佐久市 ヤナギダ 趣味の店

長野県佐久市野沢93番地
ヤナギダ☎0267-62-0220

喧嘩なんか、しないもん

2024-09-13 17:11:15 | 日記
 
 
 
どうして?
どうして、喧嘩なんか、しちゃった
んだろう?
こんなにも好きで、こんなにも
会いたくて、三ヶ月ぶりに会えて、あ
んなにも嬉しかったはずなのに。

きっかけは、些細なことだった。
彼はきょうの午後、どこにも出かけた
くないと言い、私は町まで出かけて
食事をしたり、買い物をしたり、散歩
をしたり、夕方にはレゲエのコンサート
にも行きたいと主張し、出かけるか出
かけないか、について話し合っている
うちに、いつのまにか口喧嘩になり、

気がついたら「愛しているのかいないの
かを巡る、大きな口論に発展してしまっ
ていたのだった。

愛しているに決まっているのに、海よ
りも深く空よりも果てしなく、愛し
合っているという自信があるのに、

まったく、なんてことだろう。情けな
い。実にふがいない恋人たちだ。
貴重な時間をムダにしている。休暇は
一週間しかなくて、休暇の終わりには
また遠く、離れ離れになってしまう
のに。

わかっているのに、どちらも素直に
「ごめん」が言えないまま、彼は
部屋に閉じこもり、私は扉をさざ
とばーんと音をさせて閉め、こう
してバーにやって来て、ちっとも
酔えないお酒を飲んでいる。

なんとかしなきゃ、仲直りしな
きゃ。
このまま、大切な時間が、刻一刻と
失われていくのを、指をくわえて
見ているだけでいいの?いけない、
いけないよ、絶対にいけない。

竜巻のようにま巻き上がってくる
思いを抑え込んで、私は注文した。

「お願いします。うんと強いのを」
と頼んでみた。
「さ、できたよ。どうぞ、召し上がれ」
数分後、目の前に差し出されたのは、
いちごとミントの小枝で飾られた、
メキシカンガラスのゴブレット。

「可愛い!」
思わず、感嘆のため息がもれた。
ひと口飲んだあと、そのため息は
甘くなった。甘酸っぱくてせつない、
昔懐かしい味を彷彿させている。

ああ、この味は、いつかどこかで
味わった、何かの味にそっくりだ。
でも、なんの味なのか、うまく思い
出せない。

ストローで少しずつ、少しずつ、
吸い上げながら、味わってみる。
頭の芯が溶け出して、気持ちの編み
目がほどけてゆくのがわかる。

楽園は、近い。わたしのすぐそばに
ある。この胸のなかにある。この皮
膚の表面に宿っている。彼に触れた
い。触れられたいと願っている。

この指先に。
そこまで思った時、思い出した。
よみがえった。このカクテルの
味は、彼と交わした口づけの味だ。

パリのアパルトマンで、籠いっぱい
に盛られた摘みたての苺―――
彼がスケッチをするための果物だ
った―――を、ひとつぶ、お互い
に食べさせ合った午後。
シーツに残っていた切ない香り。

――苺みたいに甘い思い出を、たく
さんつくっておかなきゃ。あとで使
うために。

――使うの?どうやって?

――喧嘩なんかした時にね、ひとつ
ぶ取り出して口に含めば、仲直り
できるだろう?

――喧嘩なんか、しないもん。

――するよ。どんなに晴れた楽園
にも、雨は降ってくるからね。
 

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「木漏れ日のなか」

2024-09-13 17:09:35 | 日記

まるいひとみ
笑うとくぼむ
ほっぺたのまん中
そう えくぼというのかい
ふうん さわらせてよ

はずかしそうにいやがるとき
イヤイヤするとき
首をすぼめるんだ
それは なんともかわいいしぐさ
首をさわらせてよ

逃げていく
えくぼも首もダメだって

ケチだな
本当に

あんまりケチにしていると
全部もっていくよ


YouTube
ERAMO E PASSAVANTI - Senza Confini (Festival Di Sanremo 1998 - Prima Serata - AUDIO HQ)

https://www.youtube.com/watch?v=tA_BvkyuYf0&list=RDtA_BvkyuYf0&t=4




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「若葉」 ―声を聞く―   La fine

2024-09-13 17:07:48 | 日記

 

――――また、会えたね。

あのひとのうしろに隠れる
ようにして、俯(うつむ)き
加減の少年が立っている。

―――驚いた!こんなことって、
あるのね?
―――僕は驚かなかった。全然。

と,あのひとは言う。その時、書棚の
陰から、ひとりの少女が小鹿のよう
に飛び出してきて、わたしの姿に気
づき、はっと姿勢を正す。あのひと
笑顔を向けながら、話しかける。

―――ほら、章子ちゃん。ご挨拶して。
この人が『はるになったら』のお姉さん
だよ。

―――こんにちは、高田章子です。この
子は、弟の登です。
―――ああ、ほんとに、驚いちゃった。
こんなことって、あるのね

―――さっきから、驚いてばかりいる。
そう言って、あのひとは笑う。

―――あなたはどうして、驚かないの?
―――驚かないよ。だって、絶対
会えるってわかってたから。

―――どうして、わかるの、そんなこ
とが、
―――理由なんて、ないよ。ただ、わかっ
ただけ。決まってたんだよ。ここで、
こうしてまた会えるって、最初から
決まってた。

それからあのひとは、わたしの胸
もとに、まっすぐ右手を差し出す。
大きな手のひらだ。わたしは知って
いる。

大きくて、ごつごつしていて、温
かい。

わたしに手紙を書いてくれた手。
電話をかけてくれた手。あの日、
成田で、わたしを抱きしめてくれた
手だ。

そう、これがあのひとの「忘れ物」
だった。

わたしは繰り返す。

強く、強く、もう絶対に離さないと、
自分に言い聞かせながら。


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「孤独との出逢い」

2024-09-13 12:08:09 | 日記

私たちはつい、今のあるがまま 
のすべてが、ずっと未来まで続 
くような錯覚を持ってしまいま 
す。 
でも一寸先はわからないのです。 

二百年も眠りつづけていた島原 
の普賢岳が、ある日、突然火を 
噴くように、七十年も続いた 
ソビエトの共産主義が、突如と 
して崩壊したように、 
明日何が起こるかわからない 
のです。一寸先は闇です。 
常に、世の中のすべては移り 
変わっています。私たちが 
生まれた瞬間から、老いと 
死に向って毎日変わっていく 
ように。 

それを仏教では「無常」という 
言葉であらわしています。 

この世に起こるすべてのことは 
移り変わる、一時も同じ状態 
はないということです。 
心もまた無常です。 
人と人との関わり、交わり、愛 
もまた無常です。 
結婚式で、日本古来の神式であれ、 
お寺での仏式であれ、キリスト 
教のチャペルの式であれ、 

どの場合も、神や仏の前で、 
新郎新婦は夫婦の愛の永遠に 
変わらぬことを誓います。 
それでも、夫婦の愛が決して 
永遠でないことを、年々、世 
界的に増加していく離婚の数 
が示しています。 
結婚式での誓いは 
「変わりません」というより、 
「変わりやすい私たちの愛だ 
からこそ、どうか、神や仏に 
よって、守り、育て、つづけ 
させてください」 
と祈るべきだと思います。 

愛しあっている時は、いつか 
自分が裏切られるなど、人は 
思いません。 
まして自分がこんなに今愛して 
いる相手に飽きがきたり、情熱 
を感じなくなったりする日が 
来るなど想像もつきません。 
ところが気がついた時、相手に 
別な愛人が出来ていたり、 
自分が今の恋人や夫以上に心 
惹かれる人が出来ていたり 
するのです。 

それほど人間の心は不確か 
なものなのです。 
だからこそ人は愛に誓約や 
契約を求め、その証人をつくり 
たがります。 
それで結婚式や神父や僧侶や 
神主に立ち会ってもらい、た 
くさんの友人に参列してもら 
って証人になってもらうので 
す。 

でも、そんなことがいかに 
虚しいか私たちはもうさんざ 
ん愛の破局を見たり経験した 
り知っています。 
愛もまた無常ということも、 
孤独と同じくらいに知って 
いましょう。 


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数多(あまた)なる窓を集結せるビルの互(かた)みに背(そ)むき立ちてゐたりき 

2024-09-13 12:06:24 | 日記

結婚を別にして、人間は、男と女の 
関係が始まったらあとは別れがある 
だけだ。これは体験的要素。 

問題は、別れがはやい時期におとず 
れるか、あるいは少しでも先にひき 
のばせるかだけ。 

恋の初期があれだけ甘美でめくるめ 
くような興奮で満たされるのは、つ 
ねにどこかに、いつかこの恋で終わ 
ることを恐れる気持ちがかならずか 
くされているからである。 

あなたは、『空虚』と『傷心』と、ど 
ちらをとる?」 

私は、「なにがなんでも 
『傷心』に決まっている」と飛びつけ 
ないのだ。 

若いときの傷のなおりははやい。傷口 
はすぐにふさがり、傷あとさえ残らない。 
肉体的にもそうだ。ヤケドなどしても、 
二~三日で消えてしまう。 

ところが年をかさねるにつれて、傷は 
なおりにくくなり、傷あともなかなか 
消えない。へたをすると、傷口は永久 
に残ってしまうこともある。 

しかし冷静になって考えると、男と女 
の関係、いいではないか。別れもまた 
いいではないか。大事なのはどのよう 
な別れをするか、その別れの質なのだ 
から。 

せめて、いい別れ方のできる恋愛であ 
るよう、と心をくだくべきであって、 
ティーンエイジャーのように尻込みす 
るときではない。 

いまは初秋である。庭を吹く風に透明度 
がくわわり、ひんやりと冷たい。 
それにしても妙にさびしいものだ。 


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「いつも瞳は澄んでいよう」

2024-09-13 12:04:26 | 日記

 

明治の女流歌人・与謝野晶子 
の生まれつきの器量は、あま 
り恵まれていなかったそうで 
す。 

それが晩年の晶子はほれぼれ 
するほどに美しかったと言い 
ます。 

堺の旧家のいとはん(お嬢様) 
として育った晶子が、与謝野 
鉄幹を慕って家出、たくさん 
の子供をかかえ、貧困にあえ 
ぎながら夫の鉄幹を励まし歌 
や文学の道を生き抜いた厳し 
い生きざまが、 

晩年の晶子を、いぶし銀のよ 
うな美しさに磨きあげたので 
しょう。 

昔からの諺に、 
「目は口ほどにものをいい」 
「顔は心の窓」といいます。 

どんなに美しい目や美しい 
顔立ちをそなえていても、 
その目に光がなく、その顔に 
生気がなければ、少しも美し 
さは感じさせない。 

美しさは造作ではないのです。 
ましてや塗ったり染めたり 
するような洗ったらはげてし 
まうようなお化粧で左右でき 
るものでは決してありません。 

“いつも心は燃えていよう 
  消えてしまっては駄目 
いつも瞳は澄んでいよう 
 濁ってしまっては駄目 


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しっとり湿る疑問符軒先に吊るしてあした逢うか逢わぬか

2024-09-13 12:01:58 | 日記

「疑問符」は実態のあるもの
ではないから、比喩的に「相
手への疑問を消しきれずに、
軒先を見つめて、思いを
宙に漂わせる。

この人といつまでも一緒に
いたいと思う感情って、
こんな短時間で形成される
んだ・・・・・
人が人に惹きつけられるの
って、時間じゃないよね。

その人の個性がはっきりでて
いて、
それを好ましく思えば、
こんなにもすぐ人を好きになれる


https://www.youtube.com/watch?v=ZZAa_S0hY1Q


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寒天質に閉じこめられた吾(♀)を包み駅ビル四階喫茶室光る

2024-09-13 11:59:02 | 日記

それは鉄のように固く閉ざす 
ものではなく、また、ガラス 
のように冷たい感じのバリゲ 
ートでもない。 
世界からも自分は見え、自分 
からも世界は見える。個体と 
液体の中間のような感触。 
無色透明だけれど、確かに 
存在する膜を身にまとって 
いる。 

青春の、いいようにない 
憂鬱や理屈ぬきの清潔 
やわけのわからない孤独 
などが「寒天質」を形 
づくっているのだろう。 


「よく聞けば」 
法廷で女の証人が呼び 
出された。 

判事「何才ですか?」 

女の証人「21才と数か月・・・・・」 

判事「はっきり言ってください。 
宣言してるんですから」 

女の証人「21才と百二十カ月」 

傍聴席「ざわざわ!?!?!?」 

 


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キスをせがんだ夜の海

2024-09-13 11:58:14 | 日記
二人ではじめて会った海

Ms.OOJAを聴いた
帰りの海

口笛の吹き方を教えて
と、キスをせがんだ夜の海

木のように二人で読んだ
青い海

喧嘩して一人で来た雨の海
一人が結婚してしまい

あとの一人が思い出して
いた海

海は今でも青いだろうか

物語は終わってしまっても
海は終わらない

YouTube
思い出せなくなるその日まで - Ms. OOJA

https://www.youtube.com/watch?v=3bYI44z_IFQ



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