一年ぶりにやってきました。
SterniParkです☆
もう、新本部の場所もばっちり。
地図なしで来れました!(えっへん!)
大きなビルの二階(ドイツでは一階と表記される)のほぼ全部がシュテルニパルクの本部となっています。
そこに、シュテルニパルク本部と、妊娠葛藤相談所と、捨て子プロジェクト基金事務局が併設されています。
入り口です。
こういうの、何度やっても、緊張します。
緊張しなくてもいいんだけどね。。。 でも、ドキドキします。
怒られるんじゃないかって(苦笑)。
けど、今回の「本当の目的地」はここではないので、あまりドキドキしたらダメです。
事務所の中には、「捨て子プロジェクト」のポストカードの入った写真たてがありました。
綺麗にされています。
いかんせん、ほぼ全員「女性」ですからね。スタッフの僕への視線が、ちと痛い…
通路のほぼ中央にあったシュテルニパルクの本棚です。
歴史や文化や宗教や哲学の本がずらっと並んでいました。
子どもの本じゃなくて、こういう本がどーんと置いてあるところに、「賢さ」を感じます。
一応、シュテルニパルクは幼稚園・保育園を運営する教育機関ですからね。
日本の幼稚園・保育園でも、難しそうな本がずらっと並んでいるところはあります。そういうところの幼稚園・保育園は、基本的に実践の質も高かったりします。偉そうに言えば、「当然」ですよね。難解な本や学術書を読んでいない人が、優れた実践をやれるわけがない。子育ても同じで、難しい本程度のことで、嫌になっていたら、もっと難しい「実践」なんか、できるわけがありません。
シュテルニパルクには、スタッフが知的に高い人がそろっています。そこももっと注目すべきかな、と。
今回は、シュテルニパルク専属の研究員であるヴォルペルトさんと2時間半ほど議論しました。
「内密出産法」施行以後、シュテルニパルクが何を考え、どこへ向かおうとしているのかについてじっくり聴いてきました。
この話については、また別の媒体でしっかりと書きたいと思います。
一つだけ言えることは、シュテルニパルクは、今後も赤ちゃんポストを継続する、ということ、です。
あと、もう一つ、赤ちゃんポストを誤解している人もいるので、述べておきたいことがあります。
シュテルニパルクは、赤ちゃんが赤ちゃんポストに預け入れられた後、新聞や雑誌を通じて、母親を呼びかけている、ということです。「児童遺棄」や「児童殺害」は、思いつめた果てに、突発的に、あるいは衝動的に行われます。なので、一度、赤ちゃんを赤ちゃんポストに預けた後に、冷静になって、「なんて馬鹿なことをしたんだ」、と戻ってくるお母さんが半数ほどいます。
特に長年、「母子支援」を行ってきたシュテルニパルクは、緊急下の女性のことをかなり深く理解しています。シュテルニパルクの願いは、第一に、赤ちゃんの命を守ること、そして、第二に、赤ちゃんとお母さんが今後共に生きていけるようになること、です。決して、赤ちゃんとお母さんを切り離そうとしているわけではありません。
現に、シュテルニパルクは、安易な養子縁組にかなり強く抵抗しています。お母さんを知らないまま、お母さんとの接触がないままで、成長することは、子どもの成長上、よくない、と考えているからです。
ヴォルペルトさんに確認しました。「私たちは、(実の)お母さんと子どもがまず共に生きていけるように支援することを目指します。それでも、赤ちゃんとの共同生活が不可能であれば、『開かれた養子縁組』にもっていくように努めます」、と。
*開かれた養子縁組とは、実親と養父母が互いに身元を明かしあう養子縁組のこと。
よく日本では、赤ちゃんポストは安易な児童遺棄を助長する、という批判がありますが、ドイツではそうではありません。事実、ハンブルクでは、2000年以前まで二桁台の児童遺棄が毎年ありましたが、赤ちゃんポスト設置以来、児童遺棄・児童殺害の数は明らかに減り、年に1、2件にまでなっているそうです。それは、赤ちゃんポストがよかったのではなく、シュテルニパルクの取り組み故だと思います。
ただ、赤ちゃんポストがあるだけでは、児童遺棄や児童殺害は減りません。そうではなく、赤ちゃんポストを含めたあらゆる取り組みの中で、お母さんと赤ちゃんが救われるのです。
先日、昔のコメントにとても考えさせられる意見を頂きました。「もっと、親の身元が分からない子どもの気持ちも考えてほしい」、という痛烈なメッセージと僕は受け止めました。
シュテルニパルクは、「親の身元が分からない子ども」を理解しようとしていました。だからこそ、「内密出産」には反対の立場なのです。内密出産が増えることで、それこそ「安易な養子縁組」が増える恐れが強いからです。
シュテルニパルクは、それこそ、長い時間をかけて、母子を支援していきます。匿名出産によって赤ちゃんを産んだ後も、しっかり支援を続け、最終的には、子どもを母親が引き取るという結末になることもとても多くあります。そのデータも今回、いただきました。
多分、このデータ自体、日本では初めてだと思います。(それを、こんなちっぽけなブログで公開するんだから、、、汗)
匿名相談件数 360件。
うち、185人の赤ちゃんが実親に引き取られ、152人の赤ちゃんの母親の身元が分かり、最後まで母親の身元が分からなかったのは、23人でした。
赤ちゃんポスト件数 43人(シュテルニパルクが設置した3つの総計)
うち、 14人の母親が後に引き取り、4人の母親の身元が分かり、25人の母親は匿名のままに留まりました。
分析はいろいろできそうですが、赤ちゃんポストを必要としているお母さんの方が、緊急性が高く、またその置かれている状況も極めて深刻であるケースが多いそうです。なので、身元が判明しないケースが、匿名相談・匿名出産よりも多いと考えられます。
いずれにしても、シュテルニパルクは、お母さんと子どもが一緒に生きていけることを第一の課題にしています。僕は、このことをあまり強く強調してきませんでした。だから、誤解を与えるような表現もしてきた恐れもあります。
児童遺棄や児童殺害(あるいは新生児への虐待)を防止すること、そして、それと同時に、お母さんと赤ちゃんが一緒に生活していけるようにすること、それはどちらも等価であり、どちらも守られなければならない、ということです。
これ以上のことは、また別の媒体で書きますので、とりあえず。。。
おまけ
シュテルニパルクからの帰り道。
ふと地下鉄の中で、窓に貼られた広告を見ると…
あった…
「私たちは匿名で、そして確実に支援します」、、、と。
そして、アドレスには、「内密」という文字が。。。
過去にウィーンの地下鉄の看板を紹介しましたが、今回はハンブルクです。
ベルリンにも同じようなものがありました。
これが、ドイツです。
日本では、まずこういう広告を地下鉄で見ることはほとんどありません。
資本主義にまみれた広告ばかりが目につきます。
広告って、何も「商品の紹介」だけじゃないはずです。こういう使われ方もあるんだ、ということを、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。
広告って、広く公共に告げる、ということですもんね。
ほんと、こっちにいると、妊婦への支援体制が整っているなぁ、と思わされます。
「命」をどこまで徹底的に考えるか、ですよね。それって。