マティーニというカクテルが
ある。
ジンとベルモットで作るのだが、
通ほどこのベルモットの量に
こだわる。
つまり少なければ少ないほど、
”ドライ”。
粋というわけだ。
老舗のバーでは、大ぶりの
氷をベルモットで洗い、
そのベルモットの香りのする
氷をシェイカーにぶち込み、
ジンを注ぎ入れ素早くシェイ
クする。
きりっと冷えたものをグラスに
注ぐ。
うっとりとした工程だ。
マティーニに入れるベル
モットの分量というのは、
女の人がつける香水の
ようなもの。
香水の香りも少なければ
少ないほど粋なのだ。
耳の後、首、胸元、乳首、
手首、膝の裏と、
その日、自分が一番感じる
ところ一か所につける。
脈打ってなくても、カレが
口づけする箇所が基本。
全部点々と香水をつけたら
つけすぎ(笑)
強い香りの香水は、
部屋の中に香水をシュシュと
吹いておいて、その霧の中を
通りぬける。
そんなにはかなげにつけても、
ふとした拍子やすれ違いぎわ
に、微かに香るものだのだ。
そのはかなげな微かな残り
香りこそ、異性を弾きつける
のである。