農業収入が半分以上を占める「主業農家」は,農家総数の約15%にとどまる。このうち約半数の140万人を70歳以上の高齢者が占め,20年後を担う39歳以下は35万人にとどまる。同様に漁業人口も,漁に出る17万人の男性の5割が60歳以上の高齢者が占める。
今後 10年で70歳以上は引退を余儀なくされるだろう。これから生産量を増やし,安全性を高めなければならないにもかかわらず,高齢化や後継者難によって廃業が加速するであろう。
また,日本農業の問題点として,経営規模が小さく,繁閑の差が大きく,安定した人材採用・育成が難しい。出荷量が安定しないため,価格が大きく変動する……,といった点が指摘されている。
前(自民党)政権はこの解決策として,農家の大規模化と組織化を目論んだ。資本と経営を分離し,次世代の農業を担う意欲と能力のある事業者を認定し,そこに集中的・重点的に施策を実施することで,農業を再活性化しようという意図からである。
◆農業法人
農業法人とは,「法人形態」によって農業を営む法人の総称である。農業法人には,「農事組合法人」と「会社法人」の2つの形態がある。会社法人は,有限会社,合名会社,株式会社(株式の譲渡制限のあるものに限る)の4形態があり,事業や構成員,役員については一定の要件がある。なお,農地の権利取得の有無によって,「農業生産法人」と「一般農業法人」とに分けられる。
2010年1月時点で1万1829社があり,前年同期と比べて約800社増加した。既存農家が大規模化を進めるため生産法人を立ち上げる場合や,建設業や食品関連産業などの企業が農業参入のため設立する場合が多い。
なお,一般企業から生産法人への出資が50%未満に制限される他,役員の半数以上が常時,農作業にかかわること,売上高の半分以上が農業事業であることなどの条件がある。また,株式会社形態の場合,株主は生産法人の株式を自由に譲渡できない。
○鹿児島県の事例
鹿児島県に,耕作放棄地を取り込んで規模を拡大している農業者がいる。「畑借ります」。ジャガイモやケールを栽培するさかうえ(鹿児島県志布志市)は数年前からトラクターのドアなどにこう書き込み,積極的に耕地を集め始めた。現在は約80ヘクタールと,5年前の2倍強までに広げた。
同社は,後継者不足で耕作放棄となった土地を有効利用する義務もあるし,耕作の依頼があればできる限り使わせてもらおうという方針のもと,事業を進めている。
◆さかうえ(農業生産法人) 認定エコファーマー
http://sakaue-farm.co.jp/gaiyou.html
認定エコファーマーとは,農林水産省が定めた農業手法に基づき,「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」を都道府県に提出し,認定を受けた生産者のこと。「さかうえ」は,2008年3月,エコファーマーの認定を受けた。青刈りトウモロコシにおいては,鹿児島県内初の認定である。
・設立 :1995年4月 , 資本金 3,150千円, 従業員数 25名
・代表者 代表取締役社長 坂上 隆
・所在地 〒899-7104 鹿児島県志布志市志布志町安楽2999
・作付面積 150ヘクタール(サッカーグラウンド約200面分,東京ドーム約100個分)
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