二年くらい前に【赤ちゃんポスト(Babyklappe)】の存在を知り、細々と調べ続けてきた(日本のポストをどうするかの前にやはり欧州の取り組みや現状をもっと知るべきじゃないか、というのが僕の今の結論)。
一つ調べていて分かったのは、赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)の根底には、女性の論理が働いている、ということだ。ドイツの赤ちゃんポストの記事には、必ずといっていいほど、「困窮下にある女性たち(Frauen in Not)」という表現が使われている。「差し迫った状況にある女性たち」、「危機的な状態にある女性たち」といった意味である。この取り組みは、「女性を救う」という大きな意味背景の中で行われているものである。男性的思考で考えれば、「捨てるほうが悪い」、「なぜ相談しないのか(なぜ自ら動かないのか)」、「責任はどうするんだ?」といった考えが生まれてきてしまう(反対している人の多くが男性であることに注意してほしい)。すでに前に訳した文章で、「レイプされた女性から生まれた子ども」というのがあった。少なからず、望まないで生まれてきてしまう赤ちゃんもいるのだ。日本だと、社会的な圧力や世間の目を気にしてやむなく育てなければならない若い女性も多いのではないか(性教育の不十分さも指摘できるかもしれない。。。)(今週の週刊朝日の或る医師のコメントを見てもらいたい) そんなことを考えていた最中、今日、こんなニュースが飛び出した。
乳児の遺体を捨てたとして、千葉県警捜査1課と印西署は23日、乳児の母親で千葉市、無職少女(18)と、少女の知人で同市、無職少女(19)の2人を死体遺棄の疑いで逮捕したと発表した。
調べによると、2人は2月中旬ごろ、千葉県白井市の市立第三小学校裏の雑木林で、男の乳児の遺体をビニール袋に入れ、遺棄した疑い。2人は容疑を認めている。死因は硬膜下出血で、県警は乳児が死亡した経緯についても調べている。
母親の少女は「1月下旬に実家で出産し、直後に赤ん坊が死亡した。親にも相談できずに、知人と一緒に捨てた」と供述しているという。
(引用元)
無職の18歳と19歳の女性、だ。しかも、「死体遺棄」で「逮捕」。してしまった行為に対して、法的に対処するのは「法治国家」として当然のことなので、これについては何も言えない。ただ、「親にも相談できない」という18歳の女性の心境を考えると、心苦しくなる。ドイツの赤ちゃんポストに預けられたケースで、その親が大学生や10代の若者であった、という事実が分かったものもある(10代の母親の親が赤ちゃんポストに引き取りにきたことで親が判明した、という例外的ケース)。
もちろん、赤ちゃんを捨て去ることは許されることではない。だが、赤ちゃんポストの試みが訴えているのは、やむなく捨ててしまう母親の救済なのである。「困窮下の女性」を救う。つまり、女性による女性のための新たな試みなのである。ここに男性の言い分は入り込めない。相手の男性は「種」を与えるだけ、「性的快楽」を求めるだけ(もちろん避妊しない女性もすべきことはあるだろうが)。ただし、実質的に「望まない妊娠⇒出産」で苦悩するのはやはり女性なのだ。
赤ちゃんポスト(⇒Babyklappe)は、そういう女性を助ける一つのプロジェクトなのだ。本来、「赤ちゃんを救う」ということが第一命題というよりは、「女性を助ける」ということが第一命題なのである。ハンブルクで一番最初の赤ちゃんポストを設置した団体が、保育園や母子生活支援施設を運営する組織であることも思い出しておきたい。苦悩する母子を救うためにわれわれは何ができるのか。
僕は、女性の側からの意見をもっともっと聴きたいと思う。(これは僕の推測に過ぎないが、赤ちゃんポスト反対は男性が多く、赤ちゃんポスト賛成は女性が多いような気がしてならない。また、政治や医学ではNOが多く、福祉や教育ではYESが多いような気がしてならない)