働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

解雇の金銭解決制度(解雇無効時の金銭救済制度)

2019年08月19日 | 労働基準法改正
厚生労働省労働基準局が実施した「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が今年(2019年)6月、裁判で「解雇無効」などとされた労働者に対し、企業が一定の金額を支払って解雇できるようにする解雇の金銭解決制度(解雇無効時の金銭救済制度)について、厚生労働省の有識者検討会は29日、「労働政策審議会で、さらに検討を深めていくことが適当」とする報告書をまとめました。

解雇の金銭解決制度ルーツ
「解雇の金銭解決制度」のルーツは「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」ではなく、2015年 6 月 30 日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015と「規制改革実施計画 平成27年(2015年)」に基づいて開催された「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」にあるとされます。

透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会
「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が作成した報告書には「『日本再興戦略』改訂2015等で掲げられている解雇無効時における金銭救済制度については、検討会において、制度導入に賛成の立場と反対の立場の両方の意見があったが、(中略)制度の在り方とその必要性について検討を行うこととした」と記載されています。

しかし「日本再興戦略」改訂2015には「予見可能性が高い紛争解決システムの構築・透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の在り方について具体化に向けた検討を進め、制度構築を図る」とありますが、「解雇無効時における金銭救済制度」(解雇の金銭解決制度)についてはまったく書かれていません。

ただし、「規制改革実施計画 平成27年」には「『労使双方が納得する雇用終了の在り方』に関する意見」(平成27年3月25日規制改革会議)に掲げられた課題等について、論点を整理した上で検討を進める」と記載されています。

「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見
平成27年(2015年)3月25日 規制改革会議 は『「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見 ―紛争解決の早期化と選択肢の多様化を目指して―』と題された文書を作成しました。

「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見には、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見裁判所の訴訟における解決の選択肢の多様化に向けた解決金制度の検討という項目があります。

そこに「訴訟の長期化や有利な和解金の取得を目的とする紛争を回避し、当事者の予測可能性を高め、紛争の早期解決を図ることが必要である。このため、解雇無効時において、現在の雇用関係継続以外の権利行使方法として、金銭解決の選択肢を労働者に明示的に付与し(解決金制度の導入)、選択肢の多様化を図ることを検討すべきである。またこの制度は、労働者側からの申し立てのみを認めることを前提とすべきである。一方、解決金制度の設計・導入の仕方によっては、現状の訴訟を通じた和解と比べて解決に至るまでの期間が長期化する懸念もある。紛争当事者の行動に及ぼす影響に十分留意しつつ、検討を進めるべきである。」と記載されています

つまり「解雇の金銭解決制度」のルーツは規制改革会議が作成した『「労使双方が納得する雇用終了の在り方」に関する意見』にあります。だだし、この意見にも懸念する記載があったことは、今後の労働政策審議会の議論においても重要だと思います。


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