         暗転。









      

  ――――― “Thank you!リトルレディ”
                          3へつづく ―――――












 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    






 
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“Thank you!リトルレディ” ―全8場―

2013年02月11日 21時07分44秒 | 未発表脚本


   いつもは、タイトルは作品が書き上がってから決めるのが
  常である私なのですが、これは、そのタイトルが気に入って
  先にタイトルだけ決まっていた未完成作品(?・・・作品と言
  えるのかどうか・・・^^;)に、中身を書いて行きたいと思い、
  今回の掲載作品にしよう・・・と、決めさせて頂きました(^-^)

  なんとなくの構想は、このタイトルを考えた頃に決まっていた
  ものを使用していますが、人物達の細かな設定や背景・・・
  言葉使いなどは、今、新たに考えながら書き進めていくもの
  であります♪

  それではまた、ご覧下さい♥


                                どら。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



    〈 主な登場人物 〉


    ザック・ハミエル  ・・・  本編の主人公。お金持ちの息子。

    モア  ・・・  お祖母さんと2人暮らしの少女。

    エレナ  ・・・  ザックの母親。

    アナベラ  ・・・  ザックの姉。

    パン屋の主人

    お祖母さん  ・・・  モアの祖母。


    その他。



 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪


    ――――― 第 1 場 ―――――

         音楽流れ、幕が上がる。と、公園(絵紗前。)
         の風景。
         中央に一つのベンチ。
         下手より、コートに帽子を被ったザック、
         ゆっくり登場。

  ザック「ふぁあ・・・(伸びをする。)・・・流石に2日続きの夜勤明け
      はキツイなぁ・・・だけど、不思議だ・・・」

         ザック、歌う。

         “この心地良い筈の疲労感・・・
         今日も誰かの役に立てただろうか
         それともそれは単なる驕りだろうか・・・
         自己満足かも知れないなら
         そんな無意味なことはない・・・
         そんな風にふと感じ
         心地良い疲れが
         肩に重く伸し掛る・・・”

         ザック、ベンチへ腰を下ろし、帽子を顔に
         乗せ、眠ったよう。
         一時置いて、どこからか声が聞こえる。

  声「泥棒ーっ!!誰が、その子どもを捕まえてくれーっ!!」

         そこへ上手より、一人の汚れた身形の
         子ども(モア。)後ろを気にしながら走り
         登場。

  モア「へへーんだ!!誰が捕まるもんか!!いーっ!!(舌を
     出す。)」

         モア、ザックの前を通り過ぎようとした時、
         寝ている様子のザック、足を差し出す。
         モア、その足に引っ掛かって転ぶ。

  モア「わあっ!!何すんだよ、おっさん!!いってぇ・・・!!」

  声「どこに行った!?どこだーっ!!」

  モア「(上手方を見て。)やっべぇ・・・!!(慌てて立ち上がり、
     下手方へ行こうとする。)」
  ザック「(モアの腕を掴む。)」
  モア「わ・・・!!離せよっ!!何すんだよ!!」
  ザック「(ベンチの後ろを指差す。)」
  モア「・・・え?」
  ザック「(顎でベンチの後ろへ行くように指し示す。)」

  声「どこ行った!?こっちか!?」

  モア「あ・・・(その声に慌ててザックに指示された通り、ベンチの
     後ろへ身を隠す。)」

         ザック、再び帽子を顔に乗せ、眠ったように。
         そこへ上手より2人の商売人風の男、息を
         切らせながら走り登場。

  男1「待てーっ!!(回りを見回して。)どこ行ったんだ!!」
  男2「全く、逃げ足の早い餓鬼だぜ!!(回りを見回す。)」
  男1「(下手方を見て。)あっちの方も捜してみようぜ!!」
  男1「ああ!!」

         2人の男、下手へ走り去る。

  ザック「(帽子を取り、下手を見る。男達が走り去ったのを見計ら
      って、ベンチの背をノックする。)おい・・・もう出て来てもい
      いぞ・・・」
  モア「(ゆっくりベンチの後ろから顔を出す。)ホント・・・?」
  ザック「全く・・・人の心地良い眠りを妨げやがって・・・」
  モア「(ベンチの後ろから出て来る。)はぁー、助かったぜ。あん
     な奴ら、チョロいったらありゃしない。(笑う。)さてと、これで
     パンでも買って・・・(上手方へ行きかける。)」
  ザック「(モアの服を掴む。)」
  モア「何すんだよ!!」
  ザック「ばーか!!何がチョロいんだ!!人様の物を盗んどい
      て、助かるも何もないだろ!!(モアの頭を小突く。)」
  モア「いてっ!!いいだろ!!あたいが何しようが!!」
  ザック「・・・あたい・・・?おまえ、今“あたい”って言ったのかよ・・・
      ?」
  モア「あたいって言っちゃあ悪いかよ!!何だよ!!変なおっさ
     ん・・・」
  ザック「馬鹿野郎!!女の子がそんななりして泥棒なんて、どう
      なってんだ世の中は!!」
  モア「女だろうが男だろうが関係ないね!!そんなこと!!世
     の中、金のある奴らだけが温々と暮らせて、腹一杯美味し
     いもんが食えるなんて不公平だ!!だから、あたいは金の
     ある奴らから、こうやって分け前をちょっとばかし拝借して、
     祖母ちゃんにパンを買ってやるんだ!!それのどこが悪い
     んだよ、ばーか!!」
  ザック「おまえなぁ・・・その口の聞き方、どうにかならないのか?
      」
  モア「どこが悪いんだよ!!仕方ねぇだろ!!あたいは生まれ
     てから一度だって、学校なんてもんとは無縁の生活をして
     来たんだから!!」
  ザック「(モアを頭の天辺からつま先まで見て。)それにその格好
      ・・・何か臭くないか?おまえ・・・ちゃんと風呂入ってんの
      か?」
  モア「ふろ・・・?何だ?ふろって・・・」
  ザック「シャワーだよ、シャワー!!シャワー位、浴びたことある
      だろ!?」
  モア「浴びる・・・?ああ、川で水浴びしたことなら、いくらだって
     あらぁ!!(笑う。)」
  ザック「そうじゃなくて・・・(溜め息を吐く。)おまえ・・・うち来るか
      ・・・?」
  モア「・・・え・・・?(怪しむような目でザックを見る。)」
  ザック「そんな目で見なくても・・・怪しむようなことは何もないさ
      ・・・。腹減ってんだろ?」
  モア「(お腹が鳴る。“グー”)・・・(お腹を押さえる。)あ・・・」
  ザック「パン位ご馳走してやるよ。」
  モア「・・・本当・・・?」
  ザック「ああ・・・。それにお客が来ると母や姉も喜ぶんだ。」
  モア「母ちゃんと・・・姉ちゃんがいるの・・・?」
  ザック「ああ・・・嫁さんじゃなくて悪いけど・・・。」
  モア「・・・おっちゃんの家に・・・」
  ザック「あのなぁ・・・俺はまだ若いんだ!おまえに“おじさん”呼
      ばわりされるような年じゃ・・・まぁいいか・・・せめて“兄ち
      ゃん”にしてくれ。」
  モア「・・・うん、了解兄ちゃん!で・・・?兄ちゃん家って・・・」
  ザック「直ぐそこだ。だがその前に、先ず・・・いいか?世の中盗
      みなんてもんは絶対にやってはいけないことなんだ。そん
      なことをするのは、人間として恥ずかしいことなんだ。」

         音楽流れ、ザック歌う。

         “人として
         やってはいけないことがある
         人だから
         やらなきゃいけないこともある
         間違いが
         悪い訳じゃないんだ だけど
         間違いに
         気付けば直ぐに正すこと
         その気持ちがあれば
         ただそれだけで
         未来はきっと明るく照らされた
         正義の道!”         

  ザック「悪いことをやってしまったら仕方ない。でもそれに気付き
      、罪を認め正しい行いでやり直すことが、本当に正しい人
      間のすることなんだ。」
  モア「・・・うん・・・」
  ザック「だからその盗んだ物を返しに行って、ちゃんと謝るんだ
      “すみませんでした”って。そしたら腹一杯食べさせてや
      るよ。」
  モア「・・・タダで・・・?」
  ザック「ああ・・・」
  モア「あたい・・・何もしなくていいのか・・・?」
  ザック「何するんだよ・・・」
  モア「煙突掃除とか・・・靴磨きとか・・・郵便配達とか・・・ベビー
     シッターとか・・・花売りとか・・・」
  ザック「何だよ、それ・・・(笑う。)そんなことしなくたって、パン位
      ご馳走してやるよ。こう見えて、俺だってちゃんと働いて
      るんだ。子ども一人のパン代分位、給料貰ってるんだよ。」
  モア「へぇ・・・」
  ザック「何が“へぇ”だ。」
  モア「・・・あたいも・・・今まで沢山働いて来たんだ・・・。けど、貰
     える金なんて、ほんの僅かで・・・祖母ちゃんと2人、食べて
     くには盗みだって・・・あ・・・そうだ、祖母ちゃんの分・・・」
  ザック「祖母ちゃんの分も付けてやる。」
  モア「本当!?」
  ザック「ああ・・・」
  モア「やった!!あたい、昨日は仕事なくて、祖母ちゃんに何も
     食べさせてやれなかったんだ!!だから、この金・・・(手に
     握っていた金を見る。)許してくれるかな・・・パン屋のおっち
     ゃん・・・」
  ザック「ああ・・・。一緒に行ってやるよ、そのパン屋に・・・」
  モア「(嬉しそうにザックを見る。)ありがとう、兄ちゃん!!」
  ザック「だからもう盗みなんてするな。仕事がなくて、食べる物が
      買えないなら、俺の家へ来い。」
  モア「兄ちゃん家・・・?」
  ザック「ああ・・・ここが俺の家だ・・・」

         絵紗が上がる。と、大きな屋敷の門の前。

  モア「(呆然と。)ここが・・・兄ちゃんの・・・?」
  ザック「俺の家・・・と言うより、俺の親の家だな。(笑う。)」
  モア「・・・何でぇ・・・金持ちじゃねぇか・・・兄ちゃんが稼いで来よ
     うが来まいが・・・寝るのも食べるのも・・・苦労しないんじゃ
     ねぇか!!あたいは金持ちなんか大っ嫌いなんだ!!」

         モア、上手へ走り去る。

  ザック「あ・・・おい!!」

         ザック、呆然と上手を見詰める。
         そこへ下手より、車椅子に乗ったザックの
         母(エレナ。)、その車椅子を押しながら
         ザックの姉(アナベラ。)ゆっくり登場。

  アナベラ「あら?ザックじゃなくて・・・?」
  ザック「(振り返り、2人を認める。)母さん・・・」
  エレナ「おかえりなさい。(微笑む。)」
  ザック「ただいま・・・。お散歩ですか?」
  エレナ「ええ・・・。いいお天気だったから、少し外の空気を吸い
      に・・・」
  ザック「あまり長い時間、冷気に触れては体に良くありませんよ、
      母さん・・・。」
  エレナ「ザックありがとう、心配してくれて。それよりどうしたの?
      こんなところで呆っと・・・。早く中へ入らないと、あなたの
      方こそ風邪をひいてしまうわよ・・・。」
  アナベラ「また何か面白いものでも見つけたのかしら?」
  ザック「姉さん・・・いえ・・・別に・・・」
  エレナ「あなたは昔から、好奇心旺盛だったから・・・。遊びに出
      掛けて何か珍しい物を見つけると、暗くなっても帰って来
      なくて・・・よく召使達が大騒ぎして捜し回っていたわね。
      (笑う。)」
  アナベラ「そうそう・・・(笑う。)」
  ザック「それは・・・(照れ臭そうに。)」
  エレナ「それよりさっき、お父様の病院から連絡があって、今夜
      の夜勤の人手が足りないとかで、あなたに来てもらいた
      いそうよ。帰ったばかりで申し訳ないけれどって・・・。」
  ザック「はい、分かりました。それではこのまま・・・」
  エレナ「そんなに急がなくても、シャワーでも浴びて、少し休んで
      行くといいわ。軽いお食事でも用意させるから・・・」
  ザック「いえ、食事は病院で済ませます。」
  アナベラ「シャワーは?服、汚れてるわよ。またどこかで寝て来
        たのね?(笑う。)」
  ザック「あ・・・(服を払う。)」
  エレナ「兎に角、一度中へ入ってから出かけても、遅くはないわ
      ね。」
  ザック「・・・はい・・・」

         エレナ、アナベラ、門を開けて中へ入る。
         ザック、上手を気にしながら2人に続く。
         カーテン閉まる。

    ――――― 第 2 場 ――――― A

         カーテン前。
         音楽流れ、上手よりモア、ゆっくり登場。
         歌う。

         “何で金持ちばかりが
         得する世の中・・・
         ずるいよ神様 あたい達
         貧乏人も少しくらい
         夢を見たっていいじゃないか
         煌く夜空に楽しい思い
         瞼に浮かぶ幸せな暮らし
         優しい家族に囲まれて
         笑い声が木霊する
         だけど金がないとそんなのただの・・・
         ただの・・・幻想だ・・・”

         そこへ下手より、仲良さそうに微笑み、
         話しながら母親と娘登場。
         モア、2人を認め見詰める。

  モア「あたいだって・・・祖母ちゃんがいるんだ・・・淋しいもんか
     ・・・」

         母親と娘、自分達を見ているモアに気付き、
         怪訝な面持ちでヒソヒソ話す。

  モア「(母娘のヒソヒソ話しに気付き。)なんでぇ!!何か文句あ
     んのかよ!!」
  娘「キャーッ!!」
  母「まぁ、何て子かしら・・・!!(娘を庇うように。)早く行きましょ
    う!!」
  娘「ええ、ママ!!」
  母「(モアの横を通り過ぎる間に。)フン!!汚らしい子ね!!」
  
         母娘、上手へ去る。

  モア「・・・煩いんだよ!!馬鹿野郎!!汚らしくて悪かったな!
     !・・・(自分のなりを見て。)どこが汚いんだ・・・そりゃ・・・
     ちょっとばかし汚れてっけど・・・(自分の臭いを嗅ぐ。)・・・
     シャワー・・・って何だよ・・・(手を広げ、握っていた金を見る
     。)・・・先ず・・・これを返したら・・・風呂に入れてくれんのか
     な・・・兄ちゃん・・・」         









   ――――― “Thank you!リトルレディ”
                        2へつづく ―――――











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