グーグル版で掲載中だった作品が、間もなく終了するので、
またグー版に引っ張って来ました(^^;
ご覧になった方もいらっしゃるかも知れませんが・・・
よければお楽しみ下さい♪
どら。
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〈 主な登場人物 〉
アル・ロー ・・・ 売れっ子カメラマンの青年。
リリ ・・・ 旅一座の娘。
ダンドラ ・・・ アルのライバルカメラマン。
ロバン ・・・ 旅一座長。
マーゴ ・・・ ロバンの妻。
マハル ・・・ 旅一座のスター。
ルダリ ・・・ 旅一座の青年。
レイモン ・・・ アルのオフィスで働く。
アナベル ・・・ アルの秘書。
その他。
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緞帳上がる。(カーテン前。)
――――― 第 1 場 ―――――
レイモン、フーケ上手より登場。落ち着き
無く、誰かを捜しているように、回りを見回
している。
レイモン「先生は一体、どこに行ったんだ!?」
フーケ「(時計を見ながら。)もう開場まで10分もないぜ!」
下手より秘書アナベル、登場。
レイモン「あ!アナベル!先生はどこ行ったんだ!?(慌てて
。)」
アナベル「あら・・・?さっきまでここにいたけど・・・」
レイモン「初日だってのに、先生がいなけりゃ話しにならないぜ
!」
フーケ「(上手方を見て。)あっ、先生だ!!」
その時、上手より気怠そうにアル、登場。
続いてアルを追うように、助手ロベール
登場。
レイモン「先生!もう直ぐ開場だって言うのに、どこ行ってたん
ですか!?」
アル「(面倒臭そうに。)ああ分かってる・・・。そんなに慌てるな
・・・。」
フーケ「そんなこと言ったって・・・」
アナベル「先生、もう間もなく市長がお見えになる頃ですけど・・・
」
アル「レイモン!俺の代わりに市長を迎えに行ってくれ・・・」
レイモン「はい!(足早に去る。)」
アル「全く、何てことだ!今回は1枚もまともな作品がないって
のに!!」
ロベール「そんなこと言ったって、スポンサーさんたっての要望
での開催だから、仕方ないじゃないですか・・・。」
アル「あの糞親父・・・俺も人間なんだ!!撮る写真、撮る写真、
ベストショットな訳がない!!」
フーケ「本当ですよね・・・。もう次の個展の開催日まで、決まっ
てるんですからね。」
アル「何を見せるんだ、一体!!・・・頭が痛くなって来た・・・
俺は雲隠れする!(出て行こうとする。)」
フーケ、ロベール、アルを引き止める。
ロベール「先生!そんな・・・困ります!!」
アナベル「先生!開場の時間です!」
アル、観念したような面持ちで、フーケ
ロベールに引っ張られるように去る。
――――― 第 2 場 ―――――
カーテン開く。
個展会場。静かな音楽流れる。
(大勢の人の割に、静寂の会場。)
レイモンに引率されて、市長とスポンサー
話しながら登場。
俄に客達が騒ぐ。(市長の来場に驚いた
よう。)
市長「いやぁ全く・・・いつもながら大盛況で結構結構。」
スポンサー「お陰様で。レイモン、アルはどこにいるのかね?」
レイモン「はい、見て参ります。(捜す為に2人から離れる。)」
市長「先ずはアルの傑作を見せてもらうとしよう。」
市長、スポンサー、写真を見て歩く。
アル、登場。客達に愛想を振りまきながら、
市長に近寄って行く。
アル「(和やかに。)市長、本日はようこそお出で下さいました。
」
市長「おお、アル!いつもながら君の作品は素晴らしいな。今
日は3枚程貰って行くとしよう。君のお勧めを押さえてお
いてくれたまえ。」
アル「いつもありがとうございます。(後ろのロベールに耳打ち
する。)」
ロベール「はい。市長、こちらへどうぞ。」
市長「うむ・・・。」
市長、ロベール、写真の方へ行く。
スポンサー「次回の作品の準備はどうだね?」
アル「いえ・・・今はまだそれ程・・・。暫く旅にでも出てみようか
と・・・」
スポンサー「おお、それはいいアイデアだ。また違った作風を
見ることが出来るのを、楽しみにしているよ。頑張
って来たまえ。」
アル「はぁ・・・」
スポンサー離れて去る。
レイモン、フーケ、アルに近寄る。
(3人、一寸脇に寄る。)
レイモン「今回もすごい盛況ですね!(嬉しそうに。)」
フーケ「まともな作品は1枚もないと言ってた割にはね。」
アル「何が盛況なものか。皆ここに来てる連中は、写真の何
たるかを知りもしない馬鹿ばっかりだ!」
フーケ「先生!お客さんに聞こえますよ!」
アル「俺はもっと本物の写真を撮りたいんだ!こんな虚栄だ
らけの写真なんかでなく、俺自身が心から感動出来る
ような凄い奴を・・・」
レイモン「先生・・・」
ダンドラ、助手のミシェルを伴って登場。
ダンドラ、少し写真の方へ目を遣るが、
写真には興味なさそうに回りを見回す。
フーケ「(2人に気付いて。)先生!ダンドラと助手ですよ!」
レイモン「本当だ!何しに来たんだ?」
フーケ「決まってるさ!先生の偵察に!」
アル「今回の作品を偵察したところで、あいつには何の役に
も立たないさ・・・。」
ダンドラ、アルに気付いて近付く。
ダンドラ「やぁ、アル!相変わらず賑わってるな、君の個展は。」
アル「お陰様で・・・。おまえはどうなんだよ。」
ダンドラ「俺はおまえみたいに自分の作品を安売りしないんだ。
」
フーケ「お客が入らない個展はキツイよな。(笑う。)」
ミシェル「なんだと!?(突っ掛るように。)」
アル「フーケ!!(咎めるように。)」
ダンドラ「ミシェル!!おまえも止めるんだ。」
ミシェル「すみません・・・」
ダンドラ「だが、アル・・・おまえ本当に最近、写真の大安売りの
感があるぞ。おまえの作品は素晴らしい・・・それは誰
よりも、おまえのライバルであるこの俺が、よく知って
いる。スポンサーのご機嫌伺いをしながら、そんなもの
に縛られて・・・自分の作風を見失っているんじゃない
のか・・・?俺は昔のおまえの作品が好きだったぜ。こ
いつこそが俺の生涯、ただ一人のライバルだと思わせ
るような、本物の写真を撮っていた・・・。(ミシェルに。)
ミシェル、帰ろう。」
ダンドラ、ミシェルと共に出て行こうとする。
アル「ダンドラ!(呼び止める。)」
ダンドラ「(振り向いて。)何だ?」
アル「ありがとう・・・」
ダンドラ「よせよ、気持ち悪い・・・!おまえに礼なんか言われる
筋合いはないぜ。俺は本当のことを言ったまでさ。ライ
バルはいた方が面白いからな。じゃあな。」
ダンドラ、手を上げてミシェルと一緒に去る。
アル、その方を見詰めて、少しの間、考えて
いるよう。レイモン達、アルの様子を窺って
いる。
アル「レイモン!暫く俺は仕事場を留守にする!」
レイモン「どこかへお出かけですか?」
アル「本物の写真を撮りに行く!!」
レイモン「本物・・・?」
アル「後のことは頼んだぞ!!」
アル、走り去る。
レイモン「先生!!」
カーテン閉まる。
――――― 第 3 場 ―――――
カーテン前。
旅一座の者達、大荷物を持って、気怠そう
にゾロゾロと登場。
一番後ろからリリと、そのじいや(ティボー)
続く。
マハル「もう嫌!もう一歩も歩けない!!(荷物を置いて、座り
込む。)」
マーゴ「そんなこと言ったって、仕方ないでしょう!馬車が壊れ
てしまったんだもの。」
マハル「私はこの一座のスターよ!!何でスターの私が、荷物
を持って、歩かなくちゃいけないの!?」
ガロ「そんなこと言うなよ。皆、疲れてるんだから。」
レニエ「そうだよ!」
マハル「こんなことなら。先の馬車に乗って行くんだったわ!!」
ロバン「もう直ぐ村だ!そこで他の連中と合流出来る。もう少し
頑張るんだ、マハル。」
マックス「ロバンさん、その町は長いんですか?」
ロバン「そうだな・・・ひと月はいることになるだろうな。」
ガロ「そうしたら、少しはゆっくり休めるな!(嬉しそうに。)」
ルダリ「(マハルに近寄って、手を出す。)さぁ、マハル、立ちなよ。
荷物は俺が持ってやるよ。」
マハル、リリに近寄る。
マハル「いいわよね、あんたは!お供がいて!!(リリの後ろに
いるティボーを覗き見る。)」
ガロ「よせよ。さぁ、行こう。(マハルの肩を抱いて歩き出す。)」
旅の者達、置いていた荷物を持ち、
再びゾロゾロと歩いて行く。
リリ「(ティボーに向いて。)ごめんなさい、ティボー・・・。荷物、
重いでしょう・・・?」
ティボー「何をおっしゃいます。お嬢様の方が重いでしょう。じぃ
が、もっと若ければ・・・」
リリ「ありがとう・・・。これは母の形見だから、どうしても捨てる
ことが出来なくて・・・」
ティボー「分かっております・・・。このティボーにとっても同じ思
です・・・。」
リリ「ティボーは母さんの爺やだったんですものね・・・」
マーゴ「(振り返って。)何してるの!早く来ないと置いてっちまう
よ!!」
リリとティボー、慌てて歩いて行く。
暗転。
――――― 第 4 場 ――――― A
音楽流れ、カーテン開く。と、森の中。
荷物を担いで、アル登場。歌う。
“心が洗われるようだ・・・
こんな静寂・・・
穏やかな・・・
木々の香りに包まれて
丸でこの世の楽園か・・・”
アル「だが・・・(回りを見回しながら。)畜生・・・!道に迷っちま
った・・・。水の音・・・?川があるのか・・・?」
アル、森の奥へ走って行く。
入れ代わるように、鼻歌を歌いながら
桶を抱かえてリリ登場。
リリ、靴を脱いで、楽しそうに木漏れ日を
浴びながら踊る。
一時置いてアル、森の奥から登場。
妖艶に踊るリリを認め、呆然と見詰める。
(リリ、気付かないで踊り続ける。)
アル、思い出したように、担いでいた鞄の
中からカメラを取り出し、リリに向かって
カメラのシャッターを押し続ける。
その気配に気付いたリリ、踊りを止め、
回りを見回しアルを認める。驚いたリリ、
慌てて桶と靴を拾い、森の奥へ消える。
アル「君!!(追いかけようとするが、鞄に気付き、取りに行く
間にリリを見失う。)・・・なんと言う娘だ・・・まるで・・・夢で
も見ていたようだった・・・」
アル、呆然とカメラを見詰める。
フェード・アウト。
――――― “アル・ロー”2へつづく ―――――
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