働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

ジョブ型雇用(勤務地・職務限定正社員制度)とは

2021年08月14日 | 働き方改革
テレワークとジョブ型雇用(職務等限定正社員制度)
ここ1、2年でテレワーク(リモートワーク)が大企業を中心に普及しているが、定着させるためには課題も多い。

そういう事情の中で「ジョブ型雇用」が「テレワークには適しているのではないか」という意見が出始めて、テレワークとの関連で「ジョブ型雇用」、つまり職務限定正社員など「多様な正社員制度」が注目されるようになった。

「ジョブ型」雇用とは、企業が人材を採用する際に職務、勤務地、時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結び、雇用された側はその契約の範囲内のみで働くという雇用システム。(『「ジョブ型」雇用とは?第一人者が語るメリット・デメリットと大きな誤解』リクナビNEXTジャーナル)

厚生労働省「多様化する労働契約に関する検討会」
職務限定正社員制度などジョブ型雇用については、厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会」において議論されている。なお、この検討会については、(2021年)6月18日に閣議決定「規制改革実施計画」67頁の5bに記載されている。

厚生労働省は、多様な正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化及び労働契約法(平成19年法律第128号)に定められる無期転換ルールの労働者への周知について、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」において、令和3年公表予定の実態調査結果等を踏まえて議論を行い、取りまとめを行う。その上で、労働政策審議会において議論を開始し、速やかに結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。(2021年6月18日 閣議決定「規制改革実施計画」)

多様な正社員(勤務地限定・職務限定正社員)議論
第1回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」は2021年(令和3年)3月24日、労働委員会会館会議室で開催。議題は「無期転換ルールと多様な正社員の雇用ルール等に関する現状等について」。この第1回検討会における多様な正社員の雇用ルールに関する主な意見は、次のとおりだが、「どういう形で採用されたのかによって、正社員と多様な正社員間の移行の可能性や容易さに違いがあることに留意が必要」といった意見があった。

<多様な正社員の雇用ルール関係>
・多様な正社員を有期雇用者の無期転換先としてだけ捉えるのではなく、正社員から多様な正社員になる動きも踏まえて、多様な正社員の雇用ルールの明確化について整理していかなければならないのではないか。
・いわゆる正社員であっても、何らかの限定があると言える部分もありえる中で、無限定の働き方であることを前提に議論することやそれを肯定するような形で議論することはいいのだろうか。多様な正社員だけを念頭に置くのではなく、いわゆる正社員についても念頭において議論していくべきではないか。
・正社員や多様な正社員は、法制度で定められている概念ではないので、広めに色々視野に入れた上で検討することになるのではないか。
・多様な正社員の制度があるということと、制度が活用されている、運用されているということは、必ずしも一致していないことに留意が必要。また、事業所閉鎖等の場合、多様な正社員にも正社員と全く同じ雇用維持努力を行うという企業がおよそ半数だが、実態も同様になっているのかは確認が必要。
・正社員として採用された場合、一度限定社員になったとしても、正社員に戻ることは多くの企業で可能かと思うが、限定正社員として採用された場合、正社員になるためには、求められている水準に違いがあるなどの理由で試験や面接などがある可能性がある。そのため、どういう形で採用されたのかによって、正社員と多様な正社員間の移行の可能性や容易さに違いがあることに留意が必要。(第2回検討会参考資料抜粋)


ジョブ型雇用「懸念される労使の齟齬」(日刊工業新聞)
日刊工業新聞(大企業を中心に広がる「ジョブ型雇用」、懸念される労使の齟齬、2021年8月13日)は「日本型雇用制度を見直す動きや、コロナ禍を契機としたテレワークの普及に伴って、欧米で主流のジョブ型雇用が注目されている。日本で主流のメンバーシップ型とは異なる新たな雇用形態として、大企業を中心に広がる。一方で日本生産性本部は、関連するアンケートを実施。ジョブ型の認識をめぐる労使の齟齬を懸念している」(編集委員・池田勝敏)と報じた。

日本生産性本部が7月実施した「働く人の意識に関する調査」では、「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる」をメンバーシップ型とし、「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない」をジョブ型として、どちらを希望するか聞いた。メンバーシップ型が33・7%、ジョブ型が66・3%となり、ジョブ型希望が多数派を占めた。

次いで、働く上での三つの限定条件、(1)「仕事の内容の限定」、(2)転勤がないといった「勤務地の限定」、(3)残業や休日出勤がないといった「勤務時間の限定」について、優先順位を回答してもらった。重要度1位が最も多かったのは「仕事の内容の限定」で「勤務地の限定」、「勤務時間の限定」と続いた。

さらに、「仕事の内容の限定」を重要度1位に選んだ人に、自己啓発の実施状況を聞いたところ、メンバーシップ型希望の人で、「行っている」と答えた人は22・0%だったのに対し、ジョブ型希望の人は13・4%だった。また、伸ばしたいスキルや能力があるか聞いたところ、メンバーシップ型希望の人で、「ある」と答えた人は46・8%だったのに対し、ジョブ型希望の人は26・8%だった。

「ジョブ型希望の方が割合が多くなるだろうという仮説を立てていたが実際は逆だった」と話すのは柿岡明上席研究員。結果からは、ジョブ型希望の方が自己啓発の実施率が低く、スキルや能力を取得する意欲が弱いことがうかがえる。

調査リポートではこの結果について「『仕事内容を限定することで専門性を高めて生産性向上につなげる』という企業の期待と裏腹に、自らの能力を高めようという意欲が必ずしも高くない」と分析する。柿岡氏は「企業が期待するジョブ型の雇用者像と雇用者の意識が一致していない」と指摘した上で、「欧米型の制度をそのまま単純に導入するのは危険だということを示唆している」と警鐘を鳴らす。(日刊工業新聞「大企業を中心に広がる『ジョブ型雇用』、懸念される労使の齟齬」2021年8月13日)


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