広島市の集中豪雨、土砂災害で無くなった方に、哀悼の意を表明します。災害にあわれた方が、一日も早い、復旧対策を受けられるように政治に求めたいとお思います。その上で、災害で奇異に感じる点について記します。
まず一つは、集中豪雨があったから土砂災害があったように報道されていますが、裏山が崩れるような場所の開発を行政当局がなぜ許し、住宅地を形成させたのかです。異常気象により、集中豪雨、ゲリラ豪雨が襲う可能性は全土に広範囲に存在しています。災害が起きてからではなくて、災害を想定した行政上の対応がまったく放置されていることに問題の本質があると思います。
2つ目は、自民党政権が進めた、地方自治体の合併です。この結果、自治体職員数の減少、広域化が災害に弱い体制をより助長し、被害防止、災害対策の弱体化を招いている点です。昨年の大島の災害も、夜間の専任担当者の配置がされていなかったようですが、気象庁からの情報を、咀嚼し、該当自治体が避難指示を出すかどうかの判断を逡巡することはありうることです。担当部署任せにすることなく、重大な被害が想定される場合、自治体が正確かつ、すばやい判断ができる行政上の体制、支援が必要です。
災害が発生しているのにゴルフを続ける安倍には無理でしょうが。
<東京新聞社説>
恐れるべきは空振りか、手遅れか。局地的豪雨を予想することは難しいが、多くの犠牲者を出した広島市の土砂災害は、行政が避難勧告をためらってはならないことをあらためて示している。
広島地方気象台が広島市に大雨警報を出したのは十九日午後九時二十六分。二十日午前一時十五分には土砂災害警戒情報を出した。
その後、市北部の丘陵地帯で雨脚が強まり、三時から四時にかけて時間雨量が一〇〇ミリを超える猛烈な雨に。広島市が最初の避難勧告を出したのは、土砂災害発生後の四時十五分だった。
市消防局は、大雨警報を受けて十九日午後十時から防災無線で注意を呼び掛けた。「その時に避難勧告を出せていれば結果は違ったかもしれない。悔いがある」と消防局幹部は振り返っている。松井一実市長も「勧告まで出すかちゅうちょしていたと報告を受けた。空振りでも注意を促すべきだった」と述べた。
今回の豪雨では、同じ場所で積乱雲が次々発生し、風に乗って一列に並ぶ「バックビルディング形成」が起きていたとみられる。大雨が狭い範囲に集中して降ることになるが、的確に予測することは難しい。未明という時間帯も、勧告をためらった要因であろう。避難先へ安全に移動できるのか…。多くの犠牲者を出した昨年十月の伊豆大島(東京都大島町)の土石流災害でも、町が発生まで避難勧告を出していなかった。
その失敗を教訓として、内閣府は今年四月、避難勧告や指示を出す際の指針を改定し、全国の市町村に通知していた。
新指針は、被害想定がはずれる「空振り」を恐れず、早めに勧告を出すことを基本原則とし、夜間に避難行動が必要になりそうな場合には、早めに避難準備情報を出すことも示した。勧告を出すタイミングの事例も示し、土砂災害については、気象台などが土砂災害警戒情報を発表した段階で避難勧告を出すべきだとした。
広島の土砂災害では、新指針に沿う対応ができなかった。
土砂災害の危険が高まる一時間五〇ミリ以上の「ゲリラ豪雨」は近年、増加傾向にある。土砂災害発生の恐れがある危険箇所は、全国に五十二万カ所以上ある。
勧告に従う住民が少ないとの指摘もあるが、いつ起きても不思議ではない土砂災害である。空振りがあろうとも、先手の避難勧告が命を救うとわきまえたい。
首相の危機対応 国民守る責任感足りぬ
<北海道新聞社説>
多数の死者・行方不明者を出した広島市の土砂災害で安倍晋三首相の対応に批判が出ている。
第一報を受けながら静養先の山梨県でゴルフを始め、約1時間プレーを続けた。菅義偉官房長官が電話で中断を求めたのを受け、東京に戻ったという。
集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を進める際、首相は「内閣総理大臣である私は、いかなる事態にあっても国民の命を守る責任がある」と胸を張った。
土砂災害も国民の命に関わる問題である。首相の対応は疑問で、責任感が足りないと言わざるを得ない。即座に官邸に戻り、指揮にあたるのがあるべき姿だ。
安倍政権の緩みの表れだろう。緊張感を持って対応してほしい。
広島市の土砂災害は20日未明に発生した。早朝には多数の不明者がおり、心肺停止状態の子どももいるとの情報があった。
首相は被害状況の把握などを関係省庁に指示した後、ゴルフに出かけた。だが、スタートせずに戻る道はあったはずだ。
豪雨による土砂災害が多数の人命を奪うことは、昨年10月の伊豆大島で経験済みだ。広島県は全国でも土砂災害危険箇所が突出して多い。被害拡大への警戒心が十分だったとは言えない。
一緒にゴルフをしていた森喜朗元首相は、首相在任時に高校実習船「えひめ丸」と米原子力潜水艦と衝突事故の際にゴルフを続けて批判された。その教訓が生かされていなかったのではないか。
首をかしげるのは、安倍首相が災害対応を取った後の20日夕、また静養先に戻ったことだ。
犠牲者数が増え、行方不明者の捜索が続いていた。二次災害防止が求められ、自衛隊の追加派遣も必要になりかねない状況だった。
今後も激甚災害指定の検討、気象庁などの警報体制の検証、現地視察の是非など、首相の判断が必要になる場面も出てくるはずだ。
静養も必要だろう。だが事態の緊急性を考えれば、引き続き官邸に残って指揮を執るべきだった。
首相はきのう、夏休みを切り上げて東京に戻った。一連の行動を通して被災者に寄り添おうとする意欲が伝わってはこない。
官邸の対応も不十分だ。定例の官房長官会見は夏休み中だったが、臨時会見で被害状況や政府対応を発表しなかったのはなぜか。
野党は国会の閉会中審査で首相の責任を厳しく追及する構えだ。首相は積極的に説明責任を果たしてほしい。