先日、第四土曜日の会のオールドメンバーのKさんから、第四土曜日の会のグループLINEに、こんな質問が届きました。
○○町で保育士をしているのですが、いま幼児の午睡の在り方について見直しています。
○○町では1−3時を幼児の午睡時間としていて、その間に事務とか打ち合わせとか休憩を保育士は取っています。園によっては若干対応が違うようで、寝れない子を布団にずっといさせるのはよくないと、ただ午睡時間全て無しにするのも保育士の仕事が回らなくなるというところから、とりあえず私の園では14:30から起きてる子は別室で静かに遊ぶ時間としてます。
皆さんの園は幼児の午睡時間はありますか? それとも寝たい子、寝たくない子で分けたりしていますか?
この質問に対して、色んな園の「午睡」について知ることができました。
…
ふと、思ったんです。
世界では、「午睡」ってどうなっているんだろう?!って。
そもそも、午睡って、外国語で何ていうんだ?!💦
調べてみますと、、、
午睡
=afternoon nap(英:午後のうたた寝・まどろみ)
=afternoon sleep(英:午後の睡眠)
=nap time(米:うたた寝時間)→quiet time
=Mittagsschlaf(ドイツ:日中の睡眠=午睡)
=La siesta(フランス・スペイン:シエスタ)
=Il pisolino(イタリア)
=午睡(中国語(!))
英語圏では、主に「afternoon nap」「nap time」と呼んでいますね。現場では、「nap」とシンプルに呼んでいるみたいです。
ドイツ語では、そのまま「日中のうたた寝」(午後というニュアンスはない)です。日本語・中国語の「午睡」とほぼ同じ意味合いになりそうです(午後とは言ってない)。
ロマン語圏では、「siesta」で、そのまま「シエスタ」と訳せる言葉ですね。シエスタは、スペインなどでは「働く大人たちが午後に昼寝をする時間」としてもよく知られています。
まずは、nap time。この語は、例えば…
“Take out your mats and close your eyes” are words that many adults remember hearing when they were in kindergarten. It signaled the beginning of nap time. But much has changed over the years when it comes to kindergarten. For one, there’s been a massive jump in the number of children attending full-day kindergarten. From 1977-2015, the percentage of children attending full-day kindergarten went from 28% to 77%. But despite the longer day, nap time is nearly extinct.
「マットを出して、目を閉じて...」。これは、多くの大人たちがかつてキンダーガーデンにいた時に聴いたことのある言葉です。それは、午睡の時間の始まりの合図でした。しかし、この数年で、キンダーガーデンの中は、ずいぶん変わりました。ひとつは、全日制のキンダーガーデン(こども園)に通う子どもたちの数が大幅に増えたことです。1977年から2015年にかけて、全日制のキンダーガーデンに通う子どもの割合は28%から77%になりました。しかし、1日の時間が長くなったにもかかわらず、午睡の時間はほぼ消滅しています。
この記事では、もはやこども園に「午睡」は子どもたちには必要がない、という話が続いています。ニューヨークタイムスの記事から、「No Time for Napping in Today’s Kindergarten(もはや今日の幼稚園には午睡の時間はない)」という言葉を引用しています。特に4歳以降の午睡は、不要どころか、その後の悪い影響がある、とさえ言っています。
いずれにしても、こんな感じで「nap time」という言葉が使われています。アメリカの保育園では「nap cot(お昼寝用ベッド)」で寝ているみたいです。しかも、そのnap timeのあいだ、保育者たちもお休みしているみたいです(詳しくはこちら)。更に、午睡の時間も、個々の子どもに合わせて、その子どもに合った時間帯に午睡をしているみたいです(詳しくはこちら)。日本の(横並び的・みんな主義的な)午睡との違いに愕然とします…。
…
ドイツ語圏では、「Mittagsschlaf」という言葉が使われています。
例えば…
Der Mittagsschlaf in der Kita führt oft zu Diskussionen zwischen Eltern und pädagogischen Fachkräften. Merkmal einer guten Krippe ist bedürfnisorientiertes Schlafen.
保育園での午睡はしばしば保護者と保育者のあいだで議論になります。よい保育園の特徴(メルクマール)は、必要に応じた(個々の)眠りです。
ドイツでも、アメリカと同様に、子どもに合わせた午睡の時間が設定されているみたいです。よい保育園であればあるほど、個々の子どもたちの必要性に応じた午睡を行っている、ということみたいです。簡単に言えば、寝たい子は寝て、寝たくない子は寝ないで、しかも、寝たいときや眠たいに寝ればよい、と。
こんな記事がありました。
Wie viel Schlaf brauchen Krippen- und Kitakinder in der Regel?
託児所や保育園の子どもたちは、通常どれくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか?
Wir haben in der Krippe Kinder im Alter von elf Monaten bis zu drei Jahren. Da ist das Schlafbedürfnis ja noch sehr hoch, aber doch individuell schon recht unterschiedlich. Die Kinder schlafen zwischen einer halben Stunde und bis zu drei Stunden, je nachdem wie müde sie sind. Normalerweise gibt es bei uns zuerst das Mittagessen und dann folgt die Mittagsruhe, aber manche der Kleinen schlafen schon vor dem Essen ein und dann drehen wir den Ablauf einfach um und warten, bis das Kind ausgeschlafen hat.
私たちの託児所には、生後11カ月から3歳までの子どもたちがいます。睡眠の必要性はまだまだ高いのですが、個々の子どもによって実に異なっています。子どもたちの睡眠時間は、子どもたちの疲れ具合にもよりますが、30分~3時間程度です。私たちの園では、通常、まず昼食を取ってから昼寝をしますが、中には昼食の前に眠ってしまう子もいるので、その場合はさっと予定を変更します。また、(昼食後に眠れない子どもがいても)子どもがぐっすり眠れるまで待ってもいます。
ドイツでも、個々の子どもの「眠り」に合わせた午睡が行われているみたいです。
横並びで一律で(大人の作った時間帯で)強制的に寝かせる日本の保育園と大違いです…。
上の記事に、こんな一文もありました。
Auch dem Team helfen klare Regeln. Beispielsweise, dass die Mittagsruhe nicht bedeutet, dass die Kinder schlafen müssen. Die Expertin weiß: „Man kann nur für möglichst günstige Bedingungen sorgen und die Kinder individuell begleiten.“ Deshalb muss das Bedürfnis der Kinder immer im Mittelpunkt stehen. Eine Ruhe- und Schlafphase von etwa anderthalb Stunden sollte nach dem Mittagessen jedoch fester Bestandteil der Betreuung sein. Schläft ein Kind nach 30 Minuten nicht ein, darf es zurück in den Gruppenraum zum Spielen. Eine Möglichkeit ist, die Kinder während der Schlaf- und Ruhephase in zwei Gruppen aufzuteilen: in eine, die schläft, und in eine, die während einer Fantasiereise oder beim Vorlesen zur Ruhe kommt.
明確なルール(規則)もチームの力になります。たとえば、「昼寝の時間は、子どもたちが寝なければならない時間」ではありません。専門家は、「可能な限り有効な条件を提供し、子どもたちに個別に付き添うしかない」ということを分かっています。そのため、常に子どもたちのニーズが中心でなければなりません。ただし、昼食後に、1時間半程度の休息時間・睡眠時間を保育計画の中に設けておかなければなりません。30分経っても眠らない場合は、グループルームに戻って遊ぶことができなければなりません。やり方としては、午睡(睡眠と休息の時間)の間、子どもたちを二つのグループに分けることです。ひとつは、午睡するグループで、もうひとつは、ファンタジー旅行や読み聞かせなどで休息するグループです。
もう、この文章を読んでいると、「日本の午睡って誰のための、何のためにあるんだ?」って思ってしまいます。
冒頭のKさんの「寝れない子を布団にずっといさせるのはよくない」としつつも、「午睡時間全て無しにするのも保育士の仕事が回らなくなる」というコメントは、いったいどういうことなんだ!?って。
でも、それは、Kさんがダメだとか、Kさんが悪いという意味では決してありません。
保育士の仕事は、それこそ午睡の時間を共に生きることでしょう。子どもを無理やりに寝かせてやる仕事って何ですか? 寝たくない子どもが多数いる中で、それを犠牲にしてまでする仕事ですか? その仕事を定めているのは誰ですか? 保育業界を裏側で管理する人たち(ないしは、保育に関わらないブルシットジョブを次々に作り出す役人たち・学者たち?)こそ、このKさんの悲痛な叫びを聴くべきだと思います。
保育士不足は、保育士の能力の問題ではありません。「保育がしたいのに、保育の仕事以外の仕事が多すぎる」から、皆保育業界から去っているんです。保育士に与えるべきは、「自由」であり「時間」であり「余裕」であり「子どもと共にいきること」です。そのために、お給料を払っているのです。ラーメン屋さんなのに、ラーメンを作る時間がないとなったら、そりゃ、辞めるでしょう…。
…
話はずれますが、最後に「シエスタ」の話をしておきたいですね。
スペインの伝統であり、スペインの名物といえば、シエスタ!!
午睡が必要なのは、子どもだけじゃない。み~~んな必要なんです!!
しかも、このシエスタ、歴史的には2000年前の古代ローマ時代に生まれた「超伝統行事」なんです。シエスタの語源は、ラテン語のsexta(6時間目)から来ていて、「日の出」から6時間目(ちょうどafternoon)に寝る習慣のことを指していました。
スペインでは、昼食後に「みんなで寝ようね」って。スペインは暑いからシエスタが必要だ、と言われていますが、暑さなら日本だって負けてません。それに、寒暖差はなかなかとても凄いです。夏は灼熱、冬は極寒。そんな国なのだから、ますますシエスタ=午睡が全員に必要だろうよ、って。
保育士こそ、「午睡」が必要なのではないでしょうか。保育業界を仕切る偉い人たちはみんな「保育の質」があーだこーだと言ってますが、だったら、「保育士にも午睡を!」って言ってくださいよ…って。朝早くから働いて、6時間も乳幼児の保育をしてたら、どんな保育士だって疲れちゃいますよ。当たり前じゃないですか。1時間、赤ちゃん1人の相手をするのも、大変なんですから…。
時間感覚の違いもあるんでしょうけどね、、、💦
…
午睡問題は、保育全体の問題だし、日本人の問題だし、日本人の時間間隔の問題なんだろうな、と思います。
保育者が、子ども一人ひとりをていねいに見られるよう、現場に負荷をかけ続けているお偉いさん方には、是非とも動いてもらいたいですね。もし動かないのであれば、「保育の質」などという言葉は二度と使わないようにしていただきたいと思います。
<了>