さてこの芝居の舞台は北海道のある町です。
時は3月。
暖冬とはいえ北海道ですから寒風が吹きすさぶ厳しい寒さの中、角田家の33回目の法事が執り行われようとしています。
ここは角田家の菩提寺泉水寺。
この寺は嘗て炭鉱で栄えた町にあったが、今は炭鉱の閉鎖と共に市内からのバスも1時間に2本という寂れた場所となっていた。
時刻は午前9時。
角田家の法事は午前11時予定なのでまだ角田家の者は来ていない。
泉水寺の坊守の武田文子が武田家を迎える準備に控えの間に現れた。
外では寒風が吹き、時折うなりをあげて通り過ぎる。
寺内とはいえすっかり冷え切った控えの間は地元の人間にも寒さがこたえる。
文子 「うう・・凍れるねえたらしばれるよ・・・なしてこったらトコに生まれたんだべな、まったく」
石油ストーブをつけ部屋を暖める文子。
文子と角田家は長い付き合いであったが、現在の角田家の当主である正一が東京に居を構えている関係上、盆と回忌法要のみの付き合いとなっていた。
文子 「そうか・・・角田んとこはもう三十三回忌か・・いやいや早いもんだね月日の経つのは。・・・何人来るんだべね。こっちには誰も居ねえしな。後は東京の正一さんとこと正二とだべ・・・佳奈ちゃんは亡くなったしなあ・・あと誰だ・・・いねえよなあ」
角田家の人間くるにはまだ間があるようである。
外から吹きすさぶ風の音が聞こえてくる。
次3へ続く。
撮影鏡田伸幸
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