吐きながら打席へ,パニック障害で小谷野栄一さんの恩返し
出典: https://news.yahoo.co.jp/feature/1450
極度の不安から動悸や発汗,過呼吸に陥るパニック障害。厚生労働省が2002年度~2006年度に実施した調査によると,パニック障害の生涯有病率は0.8%。日本人のおよそ120人に1人がパニック障害にかかっている。
東北楽天ゴールデンイーグルスの打撃コーチの小谷野栄一さん(38)は,選手時代から,長くパニック障害に苦しめられてきた。現在も完治していない。めまいや吐き気に襲われながらも,理解ある仲間に支えられて2010年には打点王になった。
小谷野栄一選手・引退セレモニー 2018/10/5
>>>「弱い部分を見せられる人間のほうが魅力的」――吐きながら打席へ,パニック障害で小谷野栄一が至った境地
突然動悸が激しくなり,めまいと吐き気がやってくる。実際,試合中にグラウンドで吐いてしまうこともある。
「試合中にグラウンドで吐いているとき,気づいているお客さんもいるかもしれません。僕がそれを隠そうともしていないので。知らずに見た人は『二日酔いで吐いているんだろう』と思うんでしょうけどね」
隠そうとしないのは,それが「自分らしいと思う」から。
>>>一生かかっても返せない恩ができた
パニック障害を発症した年の秋に宮崎県で開催されたフェニックス・リーグ。若手選手が実戦経験を積むリーグである。そこで小谷野さんは当時2軍監督代行だった福良淳一さん(現オリックスゼネラルマネージャー)からこんな言葉をかけられる。
「福良さんには一生掛かっても返せない恩ができました」
「何分かかってもいいから,何回タイムをかけてもいいから,とにかくバッターボックスに入ってみよう。まずはそこから始めてみたらどうだ? 審判から怒られたら,俺が謝ればすむ話だから」
その時点で,小谷野さんは「これが最後だ」と覚悟していた。練習すらまともにできない選手と,球団が来季も契約するはずはない。小谷野さんは福良さんの言葉通り,試合に出ることを決意した。
「セカンドを守っていて倒れたら,ショートの後輩が気づいてくれたり。バッティングも毎打席,トイレに吐きにいったり,打席で吐いたり。それでもその1カ月間は,『最後だ』と思ってやっていました」
2010年には全144試合に出場し,打点王に。その後,2018年まで現役生活を続けた。現役時代の通算成績は打率2割6分4厘,打点566,本塁打71。
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┗■ 小谷野栄一(こやの・えいいち)
1980年生まれ,東京都出身。2002年ドラフトの5巡目で指名を受け,日本ハムファイターズに入団。強打好守の三塁手として活躍し,2010年には打点王を勝ち取る。ゴールデン・グラブ賞は3回受賞。2018年に現役引退し,現在は東北楽天ゴールデンイーグルスの1軍打撃コーチを務める。近著に自身の野球人生と闘病生活を綴った『自分らしく パニック障害と共に生きる』(潮出版社)がある。
自分らしく パニック障害と共に生きる | |
パニック障害と付き合いながらプロ野球選手として、打点王・ ゴールデングラブ賞・ベストナインなど数々の栄誉を勝ち取っ た小谷野選手( 現楽天イーグルス一軍打撃コーチ) の波乱と感 動の半生! 世界仰天ニュースなどでも取り上げられた感動エピソードの その後も収録! |
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潮出版社発行 1320円 小谷野 栄一著 |