最近、Sapoは日本文学にはまっている。
それはなぜか!
・・・から書くとまた長くなるので(笑)、
また別の機会にするとして、まぁ、とにかく、
「今さらそれ読むの?」
的な文学作品を読んでいる。
そんなSapoが、
今日は太宰治の本を図書館で借りて来た。
『人間失格』である。
Sapoが借りて来たこの1冊を見て、
私はずいぶん昔の出来事を思い出し、ぽつりと言った。
「私、人間失格の感想文書いて、
角川のコンクールに入賞したことあるんだよね」
「マジで?すごいね!」
と驚くSapoの言葉に促されるように、私は話し始めた。
あれは今から40年前のことだった。
私の通っていた高校では、夏休みには必ず、
『読書感想文』の課題が出た。
当然、提出しなければ『現代文』の成績に
著しく悪い影響がでるので、
生徒は概ね全員、感想文を提出することになる。
その年だけがそうだったのか、
毎年そうだったのかはわからないが、
私が『人間失格』の感想文を書いた年には、
現代文の先生が、生徒の書いた感想文を
ごそっとまとめて
角川の全国読書感想文コンクールに応募していた。
生徒に何の断りもなく。
そして、その全国コンクールで、
私の書いた感想文が優秀賞をとったのだ。
先生は、
「いやぁ、本当に良い感想文だったよ」
と絶賛だった。
ここまで読むと、
「まぁ、Tsupiさんったらすごいじゃないの!」
な話なのだけど、この話には続きがある。
実は私、『人間失格』は読んだことがないのだ。
そう、一度も・・・。
あの夏休み、私は読書感想文のことをすっかり忘れていたのだ。
思い出したのは、
「明日は読書感想文を出さなければいけない」
という日の夜だった。
焦った私は、家にあった本の中から、1冊の本を選んだ。
それが、『人間失格』だった。
なぜ『人間失格』を選んだのか。
それは、この本には文末に「あらすじ」が載っていたから。
そう。
私は、この本にあった
”ほんの百数十文字のあらすじ”
だけを読んで感想文を書いたのだ。
そして、その感想文が優秀賞をとってしまったのだ。
感想文をほめちぎり、
『人間失格論』で盛り上がる先生が
何を言っているのか、
本を読んでいない私には、わかるはずがなく、
かと言って、もちろん本当のことは言えるはずがなく・・・。
おまけに全校集会で表彰もされてしまったので、
文学好きな生徒たちから、太宰の話を振られ、
そのたびに、
「ああ・・・。うん・・・。」
と話をはぐらかすしか方法はなく・・・。
些細な嘘?がきっかけで、
しばらくの間、私はずいぶんと居心地が悪い思いをすることになったのだ。
40年間、私が秘密にしていた真実を知ったSapoは、
静かに言った。
「おかあさん、社会を甘く見ちゃいけないよ・・・」
はい。
よくわかってます。
だから、私はあれ以来、
嘘をついたことはないんだよ、Sapoちゃん・・・。
・・・って、
「嘘ついたことはない」
は、もちろん嘘です(笑)