老婆「それが何かな・・・?今日はもう店じまいして、これから帰
るところなんじゃ・・・。占いならまた今度・・・」
エドワード「いえ、占いではなく、少し聞きしたいことが・・・」
老婆「聞きたいこと・・・?構わんが、手短にな・・・。」
エドワード「はい・・・」
老婆「そこのベンチへ腰を下ろしても構わんか・・・?年寄りに立
ち話しはキツイのでな・・・。」
エドワード「ええ、勿論!」
老婆、エドワードに手を借りながら、ゆっくり
中央ベンチへ腰を下ろす。
老婆「で・・・?聞きたいこと・・・と言うのはなんじゃ?」
エドワード「・・・“命の花”・・・と言うのはご存知ですか・・・?」
老婆「命の花・・・?」
エドワード「死んだ人間が生き返ると言う、不思議な花のことで
す。もし知ってたら、詳しく教えて下さい!!そうやっ
て生き返った人間はどうなるのか・・・!!その人間
を再び・・・安らかに眠らせる為には・・・どうすればい
いのか・・・」
老婆「・・・命の花は、この世の秘薬じゃ・・・」
エドワード「矢張り、あなたがマークにその花を・・・?」
老婆「どうやら奴は・・・花を咲かせたようじゃな。」
エドワード「・・・そうしてローラは再び、我々の前へ戻って来たの
です・・・。」
老婆「なら、なんの問題があると言うのじゃ・・・。そなたたちの愛
しい者が生き返ったのじゃろう・・・?」
エドワード「見た目は確かに彼女だ・・・けど・・・」
老婆「命の花で生き返った者は・・・見た目は生きた時そのまま
に見えるが・・・心は・・・」
エドワード「・・・心は・・・?」
老婆「一度死んだその人間は・・・死んだ心を半分持ったまま生
き返っておる・・・」
エドワード「・・・死んだ・・・心・・・」
老婆「生き返らせたことを・・・後悔しているのか・・・?」
エドワード「・・・後悔・・・と言うのではないのです・・・。実際に生
きた彼女を目の前にして・・・二度と目にすることが
出来ないと思った、その笑顔に接すると・・・たとえそ
れが神に背いて得たものだと分かってなお、心のど
こかでよかったと・・・そう感じるのですから・・・」
老婆「たとえ・・・彼女が毒を吐いてもか・・・?」
エドワード「・・・毒・・・?」
老婆「早く他の命を差し出せばよいのじゃ・・・。変わりの命を差
し出せば、彼女の心全部が生きた人間の心となり・・・元へ
と戻るであろう・・・。」
エドワード「生きた人間の心・・・でも・・・でも、そんなことは出来
る訳がない・・・!!たとえ彼女に生きて欲しいと・・・
そう願ったとしても・・・彼女の変わりに誰か他の者の
命を差し出すなど・・・それこそ、それを知った彼女は
どう思うでしょう・・・」
老婆「おまえは勘違いをしておるようじゃから、一つ忠告してや
ろう・・・。彼女の変わりに差し出す命・・・その命におまえは
“自分”・・・と言う選択肢は頭にないようじゃの・・・。」
エドワード「・・・え・・・?」
老婆「自分以外の誰かを思い描くから、罪の意識に苛まれるの
じゃ。彼女の変わりに自分が身代わりになる・・・と考えれ
ばどうじゃ?彼女の為になる善意の行いととれんかの・・・
?」
エドワード「善意・・・ローラの変わりに・・・この俺が・・・」
エドワード、呆然と立ち尽くす。
デビルの声「そうすれば、おまえが子どもの頃から疑問に思って
いた答えも・・・自然と分かることになるぜ!!(笑う。
)」
デビルの笑い声でフェード・アウト。
(カーテン閉まる。)
――――― 第 9 場 ―――――
カーテン前。音楽流れる。
下手よりマーク、ゆっくり登場。歌う。
“たとえ間違いだと
誰もが否定しても・・・
たとえそれが人の道に
逸れることかも知れないとしても・・・
何度同じことが繰り返されようと
何度でも僕は愛しい者を守る為・・・
この心 悪魔に差し出すだろう・・・
再び同じ世界に立ち
進むことが出来るなら・・・
きっとどんな悪にも手を染めるだろう・・・
その笑顔を見る為ならば
僕は非情になろう・・・”
カーテン開く。と、人々が行き交う街の
様子。
一時置いて、上手よりナナ登場。
ナナ「(回りを見回しながら。)・・・えっと・・・(マークを認め。)あ
・・・!マークお兄さん!(マークに駆け寄る。)」
マーク「(振り返りナナを認める。)やあ・・・ナナ・・・」
ナナ「どうしたの?こんなところで・・・。お兄ちゃんと一緒なの?
昨日、お兄ちゃんから私に何か渡すものがあるって、電話
があったの!ねぇ、マークお兄さん!渡すものって何だと
思う?この間、作ってくれた紙飛行機に関係があるんです
って!何かなぁ・・・でもね、その時のお兄ちゃんの電話の
声が・・・いつもと違って何だかガラガラしてたのよ。」
マーク「あ・・・ああ、それはあいつ、風邪気味だったから・・・その
せいだよ・・・」
ナナ「そうなの?大丈夫なのかしら・・・」
マーク「今・・・署内で風邪が流行ってるから・・・」
ナナ「ふうん・・・それでマークお兄さんも、声がガラガラしてるの
ね。」
マーク「え・・・あ・・・ああ、そうなんだ・・・」
ナナ「風邪、早く良くなるといいわね。(微笑む。)」
マーク「・・・あ・・・ああ・・・」
ナナ「(回りを見回して。)それにしても、お兄ちゃん遅いわね・・・
」
マーク「・・・そうだ・・・エドから伝言があったんだ・・・。少し約束
の時間に遅れそうだから・・・暫く僕と時間を潰してて欲し
い・・・って・・・」
ナナ「え・・・?」
マーク「そう言うことだから・・・エドが来るまで僕と待とう・・・」
ナナ「うん!あ・・・でもマークお兄さん、お風邪をひいてるんでし
ょ・・・」
マーク「・・・え・・・?」
ナナ「こんな外で待ってると、余計お風邪が酷くなるんじゃない
かしら・・・そうだ!私、いい場所知ってるわ!あそこなら温
かくて・・・」
マーク「大丈夫だから・・・!!」
ナナ「・・・マークお兄さん?」
マーク「あ・・・いや・・・大丈夫だからここで・・・」
ナナ「本当に?」
マーク「ああ・・・」
ナナ「そう・・・」
ナナ、下手方に何かを見つけたように
走り寄る。
ナナ「あ・・・!見て見て!!マークお兄さん!!こんな街の真
ん中にほら・・・こんな可愛い小さなお花が・・・(夢中になっ
て、見つけたものを見ている。)綺麗ねぇ・・・」
マーク「・・・僕は・・・」
音楽流れ、マーク歌う。
(後方、雑踏の中にデビルの姿が現れる。)
“たとえ間違いだと
誰もが否定しても・・・”
デビル歌う。
“誰も否定などしないさ・・・”
マーク歌う。
“たとえそれが人々の道に
逸れることかも知れないとしても・・・”
デビル歌う。
“誰も気付きはしない・・・”
マーク歌う。
“何度同じことが繰り返されようと
何度でも僕は愛しい者を守る為
この心 悪魔に差し出すだろう・・・”
デビル歌う。
“確かに受け取ってやろう
闇に取り憑かれたその心
悪に塗れた極上の味・・・
さぁその手を染めるがいい!!
赤く深い血の色に!!”
その時、車の走り近付く音。
マーク「悪魔よ!!今、受け取るがいい!!愛しい者の代わり
となるこの命を!!(ナナの背中を両手で押す。)」
ナナ「キャアッ!!(前に倒れる。)」
車の急ブレーキの音。(“キキーッ!!”)
エドの声「ナナ!!」
下手よりエドワード飛び出し、銃を構える。
客席方へ発射する。(“パーン!!”)
人々の叫び声。車のスリップ音、何かに
ぶつかる音。
一瞬の静寂が辺りを包む。
ナナ「お兄ちゃん!!(エドワードに走り寄り、抱き縋り泣く。)」
エドワード「(ナナを抱き寄せる。)大丈夫だ、ナナ・・・(マークを
見据える。)」
呆然と立ち尽くすマーク、スポットに
浮かび上がる。
――――― 第 10 場 ―――――
マーク「(両手を見る。)・・・僕は・・・」
下手スポットに、胡座をかいたデビル
浮かび上がる。
デビル「情けない奴だ・・・」
マーク「僕はなんてことをしたんだ・・・」
デビル「愛しい者の為に、その手を悪に染めることも出来ず・・・
」
マーク「いくら・・・彼女の為だとしても・・・」
デビル「馬鹿な奴め・・・」
マーク「大馬鹿野郎だ・・・」
デビル「せっかく手に入れたチャンスをものにも出来ず・・・」
マーク「あんな花を手に入れた・・・」
デビル「花は終わりだ、もう時間がない・・・」
マーク「3日のうちに・・・なんて無理だ・・・」
デビル「何日あろうが、おまえには出来っこない・・・」
マーク「誰かを・・・」
デビル「愚かな奴め・・・愚かな奴め・・・(木霊する。)」
デビル、フェード・アウト。
マーク「僕は・・・(頭を抱える。)」
フェード・インする。(カーテン前。)
上手よりエドワード、走り登場。
マークを認め駆け寄る。
エドワード「馬鹿野郎!!(思わずマークを殴りつける。)」
マーク「(倒れる。)・・・僕は・・・(項垂れる。)」
エドワード「おまえは、もう少しで取り返しのつかないことをする
ところだったんだぞ!!ナナを・・・ナナをその手にか
けようとしたんだ!!」
マーク「エド・・・すまない・・・どうしてもローラを・・・二度とローラ
を失いたくなかったんだ・・・だから・・・」
エドワード「世の中・・・謝って全てかたがつくなら・・・俺達の仕
事はなりたたない・・・だが・・・何故・・・ローラなんだ
・・・何故彼女は死んだ・・・そして何故再び俺達の目
の前に戻ったんだ・・・何故・・・命の花なんてものを
使って・・・おまえは・・・」
マーク「・・・愛しいローラが・・・再び目を開いて・・・この僕を見て
くれるなら・・・僕はなんだってする・・・そう思ったんだ・・・
命の花を咲かせることで、再び彼女がこの世に舞い降り
ることができるのなら・・・たとえその代償がなんであろう
と・・・僕は・・・」
エドワード「・・・ナナの命と交換するつもりだったのか・・・ローラ
が自分の命と引き換えにしてまで守った、ナナの命
と・・・」
マーク「(ゆっくり頷く。)」
エドワード「・・・そんなにまで・・・どんな形であっても、ローラを再
び蘇らせたいと・・・そんな風に考えたのならば・・・そ
れならば俺を殺せ!!」
マーク「・・・エド・・・」
エドワード「俺が死んでローラが助かるのなら、いくらだってくれ
てやる、こんな命!!それで生きた人間の心を取り
戻し、以前の・・・俺達の知った美しいローラに戻るな
ら、俺は自分自身の命を今直ぐ差し出してやる!!
」
怪し気な音楽流れエドワード、スポット
に浮かび上がる。
デビルの笑い声が響き渡る。
デビルの声「ならば連れて行ってやろう!!おまえがずっと知り
たがっていた死の国へ!!」
エドワード「・・・え・・・?」
――――― 第 11 場 ―――――
カーテン開く。と、黒一色の闇の世界。
中央、設えられた段上にデビル、マントを
靡かせ立つ。歌う。
“今行こう
おまえが知りたがった
死の国へ・・・
あれ程興味をそそられた
現世で見つけた俺の姿・・・
今こそ行ける
願いが叶うその時だ”
デビル、エドワードの側へ。エドワード、
デビルを認める。
エドワード「誰だ・・・!」
デビル「・・・この俺が見えるようだな・・・(ニヤリと微笑む。)」
エドワード「・・・おまえは・・・確か・・・」
後方、シルエットに幼いエドワード、
横に立つデビル、浮かび上がる。
エドワード(シルエット)「死んだらどうなるの・・・あなたは知って
いるの?」
デビル(シルエット)「知りたいか・・・?」
エドワード(シルエット)「うん・・・」
デビル(シルエット)「おまえが自分で確かめればいいんだ・・・」
エドワード(シルエット)「・・・どうやって・・・?」
デビル(シルエット)「・・・死んで・・・死んで・・・(木霊する。)」
後方シルエット、フェード・アウト。
エドワード「あの時の・・・」
デビル「そう!!俺は死への使い、デビルだ!!」
エドワード「・・・デビル・・・?」
――――― “エドワード”5へつづく ―――――
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(どら余談^^;)
書き終わったので、全12場となりました(^_^)
どこからが、現在の私文章か分かりますか・・・?
差がつかないように書き繋げたつもりなのですが・・・
上手く繋がっているでしょうか?(^_^;)
2月24日(日)
明日は新作の録音です(^O^)
初めて歌練習をして挑む録音・・・いつも以上に
いい録音ができますように・・・(>_<)
2月25日(月)
新作録音、無事終了しました(^O^)
とってもメンバーの状態が良く、今までとは比べ物に
ならない、いい録音日となりました(^_^)V
皆、頑張った録音の出来を、是非8月12日、メイシアター
にご覧になりにいらして下さいm(_ _)m