直弼は一郎を踵落としのテーブル岩に呼び出す。
何事かと訝しがる一郎に、直弼はこの場所に来た事が有るかと訊ねる。
父親の徳治をこの場所に立ち入る事を厳しく禁じていたが、幼い日の一郎にとって、ここは父に内緒の遊び場であった。
仕事で両親に構われなかった一郎は此処に来ては時間を潰していた。
直弼は何故徳治がここの何もない場所に「ともしび」を造った訳を知っているかと問う。
幼かった一郎にとって店は生まれた時からそこにあったのだ。
直弼はその訳を一郎に説明する。
徳治には有徳という七つ違いの弟があった。
有徳は小さい頃から優秀で、徳治は有徳の才能に期待して、彼を大学に入れるためにラーメンの屋台を引くのだった。
やがて徳治の屋台のラーメンの味が評判を呼び大勢の客がつくようになった。これで有徳を大学にいかせる事ができると思った矢先、有徳は大学受験にしっぱいし、このテーブル岩からから飛び込み自殺をしたのだった。
その後徳治が自分の店を持てるとなった時、徳治はその場所にテーブル岩に至る道の入り口の見える現在の場所にわざわざ店を構えたのであった。
そこは街道沿いではあったが回りは民家などない荒地であった。
直弼の何故という問いに、徳治は
「俺は怒ってるんだ。大学の受験に失敗したぐらいの事で死にやがった有徳を俺は許せないんだ。だから何もないところから成り上がって行く俺を有徳に見せる為に俺は此処でやる」
この話を聞いた一郎にとって知らない父親の一面であった。
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