20:40
無人になった部屋に喫茶紫苑のママ中村良子が駆け込んできます。
良子 「姐さん!・・・」
登和と同じく京香は良子にとって姐さんと崇める存在でした。
京子から行方不明になっていた京香と会ったという報告を受け、駆け付けた良子にとって京香の不在は納得できるものではありませんでした。
良子 「・・・・・ああ、京子。いないよ・・・・だから誰もいないんだよ。・・・・だって現に居ないんだから・・・・そうか、大家さんのトコか・・・そうだね、それはあるね・・・」
そこへ化粧室から帰ってきた登和とあった良子は、京香の安否を尋ねます。
良子 「あれ、登和さんどこから・・・」
登和 「どこって・・トイレ」
良子 「(登和)ああ。・・・ちょっとゴメン。・・・(京子)ゴメンゴメン。登和さんが来てた。・・・姐さんはいないよ。・・・(登和)登和さん、姐さんは?」
登和 「五階の大家さんとこ」
良子 「ねえ、姐さん元気だった?変わりはない?」
登和 「ええ、元気よ、変わりはないわ。姉さんね、着物で来てくれたの」
良子 「・・えっ、姐さんが着物で・・」
登和 「そうなの。みんなで歓迎会やってくれるって聞いたからって。割烹『京香』の女将のまんま」
良子 「そう。・・・そこまで吹っ切れたんだ」
登和 「そうみたい、何だかサバサバしてた」
良子 「ああ、早く会いたいな」
登和 「ああ、ウチのおでんはみんなで紫苑に行く時に、あたしが持ってく事になってるから。冷えたおでんしゃ姉さんに失礼だからさ」
良子 「そうね、姐さん味にはうるさいから」
登和 「なんたって割烹京香の女将だもの」
良子 「・・・・そうだよね(涙ぐむ)・・・なんだか姐さんの話をすると涙腺が緩むんだよね」」
登和 「・・・・そうなるよね」
良子 「・・・(涙を拭う)これはあたし達仕方がないよね」
登和 「(涙)そうだ、そうだ」
落ち着きを取り戻した二人は、仕事にかまけて落ち着いて話をしていなかったことに気づき近況をはなすのでした。
良子 「あーあ、待ってると時間って長いね」
登和 「そうね・・・」
良子 「ねえ、万年青の調子はどう」
登和 「まあ、なんとかね。・・・なんで」
良子 「ほら。登和さん、ウチに来ても口数少ないからさ」
登和 「これといって話す事もないからね。今はとにかく必死よ」
良子 「そうだよね」
登和 「移って来た当初は女将さんが手伝ってくれたから常連さんのご機嫌伺いで何とかやってたんだけど、女将さんが身を引いちゃったらさっぱりになっちゃって・・」
良子 「そうか。女将さんの万年青は南口も北口も関係ないけど、同じ万年青でも・・ってことか」。
登和 「そうなのよ、いつの間にかあたしゃ、女将さんの仕事の仕方を追ってたのね。でもそれじゃダメなんだって事がつくづく分かって、よし、あたし色の万年青にして行こうって覚悟を決めたら途端に肩の力が抜けて楽になったの。そうしたら徐々に客が来るようになって・・結局女将さんが長年作ってきた万年青のおでんの味なのよね。万年青の味が決め手なのよ」
良子 「そういう心境になったんだ」
和 「ねえ、紫苑の調子はどうなのよ」
良子 「頑張ってますよ。とにかく七曲りとは真逆の生活だからそれがこたえるわね」。
登和 「そうだ、モーニング始めたんだもんね」
良子 「そうよ、本物のね。早朝六時開店だから、もう眠い眠い」
登和 「あたしが行く時間には落ち着いているもんね」
良子 「そりゃそうよ、登和さんが来るのは10時過ぎなんだから、精も根も尽き果てた頃よ」
登和 「でもうまくいってるんでしょう」
良子 「朝はね。京子のアイデアでモーニングにバイキング取り入れたら、それが調子よくて通勤者が結構寄ってくれる様になってきたの」
登和 「ああ、あれあたしも助かってる」
良子 「あら、そう。よかった」
登和 「他の時間は?」
良子 「それがちょっとね、朝の出勤時間が過ぎるとパッタリ。ランチもディナーも頑張ってるんだけど、北口がシャッター通りから店が本格的に入り始めて時間が経ってないから、客足が遅いのよ。まあ、少しづつ増えて来たってところ」
登和 「まあ、焦らないでやっていくしかないね」
良子 「そういう事ね」
良子 「それはそうと功さん遅いね。もう来てもいい頃だけど」
登和 「なんで?」
良子 「あたし京子の知らせで急いで来たの。その時健太も来てたっていうから」
登和 「ああ、そう。じゃ、もう来てもよさそうなもんね」
良子 「なにやってるのかな」
鳥功の功一がくれば 七曲りの仲間がそろいます。
二人にとって三人揃って京香を迎えるのが理想です。
騒々しい足音が近づいてきました・・・
撮影鏡田伸幸
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