詩絵里(★シェリー★)の星の囁き達

尾崎詩絵里(★シェリー★)の自作恋愛小説及びポエム、写真専用部屋です。掲載文の引用、転載は固くお断りいたします。

恋愛小説「黄昏の街の中で~アーティストとの恋~」最終回

2007年11月01日 | 小説~尾崎豊モチーフ~
「黄昏の街の中で VOL.3 ~最終回~」

「リュウ見て・・・」

シェーカーからは、目にもあざやかなブルーのカクテルが、グラスになみなみと注がれた。







「このカクテルの名はスカイダイビング・・・

リュウはスカイダイビングしたことある?

やった事ある人たちの話を聞くと、やる前はとても怖かったけど、やってみたら楽しかったって言っているよね・・

もちろん危険はつき物だけど・・・・

人は皆 翼を持っていないから、大空にあこがれる。

自分が出来ないことにあこがれる。

この世の中にはリュウのように、心の叫びや訴えを、表現したい人は、たくさんいる。

インターネットやブログもその一種だと思う。

自己表現をし、多くの人の同感や共感を求めている。

リュウはそれが、音楽でできるじゃない?」





「ミナ・・・・俺には才能なんてあるんだろうか?

今までは、書きたいこと、心の叫びをただ曲にしてきた。





「街が、風が、闇が俺に多くのものを訴えかけてきた。

でも今は、俺が大人になったからなのか、心の眼、耳が曇ったからなのか、何も聞こえない。

才能は油田のように枯渇していくものなのか?

それともあふれ続ける泉のようなものなのか?

今の俺には、それがわからない・・・」

「才能なんてわからない。でも一番大切なのは、自分を信じて自分を愛すること。

街の声が、風の声が聞こえなくなったのなら、自分の心の声をきけばいい。リュウが想い、感じたことを言葉にすればいい。

言葉は言霊・・・口に出した瞬間、魂を持つから。

がんばらなくていいんだよリュウ・・・・

リュウはリュウなんだから・・・あなたのままでいいんだから」

私は震える彼をそっと両手で抱きしめた。





どのくらい時間がたったのだろう・・・

気がつくと私の肩が濡れていた。彼の涙で・・・

かれは静かにむせびないていた。。。

思い切り泣けばいい・・・

涙は心の砕けたカケラ・・・

すべて涙で洗い流せば新しいなにかが見えてくるはずだから・・・・

貴方は自分のために、そして愛すべき者すべてのために歌い、走り続けてきた。

時には、傷つき、時には迷いながら、真実を追い求め、夢に向って・・・

でも走りつかれて、迷いだしたら立ち止まればいいよ。

人に裏切られ、おびえた瞳には、真実はかすんで見えないから。

いつも何かに向って戦い続ける貴方がその傷ついた翼を休める場所はある。

今度は、あなたが、私の胸の中でゆっくりおやすみ・・・

もし片方の翼が折れたなら、私があなたの片翼になろう・・・

もし貴方が暗闇の中で迷っているなら、手と手をとりあい、一緒に真実の輝く一筋の光を探して歩こう。

いつも身にまとっている戦うための鎧兜を私の前では脱ぎ捨てていいよ。

海のような愛の深さで、空のような輝く心で、大地のようなゆるぎない想いで、あなたを傷つけるすべてのものから私が守ろう・・・・

あなたの強さと弱さとガラスのような心の輝き全てを私は愛しているから

3年前私があなたの胸の中で生まれ変わったように、あなたの歌で励まされたように・・・

今度は私が貴方を守ってあげる。

このままずっと・・・・

私の腕の中で・・・・


**********Fin*********


長い間ご愛読ありがとうございます。
感謝申し上げます。

感想なんぞいただけると助かります~

恋愛小説「黄昏の街の中で~アーティストとの恋~」第2回

2007年11月01日 | 小説~尾崎豊モチーフ~
朝日のまぶしさで目が覚めると彼は寝室にいなかった。
耳をすませるとリビングからギターの音がかすかに聞こえた。


「あ・・・ごめん起こしちゃった?
曲がうかんだから、忘れないうちに書いておこうと思って」
とはにかみながら彼は微笑んだ。

彼の瞳は、朝日をうけてキラキラと輝いていた。
生きとし生けるものの「生」の喜びが彼の魂に宿っているかのように



愛する人を失って、失意のどん底、暗闇の中に一人ぼっちだった私の心に、一筋の淡い光が差し込んできた。



「できあがったばかりなんだけど、曲聴いてみる?
まあ・・・これから何度か手直しが入るけどね

あ・・・そうだ自己紹介遅れたけど、俺は、神崎龍。
リュウでいいから。一応全然売れてないけど、自称アーティスト、これでもCD2枚出しているんだけどね・・・・

いつかは、チャゲ&飛鳥や浜田省吾のようにギター一本、フォークから始めた先輩達のように武道館を満員にするのが夢なんだ





といい終わるや否や彼はギターで曲を弾き始めた。

優しい旋律のアルペジオから始まり、単調な、でも規則正い、そうちょうど秋の海の波が打ち寄せては返すようなメロディー

そして最後は明るいストロークに変わり

徐々にゆったりとした、海に夕日が沈むことを想像させるようなアルペジオに戻り Fin

あまりの美しいいメロディーに気がつけば私はいつも間にか涙していた。

そして知らぬ間にポツリポツリと今回の愛する人との失恋話を昨日会ったばかりの少年に話をしていた。

「私の名は、美咲 美菜穂」

「じゃ・・ミナって呼ぶね・・・」

「ミナ、俺が今の曲に君から聞いた話を混ぜ込んで、究極のLOVE応援ソングを作るから楽しみにしていてね」

と彼は、かるくウィンクをした。

そして、それが、彼を一躍有名にした
「黄昏の街の中で」だった。

失恋し、何もかも失った女性達への応援ソングだった。




オリジナルポエム「黄昏の街の中で」

秋風を受ける波のように
寄せては返す心の痛み

氷のように凍てつく心

誰かが捨てていった空き缶一つ





君は、両翼をもがれた天使のように
小さく海辺でうずくまる。





失くした愛のカケラを一つづつ波に流すように
そして自分の心までも海の泡とともに消し去ろうかとするように・・・

遠いところから流れてきた流木たち





あてどなくただよう海草達

君は涙と悲哀と孤独と絶望で形造った舟で漕ぎ出すのだろか?

あの夏が残した恋の爪あとをオールにして

僕の傍においでよ・・・
傷を癒すことは出来ないけれど・・

せめて一緒に泣いてあげよう

人は哀しみが深いほど
真実の扉が見えてくるから・・・

僕の胸でおやすみよ

偽りの愛に惑わされずに、本当の愛を探しに行こう
心のコンパスが指し示す光を頼りにして・・・

過去の荷物は、海におろせば、波が全てを洗い流してくれるさ

涙で心を洗ったら
街の中へ戻っておいでよ

夏の暑さを残したアスファルトが
心地よい暖かさを残して君のことを待ってるよ

海の夕日は、淋しいけれども
都会の黄昏は明日への扉

君の傷が癒えるまで
僕が傍にいてあげるから・・・

この黄昏の中で
失くした夢や希望が見つかるように
君の心の翼になろう・・・

真実の愛が見つかるまでは・・・・

**********************************

私は、3年前のリュウとの出会いをぼんやりと思い出していた。


淡い間接照明が、シャンパングラスの中の泡を輝かせていた。



その泡をしばらく眺めてから、リュウが言った。

「今度の新曲、事務所が、俺にクリスマスソングを作れってさ


山下達郎さんのクリスマスイブのように毎年売れ続けるような
・・・」

といいうとシャンパンを一気に飲み干した。

「それと同時にCD発売日に握手会とサイン会だってよ

俺はアイドルか?俺は言っていたよな・・・つまらねえ大人にはなりたかねえ・・サラリーマンにはなりたかねえって。

でも事務所に所属し、歌の売れ具合で給料が変わり、上層部の言われたとおりの歌を作り、ヘラヘラと愛想笑いをし、俺の歌を流行歌だというだけで買っていく奴らと握手なんて真っ平だ
ぜ!!どうせ半年もすりゃ飽きちゃうようなファンとも呼べない奴らと・・・・俺は人寄せパンダじゃねえ!!

俺は・・・俺は・・・本当に俺を必要としてくれている、俺の歌にこめた気持ちがわかってくれるクラクション(仲間)達のために歌い続けたいんだ!!」

「結局、俺も今日で20歳。社会からみたら立派は大人だ。事務所から給料をもらい。サラリーマンと何が違うんだろう?」

彼はそういうとソファーの上で両手で足を抱えて頭をうなだれた。



私は、カクテルシェーカーを取り出し、おもむろに、リュウのためにショートカクテルを作るためにシェーカーを振り出し、カクテルグラスを彼の前においた。

「リュウ・・・見て・・・」


***********つづく***********

※この作品は、完全オリジナルフィクションで、写真はあくまでもイメージのために掲載しており、ストーリーとは全く関係ないことをご了承下さい。