「夜の足音」 著者・松本清張 角川文庫 平成21年3月 初版発行
久しく、遠ざかっていた読書を再開する。
ベッドの枕元には、数冊の積読の本が重ねられている。
暑さの所為か、なかなか、読んでも頭に入ってこない。
そんな中、探し出したのが、時代小説の「夜の足音」だ。
清張氏の綿密な史料調べ、時代考証の確かさは、群を抜いているように思う。
江戸の地名は、私が育った下町だし、いまだに古地図の中に生き生きと存在し続けているのだ。
この「夜の足音」は岡っ引きから、奇妙な相談事を持ちかけられて、男の尊厳を傷つけられた無宿人の話だ。
そのほか、家光上洛の折、宿を提供した小藩の武士の間での噂話を題材とした「噂始末」。
江戸詰めの、各藩の外交官ともいうべき留守居役の事件など。
短編ながら、ずっしりと重みのある作品ばかり6篇、収められている。
後に社会派推理小説(「砂の器」「点と線」「0の焦点」などなど)の巨匠とも言われた清張氏。
原点は、時代小説だったのか…。
小気味よい会話の数々。
今、松本清張の世界にどっぷり、はまっている。