地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)のガイドラインが作成され、都道府県・政令指定都市において、2030年に向けた緩和策(温室効果ガスの排出削減)の計画が求められている。それとともに、同実行計画に適応策の計画を含めることが促されている。
いくつかの地方自治体からアドバイスを求められる機会があった。その際に個別に申し上げたことを踏まえ、私のアドバイスを5点にまとめておく。もちろん、地域の状況や創意工夫で様々なバリエーションがあるが、それは個別のアドバイスとさせていただく。
5点は、次の通り。
1.哲学を書くこと
適応策の哲学を明確に書く。気候変動の影響は、地域の弱いところに起こるので、その弱さを解消するという哲学を共有することが大事である。この際、難しい言葉を使わずに、自分たちの言葉でかみくだいて、共有できるように表現すること。適応策は、特に哲学がないと、既存の気候災害対策をなぞるだけとなってしまう。そこに留まるならば適応策の計画をわざわざ策定する必要はない。
2.自助と互助を位置づけること
行政だけで、気候変動の影響から住民の生命や財産、地域文化等を守り切れるものではない。住民さらには事業者における自助や互助を支援する施策を計画に位置付け、計画策定後に、住民や事業者との協働を立ち上げるようにする。気候変動適応を通じて、自助や互助を強めることこそ、適応策の本流とすべきである。
3.潜在的適応策の整理ととともに、追加的適応策の検討の必要性を共有すること
当面、作成する計画は、関連部局に適応策に相当する施策(潜在的適応策)を照会し、それを取りまとめることが中心になる。ただし、それだけなら、あえて適応の計画をつくる意味はないので、長期的な影響の深刻化や”弱さを解消する”という観点から追加すべき適応策(追加的適応策)として何を検討すべきぐらいまでを明らかにして、共有することが必要である。
4.影響評価は直ぐにはやりきれないので、仕組みを立ち上げること
当面の計画で将来予測等をやりきるのではなく、影響評価を継続的に実施する仕組みを計画する。国が策定している気候変動の影響評価(重大性、緊急性、確実性の観点からの評価)を行うには、地域に所在する情報では不十分である。影響評価ができるように、地域でモニタリングや研究を立ち上げ、継続していくことが大事である。
5.具体的なモデル事業を立ち上げること
追加的適応策の具体像は、現状では不十分であり、地域の中で優先的に取り組むべき課題について、関係者とともに追加的適応策のアクションを具体化するようなモデル事業を位置づけ、立ち上げることが求められる。これにより、具体像が明確になれば、関係部局の理解が深まる。このモデル事業は、2で述べた自助と互助、3で述べた追加的適応策を具体化するものである。
適応策の実装において、先行地域は、関連部局との調整に苦労されている。取りまとめを行う環境部局は、大変なので覚悟して、粘り強く調整を進めることが大事である。今、作成する計画を次に改定する5年後には、関係部局は適応策に能動的に取り込む状況になっているように、今、作成する計画を契機に、環境部局が動き出すことが大事である。
また、追加的適応策のアクションの具体化としては、法政大学が長野県高森町と事業協定を結んで、検討を進めていることがある。適応策の計画を策定する地域は増えているが、計画に基づきアクションの具体化を進めているという場合は少ないのではないか。同町の検討成果は、秋以降に報告できるようにしたい。