序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

第25回公演「六丁目金山ビル・おみまめ」物語5

2013-06-11 15:29:04 | ブログ

第二場 続き。

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千鶴子がトイレに立った後、千鶴子の夫の幸雄が迎えに来る。

幸雄と千鶴子はスナックピッコロで知り合い三ヶ月前に結婚したばかりであった。

現行員として働く幸雄は仕事以外は極端な引っ込み思案で、千鶴子の姉さん気質に好意を抱き結婚したのであった。

 幸雄 「今晩は」
純子 「杉元君、ご苦労さん」
隆文 「よう、幸雄」
幸雄 「ああ、隆さん。・・・いやね、千鶴子さんの帰りが遅いんで、迎えに来たんですよ」
隆文 「ああ、そうだってな」
幸雄 「あれ、千鶴子さんは?」
純子 「今、トイレ」
幸雄 「そうですか」
純子 「杉元君、仲良くやってる」
幸雄 「ええ、何とか」

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トイレから帰ってきた千鶴子をねぎらう幸雄であったが、純子には不自然さを感じられるのであった。

幸雄 「千鶴子さん」
千鶴子 「ああ、幸雄さん。ゴメンナサイ、迎えに来させちゃって。待った?」
幸雄 「ううん。今来たところ」
千鶴子 「夕ご飯、ちゃんと食べた?」
幸雄 「うん、久しぶりに外食したよ」
千鶴子 「ごめんなさいね、作って上げられなくて」
幸雄 「大丈夫さ。それより少しは美樹ママの役には立ったのかい」
千鶴子 「わからないけど、一生懸命にやりました」
幸雄 「そう。疲れなかった」
千鶴子 「ちょっとだけ疲れたかな、慣れない仕事だから」
幸雄 「そうだろうね」<o:p></o:p>

幸雄、千鶴子の肩を揉む。<o:p></o:p>

 千鶴子 「ああ、そんな事いいのに・・有難う」
幸雄 「ああ、張ってるね。やっぱりいつもの仕事とは違うからね」
千鶴子 「ああ、気持ちいい」<o:p></o:p>

困惑する純子と隆文。<o:p></o:p>

 千鶴子 「(気付き)有難う。もういい、もういいわ」
隆文 「仲の良い事で」
幸雄 「何言ってるんですか・・・・千鶴子さん、帰ろうか」
千鶴子 「そうね、明日も早いから」
幸雄 「じゃ、僕達帰ります」<o:p></o:p>

二人を見送った純子と隆文には共通の思いがあった。

純子 「ヘエーッ、変われば変わるもんだね」
隆文 「でしょう」
純子 「いいのかね、あれで。何だか千鶴ちゃん無理しているみたいに見えるよ」
隆文 「そうなんだよ。千鶴子さん、やっぱり気にしてるのかな」
純子 「ああ、歳の事かい」

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そこへ髭にメガネの野田哲也と名乗る男が現れる。

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 哲也 「あのう、ちょっとお聞きしたいんですが、ここは六丁目金山ビルですよね」
純子 「ええ、そうですよ」
哲也 「上のお店は終わってますかね」
純子 「ええ、最近は風営法が変わって0時で終わるんですよ」
哲也 「ああ、そうですか。(手帳を取り出す)あの・・・ちなみにこのビルには何軒の店が入ってるんでしょう」
純子 「そうね。・・・マイネリーベ、沢村、ピッコロ、幸ちゃん、でウチだから5軒かな」
哲也 「あの・・・スナックはありますかね」
純子 「ええ、ありますよ。スナックピッコロ」
哲也 「ああ、スナックピッコロね。そうですか」

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そこへ美樹が純子をお疲れ会に誘いに来る。

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 美樹 「ママ、沢村に行くわよ」
純子 「ああ、美樹ちゃん、ちょっと待って。この方ね、観光課から頼まれて観光客用の歓楽街マップを作ってるんですって・・」
美樹 「ああ、親共企画?」
哲也 「えっ?!・・・ええ、まあ・・・」
美樹 「あれ?歓楽街マップならこの前作ったばかりじゃないの?」
哲也 「えっ!いや・・あの・・あのですね。ちょっと、それの補足をですね、ええ」
美樹 「ああ、そうなんだ。あっ、社長の堀尾ちゃん、元気にしてる」
哲也 「えっ!・・・ええ、まあ。・・ああ、そうだ忘れてた、あそこに行かなきゃ。いや、ご協力どうも有難うございました」
純子 「エッ!残りはいいの?」
哲也 「ああ、あの・・残りはまた日を改めまして・・・失礼します」

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この男の胡散臭い態度に怪しむ純子と美樹であった。

 

</o:p>美樹 「誰なんだろうな」
隆文 「どうしたの」
美樹 「うん、親共企画だったら、この前貸切で新入社員の歓迎会やったばかりだから全員知ってる筈なんだけど・・・見た事のない顔なんだよね」
純子 「もしかしたら、騙り?」
美樹 「ええ、まさか」
隆文 「ナニ、騙りって」
純子 「だから詐欺師ってことよ」
美樹 「ママ、そんな事いいから早く支度して、みんな待ってんだから」
純子 「ああ、いけねえ。そうだった」<o:p></o:p> 

 

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控え室に引っ込む純子。<o:p></o:p>

美樹 「うーん、あんな人いたかな・・・」
隆文 「気になる?」
美樹 「うん、ちょっとね」<o:p></o:p>

暗転。

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<o:p>続く。</o:p>

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