日本全国、大仏様は数多くあるけれど…。
小さい頃から、好きだったのが鎌倉の大仏様だ。
かの与謝野晶子氏がお詠みになられた
かまくらや 御ほとけなれど 釈迦牟尼は 美男におはす 夏木立かな
(本当は阿弥陀仏らしい…)
ともあるように、本当にりりしく爽やかなお顔立ちだ。
奈良の東大寺の大仏様も、大きくて神々しく立派であるけれど、私の中では、順位は2番手だった。
が、大好きな叔父を亡くしてから、その不動の順位は、鎌倉の大仏様とも劣らないくらい、存在感は大きくなった。
父の3番目の弟である叔父は、我が家から学校にも通った人で、私とは、大の仲良しだ。
学徒動員の経験も持つ叔父は、その後、文部省(今の文科省)の局長クラスにも上り詰めた人だ。
晩年は、赴任先の大阪に居を構えたが、私は始終、新幹線に飛び乗って、叔父に会いに行ってた。
大阪に行くと、恒例の如く、奈良の大仏様に会いに行った。
叔父は、仕事や何かで悩んだ時は、必ず、会いに行くそうだ。
大きな大仏様の前に立つと、人間なんて、ちっぽけなもので、悩んでいることが馬鹿らしく思えるのだそうだ。
帰りには、必ず、駅前の商店街の奈良漬の老舗で、昼食を取った。
叔父夫婦には子供がいなかったから、姪の私は娘のように可愛がられた。
今まで、親しく付き合っていたのに、叔父が急逝してから、人が変わったように叔母は付き合いを絶った。
今では、叔父がどこに眠っているのすらわからない。
十数年前に、大阪の友人と、奈良に詣でた。
叔父に会いたくなると、奈良の大仏様に会いに行く。
大きな大きな大仏様は、もろもろの悩みなんて吹き飛ばしてくれるかの如く、雄大だった。
傍の柱に、穴が開いている。
なんでも、大仏様の鼻の孔と同じ大きさだとか…。
でぶっちょの私には、とても無理な話だけれど、細身の友人なら…と、代わりにくぐってもらった。
周りの観光客の声援も受けながら、彼女は、見事に潜り抜けた。
その彼女も、今では私に劣らず太くなって、とても、潜り抜けたとは思えない。(笑)
先年、主人と奈良に旅行した際、大仏様を見ての帰り、例の奈良漬けの老舗に顔を出した。
女将に、叔父との話をしたところ、今は、食事処はしてないそうだが、よろしかったら、どうぞ…と、お庭の見える場所へ誘ってくれた。
昔、叔父と一緒に庭を愛でながら、食事をした思い出が、あふれてきて、涙が出そうに。
主人も感激して、お土産の奈良漬けを大量に買い込んだ。(笑)
奈良にも、久しく行ってないが、お店は健在だろうか…。
コロナが治まったら、また、大仏様に会いに行かねば…。