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第607回 不思議な夢の話−2

2024-12-20 | エッセイ
 決してオカルト趣味ではありません。単純に「世の中、不思議なことがあるもんやなぁ」を楽しみたくて、時折そのテの話題を取り上げて来ました。今回は、だいぶ以前にお届けした「第331回 不思議な夢の話」(文末にリンクを貼っています)の続編になります。歴史上の人物二人が自らの死を予知していた(としか思えない)不思議な夢を話題にすることにしました。どうぞ最後までお気楽にお付き合いください。

★リンカーン大統領★

 私が小学生の頃、「世にも不思議な物語」というアメリカ制作のテレビ番組(シリーズもの)を見ていました。実際にあった不思議なエピソードを再現ドラマ仕立てで見せるのですが、中でも、リンカーン大統領の予知夢が、不気味でした。
 夢の中で、彼がひとりで、自宅(ホワイトハウス)の階下に降りてくると、部屋の中央に黒い棺(ひつぎ)が置かれています。棺の蓋を開けて覗き込むと、なんと、そこには自分の遺体が安置されているのです。ギョッと驚いたリンカーンの表情が、今でも脳裏に焼き付いています。

 比較的知られたエピソードのようで、もう少し詳しくお伝えしましょう。
 暗殺される数日前、執務に疲れた大統領が、ホワイトハウスの自室でうとうとしていると、夢の中で、多くの人が嘆き悲しんでいる声が聞こえてきました。ベッドから起き上がって、階下をさまよった挙げ句、とある部屋に入ると、棺が安置してあります。護衛の兵士に「ホワイトハウスで死んでいるのは誰だ?」と訊ねるリンカーンに「大統領です。大統領は暗殺者によって殺害されたのです」との返事が返ってきました。そして、大きな悲嘆の声が湧き起ったところで目が覚めた、というのです。
 そして、妻と、警備担当にだけ語ったこの夢の話が後世に伝えられたとされています。そんな不吉な作り話をするとは考えられませんから、夢を見たのは事実なのでしょう。つくづく不思議でリアルな夢です。

★大久保利通★
 もう一人は、日本から。西郷隆盛の政敵とされながらも、稀代の政略家として明治政界で実力をふるった大久保利通です。

 明治11年5月14日早朝、2頭立ての馬車で霞ヶ関の私邸から赤坂仮御所に向かった大久保利通は、千代田区紀尾井町で、6人の不平士族に襲われ、日本刀で斬殺されました(「紀尾井町の変」)。実は、事件の数日前、彼の忠実な部下で、のちに日本の郵便の父と呼ばれる前島密が、本人から妙な告白を聞いていた、というのです。

「相談することがあって、大久保公の屋敷へ行った。一緒に晩餐を食べていたら、「前島さん私は昨夕(ゆうべ)変な夢を見た。なんでも西郷と言い争って、終(しま)いには格闘したが、私は西郷に追われて高い崖(がけ)から落ちた。脳をひどく石に打ちつけて脳が砕けてしまった。自分の脳が砕けてピクピク動いているのがありありと見えたが、不思議な夢ではありませんか」というような話で平生夢のことなどは、一切話さぬ人であったから、不思議に思っていたが、偶然かどうか、二、三日して紀尾井町の変が起った。」(「大久保利通」(佐々木克監修 講談社学術文庫)から引用)

 さて、事件の当日は、太政官で会議があり、前島も大久保の到着を待っていたのですが、一向に現れません。その時のことを、前島は、報知新聞のインタビューで次のように述べています。
「大変に遅いがどうしたのだろうと言っていたら、使いが来て、今大久保公が紀尾井町で刺客の手に倒れたと報(しら)して来た。私はすぐに駆けつけた。公はまだ路上に倒れたままでおられたが、躰(からだ)は血だらけで、脳が砕けて、まだピクピクと動いていた。二、三日前に親しく聞いた公の悪夢を憶い出して慄然(ぞっ)とした。」(前掲書から引用)

 夢と現実の状況に違いはありますが、 「脳がピクピク動いていた」というのが、偶然の一致を越えて、リアルで、不気味です。
 なお、大久保が暗殺された際に乗っていた英国製の馬車が保存されています。

 永代供養のため、大久保家から寄付されたもので、五流尊瀧院(岡山県倉敷市)の所蔵です。大久保家にとっては、いかにも無念の遺品に違いありません。

 いかがでしたか?予知夢への不思議な思いを少しでも共有いただければ幸いです。なお。冒頭でご紹介した前回記事へのリンクは<こちら>です。それでは次回をお楽しみに。
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